「運だけではない」日本代表・W杯金星の舞台裏、指揮官の駆け引き
東京ウォーカー(全国版)
サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)のグループHの初戦が、6月19日(火)に行われた。日本代表はコロンビア代表と対戦し、香川真司と大迫勇也のゴールで2-1と競り勝った。
運があったのは間違いない。
開始3分でDFの退場処分とPKによる失点を喫したコロンビアは、ホセ・ペケルマン監督が前半のうちにスピード自慢のフアン・クアドラードから中盤のウィルマル・バリオスにスイッチ。
「香川は非常に強力なので、バリオスを入れて組織力を高めたかった」
相手指揮官の言葉通り、先制した日本の勢いを削いで39分に同点に追いつくことに成功した。
「入れた選手を見れば、守りに出ていないことがわかっただろう。日本を苦しめたかった」
数的不利ながら、一気呵成に勝ち越しを狙って、後半にはけがが伝えられていたハメス・ロドリゲスとアタッカーのカルロス・バッカを続けて投入した。
ところが、功を焦ったか。「残念ながらうまくいかなかった」と積極策は読み違う結果に。1人少ないなかで重心を前にかけたことで、逆にピッチ上のバランスは失われた。
「後半に入って、日本は自分のスタイルでうまくプレーしてチャンスをつかんだ」と認めるように、再度押し返した日本が決勝ゴールを得た。
とはいえ、日本も相手の自滅からおこぼれをあずかったわけではない。「スタートから非常にアグレッシブに入ることができ、そして数的優位な状況で試合をすることができた」とは、就任わずか2か月で金星をつかんだ日本の西野朗監督。序盤に先制して数的優位に立った際も、「コロンビアにポジショニングでの優位性を与えていた」と警戒していた。
相手のペケルマン監督が圧力をかけようとした後半に先んじて、ハーフタイムには「ポジショニングでの優位というのを持たないといけない」との指示。
「中途半端に攻め込んでのフィニッシュではなく、勝ち切るゲームであるし、積極性を持っていかないと」
涼しい気候が続いた開催地のサランスクも、試合になると気温30度近くを記録。指揮官に背中を押された選手たちは、厳しい直射日光に晒されながらも、1人少ないコロンビアよりも多く走り回った。
「(後半は)ポゼッションも高まり、(ラダメル)ファルカオはじめ相手の前線の選手のエネルギーを失わせた。自分たちでボールをコントロールできたと思います」
目論見通りの展開でアップセットを演出。自身が指揮したチームでは、1996年のアトランタ五輪でのブラジル相手に続く大舞台での金星だが、「運だけでなく、いい選手に恵まれているということ」と、功を譲る。
「最高の目標設定をしたなかでの結果」という勝利を手にしながらも、表情は崩れない。笑みの代わりに、したたかさがにじみ出ていた。
小谷紘友
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