クルマ遊びのゴール「S660 Modulo X」がオリジナルから3年経って登場したワケ
東海ウォーカー
乗らなければよかったと思える完成度の高さ
ノーマルのS660は一般車の中では相当足の硬い車だ。そのS660をベースとして、クルマ好きが作ったスポーツカー、しかも減衰力調整は最も硬い状態に設定しているということで、筆者は覚悟して試乗に臨んだ。

しかし乗った瞬間、その覚悟は杞憂に終わった。結論から先に申し上げると、ノーマルのS660より乗り心地がよいと断言する。しかも減衰力設定が最も硬い状態でだ!スポーツカーやスポーツモデルの中で、S660 Modulo Xは「柔らかさの最右翼」といえる。
細かな振動は確実に吸収しつつも、確かな芯の強さを感じさせる乗り味は、スポーツカーというよりもグランドツーリングカーに近い感覚。国産車で、この乗り味に似たモデルは思い浮かばず、欧州プレミアムブランドのコンパクトハッチ、なかでもアウディを彷彿させるものがある。スポーツカーや乗用車のスポーツモデルの中は、運転者は楽しいけれど、助手席には苦痛を伴う物があり、筆者の両親が乗るハッチバックのスポーツモデルもその典型だ。母は車に乗るたびに「こんな車を買ってきて」と父を罵り車内はいつも険悪だ。しかしS660 Modulo Xならその心配はない。硬い脚のスポーツカーは前時代的であるとModuloが提唱しているように思えた。

さらに直進安定性が向上しており、浮足立ったところが感じられないのも美質。ノーマルと比較しなければここはわかりづらいかもしれないが、4本のタイヤがしっかりと路面についていることを感じさせて安心感がある。これが最後までこだわったエアロの力なのだろう。この安定度と乗り心地、高速道路では絶対に有利に働くハズだ。
ではModulo XはS660からスポーツカーの要素を取り除いたのかというと、そうではない。自分を中心に車が動くという感覚はそのままに、さらにステアリングの入りがスムースで蛇を切ると、ノーマルよりも鋭くインに切れ込んでいく。ノーマルのS660も切れ込みが鋭いが、さらに鋭い。試乗後に自分のS660で試乗した道を走行したのだが、あまりの違いに驚いてしまった……。
ドリルドローターとスポーツパッドからなるブレーキは、ブレーキング時に「シャー」という音はするものの、初期制動を重視しているノーマルとは異なり、速度コントロールとブレーキタッチに重きをおいたもの。安心して峠がダウンヒルできるだけでなく、街中でもカックンブレーキになりづらいだろう。

これらS660 Modulo Xの良さは、サーキットではなく、一般道で得られるというのが最大の魅力。スポーツモデルの楽しい領域というのは、かなりの速度を出さないと味わえない場合がある。しかしS660 Modulo Xは、法定速度の範囲内で車の楽しさ、いい物を手に入れたという充足感が十二分に味わえる。これは消費者に近いエンジニア達が、自分たちも含めたユーザー目線の、実際の利用環境に則したモノづくりをした結果だ。
最初からコレで売ってほしかったと言いたくなる完成度
「最初からこの状態で売ってほしかった」と文句を言いたくなるほどの完成度の高さ。現在ノーマル状態でS660に乗っている人は、乗らない方が身のためだと思う。なぜなら欲しくなるから。S660オーナーである筆者も「乗らなければよかった」と後悔している。

コンパクトカーやミニバン、SUVなどいろいろな車を乗りついだ人にこそ、このS660 Modulo Xを一度乗ってほしい。釣りはフナに始まりフナに終わるというが、マイクロスポーツカーS660 Modulo Xは「クルマの楽しさが再認識できる」最高の一台。クルマ遊びのゴールはここにある。
淺野倫孝
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