「 気持ちをもう隠さずに出そうと思っている 」進化を続ける宇野昌磨、いざNHK杯へ

2018年11月8日 18:30更新

東海ウォーカー 中村康一(Image Works)

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11月9日(金)から、広島県立総合体育館にてNHK杯国際フィギュアスケート競技大会が開幕する。宮原知子の連勝なるか、紀平梨花のGPシリーズデビュー、またトゥクタミシェワとのトリプルアクセル対決など、見どころの多い大会だが、白眉はやはり宇野昌磨のスケートカナダに続く連勝がなるか、だろう。この項ではスケートカナダでの宇野昌磨の戦いぶりを、彼のコメントを通して振り返りたい。併せてNHK杯開幕前日、11月8日の公式練習の模様も速報としてお伝えしたい。

NHK杯の公式練習に臨む宇野昌磨
中村 康一(Image Works)

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万全を期して臨んだスケートカナダ

スケートカナダでの宇野昌磨は、異例とも思える早乗りで現地入りし、万全の調整を積んで大会本番に臨んだ。

「木曜日に日本を出発して、金曜日から(現地で)練習して、金、土、日、3日練習して1日休み、再び練習です。早乗りはしてますけど、前より時差調整も慣れてきて、苦もなく調整できていると思います。ジャンプの調子も日本と変わらず、落ち着いて試合に臨めるようになってきたかな、と思います」。

ただ公式練習後の取材で、曲かけでのジャンプの確率について尋ねたところ、

「まあ、ワンミスからツーミスがいつもの感じです。ノーミスが珍しい、3ミスも珍しい。どちらもありえなくはないけど、ワンミスかツーミスが多い。サルコウかフリップを失敗することが多いです」。

と、ノーミスはあまり期待できない状態であることを仄めかしていた。もちろんこれはフリーでの話であり、ショートはノーミスで乗り切ってくれることを信じていた。しかし、最も確率の高い、安心して見ていられるはずだったトリプルアクセルに、落とし穴は潜んでいた。まさかの転倒。そしてフェンスへの激突。

「6分からアクセル以外のジャンプが決まらない感じだったんですけど、だからこそやってきたことを信じて、強い気持ちで4回転フリップ、4回転3回転。2個目の4回転3回転は回り過ぎてしまいました。いい傾向のミスだったなと思っていたんですけど、アクセルの時に、練習で跳べていたから、という油断した気持ちが出てしまって、かなり浅い踏み込みになってしまって。油断してしまったという気持ち、悔しいというのと、またやってしまったという後悔の気持ちが演技中にもありました」。

と、悔しさを露わにした演技後の取材となってしまった。実はこの時のトリプルアクセルの失敗、私の撮影ポジションのまさに目の前で起こったことだった。その時、あまりにも壁に近い場所でアクセルを跳んだことが気にかかっていた。北米では大半のスケートリンクがアイスホッケーを前提としたサイズとなっており、フィギュアスケート用の規格に比べて小さいのだ。スケートカナダのラヴァルのアリーナもそうだった。これが影響したのでは、質問してみたのだが、

「いや、関係ないですね。(転倒後に)壁にぶつかったっていうのは関係あるかもしれませんけど、アクセルに関しては、あれは狭くても広くても同じ失敗をしていたと思います」。

とリンクのサイズの影響ではなかったことを強調していた。

「本当に油断した、という結果でしたね。完全に。もう一度、もう一回やり直していいよって言われたら、10回やって何回失敗するか、少ない方だと思うんですけど、それを試合で失敗してしまった。完全に自分の気持ちのミスかなと思います」。

「気持ちがジャンプに影響する。メンタル面はとても大きなものだと思っているんですけど、踏み込んで、あ、これはやってしまったな、と。そこからの締めてるトリプルアクセルは失敗を確信して。そこから、絶対跳んでやるという気持ちが芽生えたら踏ん張れたかもしれないんですけど、そこで完全に自分に負けていた、という思いです」。

ここまで悔しさを露わにした宇野昌磨選手、私の記憶にはなかった。

「失敗の気持ちが大きすぎて、他の演技が良かったことを見つけるよりも、後悔の気持ちの方が強いので、いまはアクセルをしっかり後悔して、悔しい気持ちを受け入れて、明日は同じ失敗をしないように。明日は(トリプルアクセルが)2個入ってますし、しっかりやるってことを頑張りたいと思います」。

