「自分たちを信じて戦うこと」トルシエから日本代表への助言

東京ウォーカー(全国版)

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サッカー日本代表は6月19日21時(日本時間)、ロシア・ワールドカップ(W杯)の初戦でコロンビア代表と対戦する。16年前の日韓W杯で日本代表をベスト16へと導いた彼は、今の日本代表をどう見ているのか。フィリップ・トルシエ氏に話を聞いた。

日本代表へのアドバイスを語るトルシエ氏撮影=藤巻祐介(TAKIBI)


ーーロシアW杯に挑む西野(朗)監督、日本代表チームにアドバイスを送るとしたら。

トルシエ「自分自身を大切にしていくこと、100%の力を発揮すること。そして、初戦のコロンビア戦をしっかり戦える、というイメージを持つこと。サッカーは95分間、90分ではなく、(アディショナルタイムも含め)95分戦うものなので、ありとあらゆることが可能です。どんな山も乗り越えられるし、やってみないことにはわからない。自分たちを信じて戦うことが大切です。サッカーは魔法のようなもので、自分自身の良いところを信じ、モチベーションを高め、闘争力に変えていくことが大事。持っている力を出せれば、コロンビアとも、セネガルとも、ポーランドともしっかり戦えるはずです」

ーーもしあなたが今回の西野監督のように、大会直前で監督に就任したらチームをどう機能させますか?

トルシエ「大切なのは団結することです。チームを団結させるには、2つのやり方があります。ひとつは心理的なアプローチ。それは西野監督なら簡単にできると思います。日本語で直接コミュニケーションを取れるし、日本の文化も理解している。選手たちが何を期待しているかもわかっている中で、自分が伝えたいメッセージを選手に伝えやすいからです」

トルシエ「ふたつめは、チーム全体の連携ですが、これは練習を繰り返していく中で実践し、考え方を伝えていくアプローチです。もっとも、3週間ではなかなか難しい。ですので、西野監督が選手に対して、『自分の力をより発揮すること』『チームメートといい形で連携していくこと』『良いコンディションでやれるように』ということを伝えながらチームをつくっていく必要があります。心理的なアプローチはやりやすい。しかし、もう一方は時間が足りない。多くの面で、選手個々に委ねるしかないのではないかと思います」

トルシエ「代表監督が責任を負うべきは、スタメンの選手を選び、交代を誰にして、試合をどう終えるかを決めること。つまり、ベンチワークが重要です。それが、監督がもっとも重きを置くべきところです。誰を選ぶのか、誰にどのポジションを与え、どんな責任を持たせ、どういう役割を担わせるのか、選手の体調をどう万全に保つのか。あとは、試合に入ったら適時、変えていくこと。まずはコロンビア戦に向けて、ですね」

【写真を見る】日本代表ユニフォームを背に笑顔を見せるトルシエ氏撮影=藤巻祐介(TAKIBI)


ーートルシエさんが今大会の優勝候補と考えている国は? また、注目している選手を教えてもらえますか?

トルシエ「私はフランス人ですし(笑)、フランス代表が素晴らしいワールドカップを戦えるのではないかと思っています。優勝候補という意味では、もちろんブラジルも。加えて、ベルギー、イングランド。この4カ国です。選手としては、ネイマール(ブラジル代表)、(アントワーヌ)グリーズマン(フランス代表)、(エデン)アザール(ベルギー代表)に期待しています。それから、この段階では我々がまだ知らない、特別な才能を持ったタレントを発見できるのではないかと思っています。それがワールドカップです」

ーー本大会前の最後の親善マッチ、パラグアイ戦で勝利した今の日本代表をどう見ていますか?

トルシエ「微妙で難しい状況にあると思います。(ヴァヒド)ハリルホジッチが解任され、混乱した状況のまま、ガーナ戦もスイス戦も冷静に戦うのが難しいところもありました。西野監督のミッションは容易なものではありません。約3週間しか残されていない中での3つの強化試合。彼は初戦のコロンビア戦をどの陣営で戦うかを決める必要がありました。パラグアイ戦のパフォーマンスについては、あれはテストマッチです。Bチーム同士の試合でした。選手へのリスペクトは大いに持っていますが、日本のBチームとパラグアイのBチームとの試合だったと思います。つまり、西野監督にとっては“強化試合”にはならなかった。ただし、あの試合でいつも試合に出ていない選手に対して、『あてにしている』『起用する』というメッセージを伝える上では役に立った試合だと思います。とはいえ、勝利という結果を残すことができたし、ゴールを決めることができた。チームに自信を生むことができ、そうした準備の中でコロンビア戦を迎えることになりました。コンディションは前よりも上がってきていると思います」

ーー強化試合ではなかった、というのは?

トルシエ「パラグアイのレベルが“強化試合”というにはほど遠かったからです。もちろんコロンビアはパラグアイではないですしね」

トルシエ「ただ、出場した日本の選手はそれぞれが能力を示し、自信を回復し、グループ内に小さな競争が生まれました。西野監督はチームの中にちょっとした競争を生み出すことに成功した。もうひとつ明らかになったのは、酒井(宏樹)が大会に間に合うことが証明されたことです。これは西野監督にとって大きな成果でしょう。乾は2ゴールを決め、宇佐美との競争に名乗りを挙げた。香川も後半の出来が良く、先発でも出場できることをアピールした。私は、そうした“成果”を得ることがあの試合の目的だったと思います」

日本代表のキーとなる選手は?

トルシエ「まずは『守り』という視点で、川島(永嗣)、長友(佑都)、槙野(智章)、吉田(麻也)、酒井(宏樹)、長谷部(誠)の名前を挙げたいと思います。ディフェンスをベースにシステムを構築する上で、彼ら以外の策はないと思います。彼らはその経験値など、代わりがいない存在です。一方、オフェンシブなチームの場合は、乾(貴士)、宇佐美(貴史)、武藤(嘉紀)、大迫(勇也)、香川(真司)、本田(圭佑)。攻撃的な布陣となると、日本代表は3、4種類のチームを作ることができます。ただし、攻撃的にする場合は当然、ゴールを決める必要がありますが、もちろん、失点もしてはいけない。やはり、ディフェンスを強固にすることが必要で、守備が今回のワールドカップのキーになるのではないかと思います」

ーー本田選手の起用法についてはいかがですか?

トルシエ「本田は経験豊富で、高い技術を身につけている選手です。FWのすぐ後ろでゴールも決められる。セットプレーでの精度も高い。とても役に立つ選手です。私ならスタメン起用もできるし、サブとして使うこともできる。若いときほどの力はないかもしれないですが、他の選手からリスペクトを寄せられる存在で、チームを支えられる選手です。その経験、成熟度を生かしてチームに貢献してもらえると思う。最初から最後まで出続けるというよりも、西野監督にとっては全体の構成の中で活用する『大切な選手』だと思います」

トルシエとの一枚撮影=藤巻祐介(TAKIBI)


ーー最後にコロンビア戦について、あなたの予想スコアを教えてください。

トルシエ「1-1です。初戦はどのチームも様子見から入ります。大きなリスクは冒さない。コロンビアと初戦で対戦するのは良いことだと思います。そして、日本にとってはアドバンテージもあります。コロンビアは日本を恐れていません。むしろ、どこかに“優越感”があるはずです。それを日本はうまく利用して戦い抜いてほしいと思います」

浅野祐介/ウォーカープラス編集長

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