酒を愛し、楽しむ「仙人」が今日も酒を仕込む蔵。宮城県「森民酒造店」
東京ウォーカー(全国版)
日本酒の可能性に挑戦する、時を刻む古酒
森さんが興奮しながら話してくれたのが「古酒」のこと。出会いは、酒造りを始めてすぐ。研修で訪れた東京の酒類総合研究所で、岐阜『達磨正宗(だるままさむね)』の古酒を口にした。
「びっくりしましたよ。日本酒の可能性はすごいなと。紹興酒のような風味があって、自分が知っている酒じゃない味でした。帰ってきてすぐやり始めました。今蔵にあるので、一番古いのが1974(昭和49)年のもの。そのあとも毎年ではないですが、多くつくった年は蔵の中に貯蔵しています」。
現在販売しているのは、12年ものと35年もの。35年ものは大吟醸酒、12年ものは純米吟醸酒。今、12年ものはとろりとした琥珀色に、35年ものは透き通った薄緑色になっているのがわかる。

「すぐに結果がわかることじゃありませんから、貯蔵して数年後が楽しみです」。
『森泉』の定番は純米酒だが、生原酒も20年来の人気商品だ。流通の関係で生酒があまり売られていなかった当時から、森民酒造店では店頭で生原酒を出し続けている。
「できあがった日本酒を袋に詰めて、槽(ふね)でちょっとずつしぼったものです。ここに来たら、のんでいってほしいですね」。
森民酒造店は、東日本大震災の前まで、1883(明治16)年の創業時に建てられた蔵で酒造りをしていた。地震で壁の一部が落ち、断熱に問題が出るようになって使用しなくなったが、今も古いタンクが展示され、かつての姿を感じることができる。

旧酒蔵の隣に立つ一軒家も立ち寄りたい。1935(昭和10)年に建てられた離れ座敷で、隠居した森さんの祖父が住んでいたそうだ。光が入る縁側、しんとした床の間、手吹きのガラス戸。酒造りを営む一家の暮らしが当時のまま残されている。

森民酒造店の敷地内にある店舗、酒造施設、住居は、国の登録有形文化財だ。こんこんと水をたたえる蔵前の井戸、のびのび背を伸ばす大きな木々。酒を愛し、楽しむ「仙人」が今日も酒を仕込む蔵は、静かに歴史を刻み続けている。

※KADOKAWA刊『会いに行ける酒蔵ツーリズム 仙台・宮城』より
栗原祥光
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