全米で大ヒットした映画『バックルームズ』を鑑賞。社会現象を巻き起こした超必見の不条理スリラー!
東京ウォーカー(全国版)
2026年9月4日より全国公開された『バックルームズ』は、都市伝説とされていた空間“バックルームズ”を舞台に、ある日突然“現実世界の裏側”へ行ってしまった男の物語を描いた作品。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
【ストーリー】
舞台は1990年。家具販売員のクラーク(キウェテル・イジョフォー)は、家具のショールームの地下で不気味に輝く「異空間への入り口」を発見する。その先に広がっていたのは、見覚えのある部屋や廊下が無限に続く、巨大な迷宮だった。
異様な空間に魅了され、同僚たちと調査を進めるクラーク。しかし、静寂の中に響く「奇妙な音」とともに、彼は突如として消息を絶ってしまう。
ある日、セラピストとして働くメアリー(レナーテ・レインスヴェ)は、彼の行方を追ってバックルームズへと足を踏み入れる。そこは、自らの心の奥底に封印していたトラウマさえも暴き出す、出口なき底なしの悪夢だった…。
YouTube出身の若きクリエイターとオスカー俳優が“ネットの都市伝説”の映画化に挑む!
監督を務めたケイン・パーソンズは、2019年に匿名掲示板「4chan」に投稿された“1枚の部屋の画像”に興味を惹かれたという。黄色い壁紙に囲まれ、蛍光灯に照らされた、誰もいない空間が写っているその画像は、その不気味さから瞬く間にネット上で拡散され、人々はその写真の場所を「バックルームズ」と呼ぶようになった。
当時16歳の映像クリエイターだったパーソンズ監督は、都市伝説化した「バックルームズ」に触発され、実写映像とCGを融合させた圧倒的な映像表現によって、バックルームズの世界を初めて“現実に存在するかのような空間”として映像化。そして2022年に短編『The Backrooms(FOUND FOOTAGE)』をYouTubeで公開すると、「ネット上で最も怖い映像」として世界中で話題を呼び、シリーズ累計再生数は2億回以上に達した。
その世界観を映画へと拡張したパーソンズ監督は、17歳で本作の映画化を始動し、19歳で撮影、20歳で長編デビューを果たした。公開後は『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』を抑えて全米・世界興収ランキング1位を獲得。「史上最年少の全米No.1監督」として、映画史にその名を刻むこととなった。
本作のメインキャラとして登場する家具販売員のクラークを演じるのは、『それでも夜は明ける』(2014年)でアカデミー賞主演男優賞ノミネート、英国アカデミー賞(BAFTA)では主演男優賞を受賞し、近年では『ドクター・ストレンジ』シリーズ(2016、2022年)や『サンキュー、チャック』(2026年)などに出演しているキウェテル・イジョフォー。
彼が演じたクラークは、妻と離婚し、経営不振の家具店に住み込みながら生活を送っている。精神的なバランスを崩したことでセラピーを受けているクラークが、ある日突然バックルームズに迷い込み、その謎めいた空間にのめり込んでいくところから、物語は不穏な展開を見せ始める。
精神不安定なおじさんが、海賊をテーマにした怪しげな家具店をウロウロしているだけで、“なんか…ちょっと薄気味悪いな…”と思ってしまうこの感じ…伝わるだろうか?とにかくこんな家具店は絶対に訪れたくないのだが、アメリカの田舎のほうに行けば本当にありそうで、そういうところもちょっと怖かった…。
このヤバそうなおじさん(クラーク)を、知的でかっこいい役を演じてきたイメージのあるキウェテルが見事に体現しているので期待してほしい。
セラピストとして働くメアリー・クライン博士を演じるのは、『わたしは最悪。』(2022年)でカンヌ国際映画祭女優賞とアマンダ賞主演女優賞を受賞、『センチメンタル・バリュー』(2026年)では、ヨーロッパ映画賞女優賞を受賞し、アカデミー賞・ゴールデングロ ーブ賞・BAFTA主演女優賞にノミネートされたレナーテ・レインスヴェ。
レナーテが演じたメアリーは、1980年代から90年代にかけて大衆の支持を集めた多くの心理カウンセラーと同様に、自己啓発本『THE WINDOW WITHIN(内なる窓)』を出版。一見すると成功者だ。クラークのカウンセリング時に、バックルームズの話を聞いても全く信じないが、クラークが行方不明になったことで“もしやバックルームズに?”と思いつくメアリー。なんと、彼を探すために一人で家具店を訪れ、バックルームズに足を踏み入れてしまうのだ。そこからは予想していなかった展開がスタートし、恐怖と驚きのシーンが続くので楽しみにしていてほしい。
ほかキャストには、謎の科学組織ASYNC(エイシンク)の研究員・フィルを、ドラマ『ザ・モーニングショー』(2020、2024年)でエミー賞助演男優賞にノミネート、2022年にもゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされたマーク・デュプラス、クラークの働く家具店の従業員・キャットを、ドラマ『シュリンキング:悩めるセラピスト』(2023年)に出演したルキータ・マクスウェル、キャットの恋人・ボビーを、『トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー』(2024年)で注目を集めたフィン・ベネットが演じている。
リミナルスペース・サスペンスに没入することで新たな恐怖を体験!
