コーヒーで旅する日本/関西編|生来の職人気質で日々研鑽。お客の時間に寄り添う一杯を、磨き続ける勉強家。「BEARCOFFEE」
東京ウォーカー(全国版)
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。
関西編の第114回は、大阪府熊取町の「BEARCOFFEE」。8年前の開店以来、大阪・泉南エリアで数少ないロースターとして、支持を得る一軒だ。店主の宇賀さんは、元は音響の仕事から転身したユニークな経歴の持ち主。コーヒーの世界でも、生来の職人気質と尽きぬ探求心を発揮して、今では焙煎競技会でもたびたび入賞するほどに。とはいえ、常に目指すのは、自分の時間を大切に過ごすお客に寄り添う一杯。開店後も地道な研鑽を欠かさない宇賀さんの、ロースターとしての原動力とは。
Profile|宇賀一仁(うが・かずひと)
1981年(昭和56年)、大阪府生まれ。中学時代からの音楽好きが高じて音響スタッフとして音楽に携わった後、料理人、インテリアデザイナーへと転身。多彩な仕事の経験を生かし、元々好きだったコーヒーを仕事にするべく、独学で抽出や焙煎を学び、2018年に「BEARCOFFEE」をオープン。開店後もコーヒーに関する資格取得や、焙煎の競技会出場など研鑽を重ね、2024年に韓国・ベトナム共催のロースティング・ウィナーカップ入賞。2025年に、セラード珈琲主催のトーハ・ド・ジャポン日本大会で準優勝し、2027年にブラジルで行われる世界大会に出場予定。
生来の職人気質と多彩な仕事の経験が融合
大阪府南部、関西国際空港の対岸にあたる熊取町で、8年前に開店した「BEARCOFFEE」。てっきり町の名が屋号の由来と思っていたが、「よく聞かれるんですけど、実はあとから気づきました(笑)」という店主の宇賀さん。その心は、熊は単独行動のイメージが強いことから、お客一人ひとりが思い思いに時間を過ごせるように、との含意が込められていた。
とはいえ、開店までの道のりは紆余曲折。学生時代はバンドを組み、長じて音楽業界の仕事へ。ミュージシャンという夢はかなわなかったが、関西各地のホールやライブハウスなどの音響担当として、音楽の現場に携わった。元来の気質もあってか、その後は料理人を経て、インテリア業界へ進み内装デザインを学ぶなど、一貫して職人畑を歩んできた。「これまで音響、料理、内装と好きなことに携わってきて、元々好きだったコーヒーを掛け合わせて、行きついたのがコーヒーショップ。経験のパーツを合わせてできたのが、この店なんです」と振り返る。
ただ、コーヒーの提供に関しては、専門的に学んだことはなかったという宇賀さん。基本のイロハを体得すべく通い出した、焙煎卸会社のスクールで、コーヒーに対する印象はガラリと変わった。「講義で最初に試飲したパナマ・エスメラルダ・ゲイシャに衝撃を受けました。それまでブラックでは飲めなかったのが、勉強のためと試しに飲んでみたらびっくり。これなら飲める! と自らの嗜好が覆った感覚でした。それから7、8年くらい経ってますが、いまだそれを越える味はないですね」と、今も記憶に鮮やかだ。
以来、抽出器具や焙煎機のメーカーが開くセミナーにも参加し、小型焙煎機・ディスカバリーを自宅に購入し、本格的に焙煎も始めた。「焙煎は初めてですが、意外にいけるなと。飲めるレベルにはなってた」という宇賀さんが、味の方向性を模索したのは開店直前から。実際に飲むお客の姿を想像して、イメージを膨らませた。
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