熱い思いを包み隠すことなくぶつけた、渾身のフリー

この熱い思いが、翌日のフリープログラムで結実することとなる。序盤から鬼気迫る表情で演技を披露した宇野選手は、最後に2つのミスをしてしまうものの、見事な逆転優勝を飾ったのだ。

「いままでは気持ちをコントロールしたりとか、色々考えていたんですけど、ショートがもう、すごく悔しかったので。体力とか、結構自信あったんですけど、もう使い切るつもりで、スケーティング、スピン、ジャンプ、すべてに手を抜くことなく思い切りやろうという気持ちで今日のフリーは滑りました」。

そのことが、後半のスタミナ切れにつながったようだ。

「体力に自信はあったんですけど、それは練習でもやはり80%ぐらいの力でやっていて自信があっただけで、今日ぐらい全力でやった時にまだまだ最後まで滑り切る体力がなかったという結果かな、と。その分、前半がうまく行ったのかなとも思うんですけど、サルコウは今回、回転不足が取られていましたし、スピン、ステップも取りこぼしが多かったですし、何よりジャンプのミスもまだまだあるので。いろんな課題が見つかったところではありますけど、こういう試合も悪くないな、と思いました」。

そして、前日の失敗と同じ場所で跳んだ、一つ目のトリプルアクセル。厳しい表情で踏み切りに臨んだことが印象的で、この点について聞いてみたところ、

「どれだけひん曲がっても、どんなジャンプになっても、力で絶対に降りてやるぞという気持ちがあったので、たとえ右にとんでもなく斜めっても3回転半回る気でしたし、どんだけひどくても絶対に最後まで諦めないという気持ちでいけました」。

こんな強い言葉、これまで宇野昌磨選手から聞いたことはなかった。彼の心境が大きく変わりつつあることを感じた瞬間だった。そして彼はさらに続けた。

「昨日はもう、失敗するもんだと全然考えていなかったので、アクセルだけはなにも考えずに。踏み込んだ瞬間に、『あ、やばい』と思って、その『やばい』と思ってからでも戻せる技術だったり力があるのに、諦めてしまったというか、失敗だと思ってしまった自分が情けなかったというか、悔しかったので、フリーではそうならないように、もうどんだけ、頭から落ちてもいいから、僕は3回転半絶対回ってやるぞという強い気持ちが、ま、アクセルだけじゃないんですけど(4回転)トウループだったり、(4回転)サルコウ、(4回転)フリップにも現れていたかな、と思います」。

いつも冷静で淡々としていた印象の宇野選手。これまでの私の印象を覆す、熱い面を見せてくれた大会となった。このことについて一夜明け会見で尋ねてみたところ、

「僕は元々冷静でもないですし、すごく負けず嫌いですし。その時に思った気持ちをもう隠さずに出そうと思っているので」。

いままでは表に出さずにいた熱い心、それを隠さずに表に出そうと決めたのだという。大きな変化だ。エキジビションの演技についても、以前よりもとても良く踊り、表現するようになったと感じている。本人の言葉によれば「以前よりも恥ずかしさがなくなった」のだという。今後の彼のさらなる進化を確信し、これからの演技がますます楽しみでならない。そう強く感じた取材となった。

そして迎えたNHK杯、GPシリーズ連勝へ!

11月8日、NHK杯の本番リンクで行われた午前の公式練習、宇野昌磨はスケートカナダよりもさらに好調な様子だ。ジャンプのミスは、3アクセル+オイラー+3フリップで一度崩れたぐらいで、他は曲かけも含めてパーフェクト。興味深かったのが、スケートカナダで手痛い失敗をしたショートプログラムのトリプルアクセル、跳ぶ位置、向きを変更していた。前回はロングサイドのフェンスに向かって跳んでいたが、今回はショートサイドのフェンスに向かって、距離的にも余裕のある場所を選んで跳んでいた。より確率を上げるための方策なのだろう。引き続き要注目だ。

そして先ほど終わったばかりの夕方の公式練習。宇野昌磨は相変わらず絶好調。4回転ジャンプも含めて失敗する気配がない。十分に仕上がったと見たのか、曲かけではジャパンジャージを着て、ジャンプを跳ばない形での調整となった。万全の状態で臨む明日のショートプログラム、大いに期待したい。

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