生誕500年の今川義元は地元静岡でも「ダメ武将」扱い? ゆるキャラ「今川さん」が訴える義元の“誤解”

東京ウォーカー(全国版)

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戦国時代を代表する武将の一人、今川義元。織田信長との戦いに敗れた桶狭間の戦いは、日本史の教科書に必ずと言っていいほど登場するエピソードだ。“負けた戦国大名”のイメージが強い今川義元だが、実は今、義元をモデルとしたキャラクターが静岡で活動している。その名も「今川さん」。その顔にはむすっとした表情を浮かべ、釣り目からは涙をこぼすなど、不満や悔しさがありありと見てとれる静岡市非公認キャラクターだ。その今川さんがある日、ウォーカープラス編集部に来訪。今川義元生誕500年の節目に、涙の理由や今川義元の知られざる功績について語ってもらった。

静岡市非公認キャラクター「今川さん」


泣いているのは「信長に負けたから」…ではない!?


2015年にご当地キャラクターとして誕生した今川さん。まず気になるのが、左目をつたう涙だ。やはり、自分を討ち取った仇敵・織田信長への恨みからなのだろうか?

「今川さんが泣いているのは、『織田信長に負けたから』ではないんです」。そう話すのは、「今川さん」のプロデュースを務める鈴木将仁氏。「今川さんは、信長に対しての敵対心はないんです。負けてしまったことは歴史的事実ですから。この涙は負けたことにではなく、後世の誤解や評判の悪さに対してなんです。織田信長も本能寺の変で明智光秀に謀反を起こされて亡くなっていますが、歴史的な評価は高い。ただ、今川義元の場合は桶狭間の戦いばかりがクローズアップされて、それまでの功績や人格まで否定されてしまった。400年以上も世間からバカにされてきたのが悔しくて泣いているんです」

【写真】今川さんの左目には涙のしずくが


新潟県人にとっての上杉謙信、宮城県民にとっての伊達政宗が英雄であるように、地元で戦国武将は語り継がれる存在だ。確かに、今川義元の一般的な見方は“負け武将”でいいイメージではない。地元・静岡県民にとって今川義元はどういう存在なのだろうか。

「残念ながら、全国的な評価と同じく”ダメな武将”というイメージが強いと思います。そもそも、今川義元が静岡を代表する戦国武将と見られていない。静岡の町で「静岡の戦国武将と言えば?」と質問しても、10人中9人は「徳川家康」と答えるのではないでしょうか。評価の低い武将でもお膝元だった土地では応援されていることも多いのですが、今川義元についてはあまりそれが見られないのが現状です」

そればかりか、「桶狭間の戦いのさなか、宴会を開いた」という根拠のない噂が広まり、歴史シミュレーションゲームでもステータスが低く設定されるなど、今川義元の評価は下がる一方。地元を代表する武将として胸を張ることができないどころか、徳川家康にお株を奪われる。そんな現状を打ち破るべく生まれたのが今川くんなのだという。

今川義元の本当の姿は…静岡の発展の基礎を作った功労者


涙の理由を語る「今川さん」


そんな今川義元の歴史的な功績はどこにあるのだろうか。鈴木さんは、静岡の町作りにあると話す。

「今川氏は足利氏の御一家・吉良家の分家で、数ある戦国大名の中でも血筋はピカイチです。そうした出自から京の都とのつながりが深く、文化面にも力を入れていました。「今川文化」が戦国三大文化の1つに数えられるほど、当時の静岡は全国的に見ても文化・経済の両面で発達した町だったのです。

制度面でも、後に織田信長が行う楽市・楽座のさきがけのようなことをやっていて、先進性もありました。静岡の町づくりは家康が行ったイメージが強いですが、実はその功績の大元は今川義元のものだと言えます」

町の発展だけでなく、今川氏の領国を拡大させ、駿河・遠江・三河の三国を経営するなど武将としての手腕もあったという義元。ある意味、徳川家康に功績を持っていかれてしまったとも言える。信長への恨みはないとしても、いいとこ取りの家康に対してはどう思っているのだろうか。

「当初は「打倒!家康くん」(浜松市のイメージキャラクター「出世大名 家康くん」)を掲げていましたが、今は違います。対立の図式は分かりやすくて世間からも面白がられるのですが、徳川家康公は、静岡を発展させた素晴らしい人なんですね。現在は、今川義元の思いや築き上げた静岡の町を徳川が継承して今の静岡がある、そういう歴史のつながりに目を向けてほしいと思っています」

復権なるか?「今川義元公生誕五百年祭」


そんな今川さん一世一代の大舞台が、5月から静岡で開催される「今川義元公生誕五百年祭」だ。今川さんは同イベントの公認広報大使を務めるほか、5月3日(金・祝)から6日(月・休)まで駿府城公園で行われる「今川復権まつり」にも“出陣”するという。イベントでは芸能を重んじた今川氏にちなむ多彩なステージや蹴鞠保存会による蹴鞠の実演、舞台公演などさまざまなコンテンツを通して今川氏の歴史や功績に光を当てる。

「2015年に家康公四百年祭が開催されたように、家康が“大御所”として静岡の地をよりよくしたことは変わりません。これからは今川義元についても知ってもらい、『家康もいるし義元もいる』と思ってもらえるようになればと思います」

いつかその涙をうれし泣きに変わる日を夢見て奮闘する今川さん。今まで「誤解」していた人もこの機会に静岡に足を運んで、今川義元の本当の姿に触れてみてほしい。

国分洋平

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