乃木坂46高山一実や松井玲奈も…タレント執筆なぜ続く?作家転身ミュージシャンが語る“書くことの意義”

2019年3月17日 9:00更新

東京ウォーカー(全国版) 丹羽毅

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本名のサミュエル・サトシ名義で小説家デビューする「HOME MADE 家族」のMC・KURO
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 乃木坂46・高山一実が小説家デビューを果たした『トラペジウム』が20万部を超えるヒットとなっているほか、さまざまなジャンルのタレントが近年続々と作家デビューを果たしている。芸能人だけでなくアスリートのセカンドキャリアなど著名人の“新しい生き方”が注目されている中、活動休止中のヒップホップグループ「HOME MADE 家族」のMC・KUROが小説家デビューする。音楽が売れない時代と言われる今、「ミュージシャンが紡ぐ言葉に価値を作りたい」という想い、アーティストの苦悩や生き様を描くことやミュージシャンが執筆活動をすることの“意義”についてKUROに語ってもらった。

アイドル・ミュージシャンの作家デビューやアスリートの第二の人生…“新たな生き方”に注目集まる

 タレント・ミュージシャン・アスリートなど著名人の“新しい生き方”への注目が高まっている。2015年にお笑いコンビ・ピースの又吉直樹が小説『火花』で芥川賞を受賞したことも記憶に新しいが、髭男爵・山田ルイ53世が「第24回 編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞して文筆業で評価され、カラテカ・矢部太郎のコミックエッセイ『大家さんと僕』は昨年70万部(オリコン調べ)を超えるベストセラーに。

 アイドルの文壇進出も目覚ましい。2018年11月に発売された乃木坂46の高山一実の小説『トラペジウム』(KADOKAWA)は20万部を超えるヒットを記録。芝居の世界で評価される元SKE48/乃木坂46の松井玲奈も女優業のかたわら、文芸誌『小説すばる』で連載し、短編集『カモフラージュ』が4月5日に集英社から発売される。いずれも「芸能人が書いて話題になった小説」ではなく、作品として受け入れられているのだ。

 ミュージシャンでは、バンドSEKAI NO OWARIのSaoriが本名の藤崎彩織の名義で執筆した小説『ふたご』は直木賞の候補に挙がった。そんな、著名人の作家化の流れがある中、活動休止中のヒップホップグループ「HOME MADE 家族」のMC・KUROが本名のサミュエル・サトシ名義で書き上げた小説『マン・イン・ザ・ミラー 「僕」はマイケル・ジャクソンに殺された』が3月18日に発売される。なぜタレント・ミュージシャンが文筆の世界に飛び込むのか。作家としてのKUROに話を聞いた。

グループ活動休止するも…バンド・ラジオ・執筆活動「休んでる実感はない」

「音楽が聞こえるような小説を書きたい」と語るKURO(C)ウォーカープラス

 HOME MADE家族は、2004年にメジャーデビュー、ヒット曲「サンキュー!!」収録の2005年の1stアルバムはオリコン週間アルバムランキングTOP10にランクインし、アニメ『交響詩篇エウレカセブン』の主題歌「少年ハート」収録アルバム『musication』は同ランキング3位(最高位)に。HOME MADE 家族の楽曲は、かねてからそのストーリー性が評価を受け、槇原敬之、米米クラブらのアーティストから見い出されフィーチャリング楽曲をリリースしたことも。ブレイクしたミュージシャンはグループの活動休止後どのような生活を送っているのだろうか。自身の近況について、KUROは「あまり活動休止した実感がないんです」と語る。

「グループ時代から平行して行っていたバンド活動で、3ヶ月に1回はライブを開いています。最近ではソロプロジェクトもはじめました。音楽以外では『シミルボン』という書評サイトで、コラムやレビューを書いたりしています。それと、インターネットラジオ局「Backstage Café」の番組「RADIO NEXUS」で週1回、パーソナリティーを担当しています。番組では音楽はもちろん、最近読んだ小説やマンガのことだったり、好きなことをお話しさせていただいてます」

 本業の音楽のみならず、書くこと、話すことへ積極的に取り組むが、小説を書くに至ったのはなぜだろうか。

「文筆の世界はもともと好きで、音楽制作の合間に書き溜めていたエッセイをスタッフにみせて、感想を聞いたりもしていました。活動休止を決めたときに「やるなら今がチャンスだ」と思いまして。文章を書いてみたい、ラジオでしゃべりたいって声を大にしていたら、ありがたいことに次々と実現して……でも、小説を書いてみないかと声をかけていただいたのは本当に驚きました」

 多方面にわたる活動が編集者の目に留まり、実在のインパーソネーターをモデルにした小説執筆をはじめたのが1年前のことだった。

アーティストの苦悩や生き様を描きたかった

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 小説の題材にしたインパーソネーターとは著名なミュージシャンやアーティストの何気ないしぐさまで完璧に再現するエンターテイナーのこと。模倣を笑いに昇華させるのではなく、本物をストイックに追求するという点において、日本で広く知られる「ものまねタレント」とは異なる存在だ。KUROは本作で、自他共に大ファンと認めるマイケル・ジャクソン本人ではなく、マイケルのインパーソネーターに光を当てた。

