ハチミツは甘く人生は単純! 我が道を行くプーさんの哲学的教訓が深すぎる!<連載/ウワサの映画 Vol.50>

2018年9月7日 8:00更新

東海ウォーカー おおまえ

Twitterで
シェア
Facebookで
シェア

プーさんといえばディズニーの印象が強くて、まずは見慣れぬビジュアルにア然だった「プーと大人になった僕」。イギリス発の原作に寄せてあるのですが、そもそも私、”プー=ぬいぐるみ”って設定も知らなかったもので…。「ハチミツまみれのザ・ぬいぐるみ!(洗濯が大変...)」というレトロ感強しのシュールな世界になじめるのか不安で(笑)。でも、原作とディズニーが融合した新たな世界観が絶妙だったこともあり、記念すべきプーさんの初実写映画にすっかり没入! 「昔の僕じゃねぇしっ!!」と半泣きの中年男(少年っぽさを残すユアン・マクレガーがハマり役)が取り戻す”大切なもの”にほっこりしちゃった。

大人になった主人公クリストファー・ロビンと、初めて”100エーカーの森”を飛び出した昔の大親友プーの冒険が展開。パディントン? ted? と思いきやトイ・ストーリー的楽しさアリ!
©2018 Disney Enterprises, Inc.

全ての画像を見る(7件)

主人公は、妻のイヴリン&娘のマデリンと共に、ロンドンで仕事中心の多忙な毎日を送るクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)。ある日彼は、妻子と実家で過ごす予定の週末に緊急の仕事を任され、公園のベンチで会社&家族の”難題”に頭を抱えていました。そんな彼の前に突然現れたのは、少年時代の大親友プー(声:ジム・カミングス)! プーに「森の仲間たちが見つからない、一緒に探してほしい」と頼まれたクリストファー・ロビンは、かつてプーたちと過ごした“100エーカーの森”へ。ピグレット、ティガー、イーヨーら変わらない仲間との再会に懐かしさを感じながらも、彼は、仕事のために急いでロンドンに戻ることに…。「仕事って、ぼくの赤い風船より大事なの?」と悲しむプーたちでしたが、クリストファー・ロビンが会議の重要な書類を森に忘れていったことに気付き、マデリンの助けを借りて大都会・ロンドンを目指すのでした…。

【写真を見る】娘・マデリンにも自分と同じように寄宿学校に行かせることを決めたパパ。その日が近づき、父娘関係もどこかギクシャクしていましたが…©2018 Disney Enterprises, Inc.

たまにマヌケに見えても、実はかなり深い智慧の持ち主であるプー。「大好きな人たちと過ごし、大好きな事をする」ことだけに一途な彼の純朴すぎるハートに癒されまくりです。表情も声も媚びゼロで、主人公を見つめる”点”なおめめが愛らしくって。成熟した声とくたびれた外見は、プーも主人公と同じように約30年の時を重ねてきた印。でも中身はちっとも変わってないんだよね。

プーの楽観主義をちょっとは見習ってほしい、悲観的なロバのイーヨー(右)がお気に入り! 自虐的で皮肉たっぷりのトークにニンマリしちゃう~ ©2018 Disney Enterprises, Inc.

逆に主人公はえらく変貌しちゃってます。厳格な寄宿学校生活、第二次世界大戦、結婚に子育てを経て、戦後ロンドンの復興を背景に合理的な大人になった彼は、”重荷”に押し潰される寸前。家族のためのブラック気味な過労が原因で、家族との交流がおろそかになるという皮肉…。そんな彼が、地獄のストレスを抱えて久々に訪れた”100エーカーの森”を通じ、思いがけず「クリストファー・ロビン少年」との再会を果たすんですね。プーたちにとって頼れる存在だったその少年は、長い時を経た今、森の仲間たちが怯える”空想上の怪物”を退治して昔のように彼らを助けます。そしてその勢いで、今度は会社の仲間を救うべく”リアルな怪物(=ムカつく上司)”に挑む…。”行きて帰りし”な旅が濃密だなぁ。

1928年に発表された「プー横丁にたった家」。そのラストで、クリストファー・ロビンが寄宿学校に入るためにプーに別れを告げたところから物語はつながっていきます©2018 Disney Enterprises, Inc.

そうそう、この”100エーカーの森”の撮影は、原作者の別荘があり物語の舞台にもなっているイースト・サセックスのアッシュダウン・フォレストで行われています。実写で蘇る心の原風景は格別の美しさ! ”雄大な森”と”重厚なロンドン”の対比が冴える映像世界がステキです。

約100年に渡り愛される原作本の体裁を導入に用い、挿絵が飛び出してきたようなリアルな演出でプーの世界に誘います。E.H.シェパードの象徴的なイラストの構図(写真)に感涙!©2018 Disney Enterprises, Inc.

クリストファー・ロビンと共に大人になった観客が、原作を超えて初めて体験する”共感”の仕込みが効き、より深みが増したプーの物語。「ぼくは“何もしない”を毎日やってるよ」と言うプーには”明日”の概念はなく、”今日”しか存在しないのです。「風船よりも大切なもの」を見極め、些細な瞬間を楽しむことの連続こそが幸福な人生を形作っていく…。大人像に逃げて、「未来のため」とか言い訳して平気で今日を犠牲にしてる私には、グサッと刺さる(泣)。

メリーポピンズのほか、ディズニー版プーの音楽を1作目から手掛けてきたシャーマン兄弟の弟、リチャード・M・シャーマン(90歳!)がエンドロールに登場。演奏&歌声を披露します!©2018 Disney Enterprises, Inc.

個人的に本作の主演男優賞は、「ジジィかい!」(失礼)と脱力必至の、30年間ず~っとプーの声を担当してるジム・カミングス! 具合悪そうに絞り出すテンション低めの声がプーの”表情”の役割も担っていて貫録満点、唯一無二の味わいなのです。 アニメ版では聞けない哀愁の老け声は、一気にノスタルジーを掻き立てる不思議で温かな響き。予告編だけで病みつき必至です!【東海ウォーカー】

監督はマーク・フォスター。彼が監督した「ネバーランド」(ジョニー・デップ扮する劇作家と少年を巡るピーター・パンの誕生秘話)を、どことなく想起させます©2018 Disney Enterprises, Inc.

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」(10月12日公開)の松尾スズキ!

この記事の画像一覧(全7枚)

大きなサイズで見る

キーワード

関連記事

ページ上部へ戻る