本作は、わりと序盤のほうでクラークが家具店の地下にあるショールームでバックルームズに迷い込む。そこはリミナルスペースと呼ばれる空間で、学校の廊下、閉店後のショッピングモール、深夜のオフィスなど、本来なら人がいるはずなのに、誰もいないという不気味さが人々を恐怖に陥れる場所だ。
そしてクラークは、不気味な空間バックルームズにのめり込み、従業員たちを巻き込みながら、この迷路のような場所の内部の地図を完成させようとする。ところが、そのあと行方不明になってしまう。
筆者はバックルームズと呼ばれる画像がネット上で話題になっていることも、パーソンズ監督の短編『The Backrooms(FOUND FOOTAGE)』も知らないまま本作を鑑賞したのだが、それは正解だったと思っている。
謎だらけのバックルームズに関する余計な情報を事前に調べず、YouTubeの動画も観ていなかったからこそ、冒頭からこの作品の世界観に没入できたように感じたからだ。その冒頭の映像は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)のような手持ちのビデオカメラで撮られた映像になっており、少し酔いそうになりながらもワクワクした。
そしてクラークが迷い込んだバックルームズは、冒頭で観たヤバそうな空間がクリアな映像としてスクリーンに広がり、どんどんワクワク度が高まっていく。
黄色い壁紙、意味のない場所にある柱、積み上げられた家具、人が通れなさそうなほど細い通路、騙し絵に出てくるような階段、どこかから聞こえてくる変な音など不気味でしかない。“何か”がいる気配はするが、どこまで行っても人間の姿は見当たらないのだ。
最近だと、人がいない地下鉄の駅というリミナルスペースで、主人公が出口を探し彷徨う二宮和也さん主演の映画『8番出口』が話題になったが、筆者はリミナルスペースというよりも、自分の夢に出てきた誰もいない遊園地のビックリハウスや出口のない迷路などが、本作のバックルームズの不気味さと近いような気がして、とても恐ろしかった。
本作では、クラークを追ってメアリーもバックルームズに迷い込んでしまうのだが、そこからまた違った意味での恐怖展開が始まる。その詳細は書かないが、クラークが抱えている心の闇や、メアリーの幼いころのトラウマなどが描かれており、さっきまで、“うわ!ヤバ!こわっ!この空間なんなの?”と、心の中でバカみたいな独り言を言っていたことが恥ずかしくなるぐらい、物語は思わぬ方向へと進んでいくのだ。
鑑賞中、自分もバックルームズという不気味な空間に放り込まれたような感覚になり、リミナルスペース・サスペンスに没入するという新たな恐怖を体験できたのもよかった。ちなみに日本の劇場では、本編終了後に約16分の劇場限定スペシャル映像「Everything Must Go Edition」が流れているようなので、ぜひこちらも鑑賞してから帰ってほしい。
小中高生や20代の若者、カップルの来場が目立ち、鑑賞後は観た人といろいろ語りたくなる本作。ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。
文=奥村百恵
(C)2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
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