「もう、本物がそこにいるのかなっていうぐらいの衝撃でした」と、十数年前に初めて観たマイケルのインパーソネーターのパフォーマンスの興奮を語った。ところがKUROは小説執筆のために取材を重ね、深く知れば知るほど愕然とすることになる。

 「開口一番『僕を小説にしてもつまらないですよ』って言ったんです。彼のなかでは、マイケルに近づくことは、自分の個性を殺していく作業なんです。インパーソネーターであるが故に、自己主張は許されない。彼らはその矛盾を抱えながら生きている」

 アーティストとしての想い、生き様、個性をテーマにした同作。音楽やパフォーマンスを届けたい思いがあるが故の苦悩もある。これは、現在の音楽シーンに通じるテーマでもあるのではないか。

「音楽が売れない時代」が“悪”ではない。現代のアーティストの生き方とは

 「音楽が売れなくなった」といわれて久しい。ミリオンヒットが生まれ、“みんなが同じ音楽を聴いていた時代”から、今はサブスプリクションサービスやデジタルDLが浸透して音楽の楽しみ方も多様化・パーソナライズ化が進む。そうした音楽シーンの過渡期において、アーティストも生き方を変えなければいけないのだろうか。

「音楽ビジネスは、CD全盛期と比べると売り上げは落ちています。けれども、サービスやデバイスの進化によって音楽への接し方が多様化して、”音楽に触れる人の数”は増えているような気がします。旧譜と新譜が横並びになって、“時代の垣根”もなくなりました。「良いものは時間を超えて評価される」という点では、むしろいい時代になったと思いますね」

 時代の変化に合わせて、ミュージシャンも変わっていかなければならないが、音楽と決別したわけではない。“届ける手段”を音楽だけにこだわらない時代になったという。

「ミュージシャンの領域はここまで、と決めつけるのではなく、これまでの経験を財産として多角的に活かせる時代になったのだと思います。僕とは逆方向の方もいらっしゃいます。例えば、漫画家の浦沢直樹さんがバンドで音楽とイラストを融合させたライブを開いたりしています。“ゼロからのスタート”ではないんです。表現の手法が幅広い今の時代に、人間の経験値を重ねて、新しい形となって世に出ていく。それが今、音楽シーンだけでなく、さまざまな分野で起こっているのではないかと思います」

デジタルが音楽の主流だからこそ…ミュージシャンが紡ぐ言葉に“価値”を作りたい

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 「ミュージシャンだから書ける物語」があると語るKURO。そんな“ミュージシャンが紡ぐ言葉の価値”について、50年続くオリコンの音楽ビジネス誌「コンフィデンス」編集長の竹村謙二郎氏に話を聞いた。

「近年、Mr.Children、宇多田ヒカルの“歌詞集”がロングヒットしています。音楽デバイスの進化により、聴き放題型サービスやダウンロードサービスなどを通じてスマホで手軽に音楽を聴くというスタイルが定着してきたからこそ、“歌われている内容をもっと知りたい”“詞をもっと深く味わいたい”と、歌詞に対する興味関心を高める結果になったとも言えそうです。さらに歌詞集は“テキスト+デザイン”によって極めて上質なアート作品にもなっています。そこにも音楽アーティストの新たな表現の可能性を感じます。今後も歌詞集のムーブメントは事例が増えていくのではないでしょうか」(竹村氏)

 ミュージシャンは楽曲にストーリーや感情の起伏の“見せ場”を盛り込む。KUROはこれまで150曲以上を手掛け、いわば150以上の“短編小説”を作ってきた経験を生かして執筆活動を続けていく。

「今回、僕ができることって何だろうって考えました。“小説から音楽がどれだけ聞こえてくるか”、“活字でミュージックビデオが再現できるか”など試行錯誤しました。ラップの16小節を紡ぐイメージで、長い詩を読んでいるような小説にしたくて、特に言葉のリズムや読みやすさにはとことんこだわりましたね。ミュージシャンだから作れる活字の世界もあるはず。そう、“小節”から“小説”ですね」。そうインタビューでも韻を踏んで笑顔を見せる。

 KUROは、今も、創作活動で何もアイデアが浮かばず悩むことがあるという。しかしながら、「その苦悩を楽しんでいきたい」と新しい道へ進むことに喜びを見出しているようだ。

「今は再始動に向けたメンバーの成長期間で、“休んでいる時間”はないんです。『何か得てきたな』ってファンのみなさんに思っていただくためにも、メンバーそれぞれが何かしら得て帰ってきたいと思っています。僕の場合、そのうちの一つが執筆活動だったりするわけです。今後の音楽活動に、今回の経験で培った“小説的な脳みそ”を武器にしていきたいですね(笑)」

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