全編“犬”視点のホラー映画『GOOD BOY/グッド・ボーイ』の見どころを紹介。犬のインディが飼い主を守ろうと邪悪な何かに立ち向かう姿にハラハラドキドキの必見作!
東京ウォーカー(全国版)
2026年7月10日より全国公開された『GOOD BOY/グッド・ボーイ』は、犬の主人公インディが、自分だけに見える邪悪な何かから飼い主を守ろうと奮闘する物語。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
【ストーリー】
アパートで飼い主トッド(シェーン・ジェンセン)と暮らすレトリバー犬のインディ。最近体調が悪かったトッドは、ある日吐血する。
偶然アパートを訪れたトッドの妹ヴェラ(アリエル・フリードマン)が病院へ急いで連れて行き、トッドはそのまま入院。
その後、退院したトッドはインディを連れて祖父(ラリー・フェセンデン)の家に移り住む。その家は祖父が謎の死を遂げて以来、空き家となっていた。
ある日、トッドは隣人から予備の発電機を借り、少しの明かりの中で昔撮られた祖父が映っているホームビデオの映像を見て過ごすが、インディは家の中に何か異変を感じ取る。
トッドはヴェラとの電話で「この家と、亡くなった祖父に呪いでもあるのでは?」と不穏な会話を交わす。もちろん、インディにはトッドがヴェラと何を話しているのかは理解できないが、物音や家の隅に漂う影に気付き、何かがおかしいと感じていた。
やがて、邪悪な存在がトッドの容態を悪化させ、インディは不気味な何かから必死に飼い主を守ろうと奮闘する…。
『ポルターガイスト』をヒントに犬視点のホラー映画を発案!
監督を務めたのは、本作で長編映画の監督デビューを果たしたベン・レオンバーグ。3年に及ぶ制作期間を経て完成した本作は、2025年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト映画祭)でプレミア上映され、最優秀犬演技賞を受賞。犬の視点から描かれた斬新なホラー作品として注目が集まり、予告が公開されるや否やSNSで話題沸騰。当初限定公開のはずが急遽1650スクリーンに拡大公開され、Rotten Tomatoesでは90%の評価を獲得した。
ベン監督は、「『ポルターガイスト』のオープニングを見返していたとき、私はある“もしも…”の着想に取り憑かれ、頭から離れなくなりました。もしも、家が幽霊に取り憑かれていて、そのことを知っているのが、家族の飼い犬だけだったら?『GOOD BOY/グッド・ボーイ』は、その問いから生まれた作品です」と語っている。
なんと、本作の主人公はベン監督の愛犬インディで、撮影中の大半は昼寝をしていたという。インディは動物プロダクションのペットモデルでもタレント犬でもないため、無理に演技をさせることは不可能。インディの自然な動きを撮影しながら、3年かけて制作を進めたという。
犬が登場するホラー映画といえば、狂犬病にかかったセントバーナード犬が人間を襲う『クジョー』(1984年)、終末世界でたった一人生き残り、愛犬サムと共に危機的状況を乗り越える男をウィル・スミスが演じた『アイ・アム・レジェンド』(2007年)などがあるが、犬視点で描かれたホラーは本作が初めてだろう。逆になぜ今までその発想で作られなかったのか不思議なくらいだ。
キュートなインディの姿に癒やされ、突然の戦慄シーンにゾクっとする新感覚のホラー
物語は、飼い主のトッドが吐血して入院し、退院後に愛犬インディーを連れて都会から祖父の家がある田舎に引っ越してくるところから始まる。長年空き家となっていた一軒家は薄暗く、すでに“何か”がいそうな雰囲気を放っていて不気味だ。
インディは家に着いて早々に警戒心を抱き、誰もいない部屋に入ってウロウロしたり、地下室の様子をうかがってみたりする。怯えている(ように見える)表情や、首をかしげる仕草、怪しげな場所に勇敢にも突っ込んでいく姿など、とにかくインディがめちゃくちゃかわいくて思わずホラー映画ということを忘れそうになる。
ただ、油断していると突然不穏なシーンがやってくるので要注意である。たとえば、インディの視点で撮られたシーンでは、地面から数十センチの高さの世界が目の前に広がり、トッドは首元ぐらいまでしか映らない。祖父の家にきてから少しずつ様子がおかしくなったトッドは、顔が見えないせいで何を考えているのかわからず、不気味で恐ろしい存在に思えてくる。
物語が進んでいくと、インディを置いてどこかに出かけたり、インディに優しく話しかけることさえしなくなるトッドの姿は見る者を不安にさせるのだ。当然ながら、しゃべれないインディがトッドの様子を誰かに説明することはなく、“え?今トッド変な動きしてたけど大丈夫?怖いんだけど!”と、思わず独り言を言いそうになる場面もあった。
トッドはだいぶ具合が悪そうなのにどうしてこんな田舎に来たのか、なぜトッドのおじいちゃんは謎の死を遂げたのか。わからないことだらけの中、ただただトッドを心配して側を離れようとしないインディの動きを見守るしかない…。
筆者が飼っているチワワも、劇中のインディ同様に真夜中に突然吠えたり、何もない場所をじっと見つめていたりする。そんなときは「おいおい、怖いよ~何が見えるの?見えちゃいけないもの見えてる?え?もしかして幽霊?んなわけないよね~」と話しかけて、怖さを紛らわそうとする。うちの子も“何か“から筆者のことや家を守ろうと警戒しているに違いない。
犬は“幽霊”とか“悪魔”とか“呪い”を知らない。もしかしたら犬にはそういったものが見えている、あるいは感じ取っているのだと、人間が勝手に思っているだけなのだということを、本作の鑑賞後に改めて気付かされた。インディはただただトッドが大好きで、守りたいだけ。ペットって、なんて尊い生き物なのだろうか…。
監督は本作について「これは人間にとってはホラー映画でも、インディにとってはラブストーリーなんです。最初から、この犬はこの男と強く結ばれていて、彼を守るためなら何でもする。それはとても分かりやすい感情です」と語っている。
先ほども書いたように怖いシーンもあるが、きっとホラー映画の概念が変わるはずなので、ホラーが苦手な犬好きさんにおすすめしたい。
インディがウロウロする姿をひたすら愛でながら、時おり背筋がゾクっとするような恐怖シーンも堪能できる本作。ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。
文=奥村百恵
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