芸術の秋を気軽に満喫！東京ミッドタウンでデザインイベント開催中

東京ミッドタウンでは11月4日(月・祝)まで、「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに掲げる秋のデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2019」(東京ミッドタウン デザインタッチ)を開催中。13回目を迎える今年のテーマは、融合を意味する“FUSION”。東京ミッドタウンの各所に、デザインと空間、テクノロジー、アートなどの異分野が融合した様々なコンテンツが登場しており、来場者を楽しませている。

カラフルな渓谷に心躍る！メインイベント「デザインの森」

イベントの目玉となるのが、ミッドタウン・ガーデンに登場している「デザインの森」だ。約80mにわたり、歩道の両脇を色鮮やかなメッシュ素材の生地が覆う光景は、まさに圧巻。「六本木カラー渓谷」と名付けられたこの作品は、今春の「ミラノデザインウィーク」でも注目を浴びたクリエイティブ・ユニット“SPREAD”によるもの。ミッドタウン・ガーデンの自然とデザインが融合することで生まれるエネルギーを、ぜひ体感してみてほしい。

なお、同作品は夜のライトアップも魅力たっぷり。昼とは印象がガラリと変わり、幻想的な雰囲気に包まれる。

「デザインの森」には他にも、「Moment」と「デザインのひろば」という2つのコンテンツが用意されている。脇田玲氏が手がけた「Moment」は、「一瞬」という時間をテーマに、風の形を可視化したミラー素材の彫刻。「実際にこの場所に吹いている風を計測し、風の形をコンピューターに取り込み、彫刻にしました」と脇田氏。見る向きや、作品に自分が映りこむことによって変化する表情も、見どころの1つだ。

「デザインのひろば」には、実際に触れて遊ぶことのできる、5つの遊具が並ぶ。これらはすべて、プロダクトデザイナーの深澤直人氏や、インテリアデザイナーの五十嵐久枝氏がデザインし、グッドデザイン賞を受賞した遊具。公園に設置されているものとは一味違う、オブジェのような遊具が、子供の「遊ぶ」感覚を広げてくれる。

150点以上の時計を展示！オーデマ ピゲ「時計以上の何か」

芝生広場で開催されている、スイスの高級時計ブランド、オーデマ ピゲのエキシビションも見どころの1つだ。タイトルは「時計以上の何か」。パビリオンの中は洗練された雰囲気が漂い、一歩足を踏み入れると、一気にオーデマ ピゲの世界観に引き込まれる。

時計をイメージしたリング状の展示スペースには、12の部屋が設けられており、歴史的に価値のあるヴィンテージウォッチから現行モデルまで、150点以上の時計が勢ぞろい。さらには、展示を通して144年に及ぶオーデマ ピゲの歴史に触れることができる他、オーデマ ピゲの職人による貴重な技を間近で見ることができるなど、ファンにはたまらない内容が満載となっている。

デザインを五感で楽しむ、バラエティに富んだコンテンツの数々

東京ミッドタウンの敷地内では、この他にも様々な作品に親しむことができる。プラザ1階の屋外スペースには、実際に座って体験できる「intree table」(インツリー テーブル)が登場。「intree table」は、期間中に同時開催されている「デザイナート・トーキョー」の出展作。公共空間に小さなプライベートスペースをつくり出すためにデザインされた、屋外用の家具作品だ。テーブルに手をつき、体を支えるようにして腰掛けると、見える景色がガラッと変わり、座面が小枝のようにスイング。木々と一体になったような不思議な感覚を、ぜひお試しあれ。

「intree table」の近くにあるキャノピー・スクエアでは、マツダのデザイン展示も実施。ここでは、マツダの新世代クロスオーバーSUV「CX-30」の周りに大型LEDモニターを配置し、アート映像を映し出すことで、光の移ろいの美しさを表現している。

屋内に展示されている作品の数々も見逃せない。例えばガレリア地下1階「DEAN＆DELUCA」前の吹き抜け空間には、イタリア・ミラノで開催されているデザインの祭典「ミラノ・サローネ」でも活躍するデザイナー・柿木原 政広氏が手がけたモビールが展示されている。このモビールは、「ミラノ・サローネ」の息づかいを伝える「Salone in Roppongi」の展示として登場。柿木原氏いわく、正方形から円をくり抜いた後に残る、通常では捨てられてしまうかけらに着目した作品とのこと。

“脇役の形”で作られたモビールが風に揺れる光景は、見る人に様々な感情を与えてくれるはずだ。

また、アトリウムでは、ドコモのスマートフォンのスケッチなどを目にすることができる展示「ドコモとデザイン」が行われている他、ガレリア1階「Bonpoint」前では、手袋を親子のコミュニケーションツールとしてリデザインした、大広 Prodact Lab.による展示「Hanzoo！」も実施されている。

デザイン＆アートコンペの受賞・入選作品の展示も

なお、プラザ 地下1階のオープンスペースでは、「TOKYO MIDTOWN AWARD 2019」で受賞および入選した16作品を、11月10日(日)まで展示中。今年で12回目を迎えた同アワードは、デザインコンペとアートコンペの2部門で開催され、10月18日には授賞式が実施された。

「THE NEXT STANDARD」をテーマとした、今回のデザインコンペ。「すべてティッシュでできたティッシュペーパー」を考案した、デザイナーの河合航路氏、南 和宏氏、西川佳織氏がグランプリを受賞した。「ティッシュを使い終わったの箱がもったいない」という発想から生まれたというこの作品は、199組のティッシュペーパーと、少し厚手の1枚のティッシュペーパーでできている。最後の1枚は、ボックスの内側をティッシュとして使うため、無駄が全くない上に、インテリアとしての美しさも兼ね備えたものだ。

チームを代表してスピーチに臨んだ河合氏は「このアイディアに対して共感してもらえたことが、私たちにとって最高の結果につながったと考えております。次のステップとして、このアイディアを商品化し、世の中に浸透させ、テーマの通りNEXT STANDARDにすることを目指したいと考えております」と、受賞の喜びと共に今後の目標を語った。

一方のアートコンペは、応募者が自由にテーマを設定する形で実施。グランプリには、彫刻家・井原宏蕗氏の作品「made in ground」が輝いた。この作品は、生態系の循環において重要な役割を担っている、ミミズの糞塚に焦点をあてたもの。東京ミッドタウンの周辺で採取したミミズの糞塚を窯で焼成し、陶にすることで作られている。

作品を手がけた井原氏は、作品作りに協力してくれたすべての人への感謝を述べると共に、「この作品を作っていただいたミミズに感謝して、この場を締めくくらせていただこうと思います」とユーモアを交えて語り、笑顔を見せていた。

普段の生活の中で、デザインやアートと関わりがないという人も、東京ミッドタウンで気軽に芸術の秋を楽しんでみてはいかが？

水梨かおる