市民の半数を動員する巨大オタクフェスが長野県飯田市にあった!「丘フェス」に見る、サブカル×町おこしの新しい可能性
東京ウォーカー(全国版)
長野県南部の玄関口であり、南信州最大の都市・飯田市。りんご並木と“人形劇のまち”として知られる飯田で、2019年11月3日(祝)に、サブカル・グルメの祭典「第13回飯田丘のまちフェスティバル(丘フェス)」が開催された。近年は町おこしを目的に、アニメやコスプレなどのサブカルコンテンツと絡めたイベントが増えているが、茨城県大洗町などの成功例がある反面、安易なコラボで一過性のものになっている事例も少なくないのが実情だ。しかしこの丘フェスは単にサブカルファンを喜ばせるものとは一線を画す盛り上がりを見せ、今年はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターデザインを手がけた貞本義行氏がゲスト登壇するなど回を重ねるごとに規模を拡大。長野県でも最大級の規模を誇るイベントにまで成長したという。その秘密とは一体何か? 実際にイベントを訪れ、キーマンたちに話を聞いた。
ストリートを埋め尽くす人、人、人!オタクも家族連れも一緒に楽しめる
開催1時間前に、飯田市消防団ラッパ隊のファンファーレがメインステージに響き、多くの人々が町の中心地へと集まり始めた。そして、11時に毎回恒例の「もち投げ」を皮切りにイベントがスタートした。


エリアや通りごとに40ジャンル以上に分けられてたくさんの出店が並ぶ丘フェスは、コスプレ、グルメ、自衛隊、ミニ動物園、大道芸、車などなど、まさに“なんでもあり”の内容だ。
始まりは2007年、「インターナショナル・フィギュア・マーケット」というフィギュアを中心とした初開催のイベントに、商店街に立つビルのオープニングイベントなどが合同で開かれた催しがきっかけとか。昔から人形文化を持つ飯田の地域性はこのイベントを受け入れ、翌年の第2回目にはグルメイベントが加わったり、第6回目はマスコットキャラクターの「ナミキちゃん」が生まれたりと市民の多彩なアイデアを実現しながら拡大、今や5万人を集めるイベントになったという。

当日のメインステージでは、丘フェスのPR大使とマスコットキャラクターである「ナミキちゃん」の声を務める声優の高木美佑さんをはじめ、アーティストのCoba-Uさんらのライブなどが行われ、ステージを華やかに盛り上げた。
特に「インターナショナル・フィギュア・マーケット」や、オールジャンルコスプレイベント「飯田マスカレヰドパァティ」、痛車やクラシックカーの展示などなど、あらゆるオタク要素にあふれるサブカル系ブースは熱気がムンムンに。






そしてお昼が近づくにつれて、南信州と静岡西部、愛知東部からなる「三遠南信」の美味しいものを集めた「三遠南信グルメサミット」のブースや、信州の蔵元が集合した「南信州酒メッセ2019」にも多くの人が集まりはじめ、地元を中心とした美酒とグルメに舌鼓を打っていた。
さらにイベントの終了後には、飯田市公民館ホールにて、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターデザインなどで知られる貞本義行氏をスペシャルゲストに迎えた「後夜祭」を開催。貞本氏のトークショーや貞本氏が手掛けた短篇アニメ「砂の灯」の上映会などが行われたほか、今回の丘フェスの振り返りと、今後どう盛り上げていくかのディスカッションや、「ILC Supporters」の第2回未来会議なども繰り広げられ、興奮冷めやらぬまま2019年の丘フェスは幕を閉じた。


また、今回の丘フェスで、“飯田丘のまちメンバーズ”こと“丘メン” が誕生した。会員になると、今後イベント開催期間外でも、飯田を訪れたときに中心市街地商店街の店でさまざまなサービスが受けられるようになるそう。「ARを利用したナミキちゃんガイドなどを予定しています」と担当者談。今回の実証をもとに、丘メンが集う「交流会」も計画中だとか。
拡大のきっかけを後押しした2人が語る、「丘フェス」の魅力
約300年前から人形浄瑠璃が伝わる飯田。この町は、約40年前から「人形劇カーニバル」や「いいだ人形劇フェスタ」を開催し「人形のまち」としての長い歴史を持つ。「インターナショナルフィギュア・マーケット」が市民に受け入れられたことももちろん大きいが、拡大の理由はほかにもはあるという。進化を後押しした2人に話を伺った。
アニメプロデューサーの竹内宏彰氏は丘フェス第6回目から関わりを持ち、実行委員会と共にナミキちゃんイメージソング制作などを手掛けてきた。「飯田が優れているのは公民の力」と市民主体イベント成功の背景を語る。近年はアニメ・サブカルを使った町おこしイベントが各地で行われているのは前述の通り。だが作品のファンをターゲットにしたものが多く、作品の鮮度や人気ぶりによって盛り上がりは左右される。行政からのトップダウン型が多く、地元民にとっては当事者感が薄いものも多いそうだ。また、行政が予算をつけ代理店主導で開催されることも多く、予算が打ち切られたらそこで終わってしまうため、地域に根付きにくいのだとか。
「丘フェスは、いい意味で“コンテンツの地産地消”を実現している。地域のみなさんがつくったコンテンツを、地域でみなさんが楽しむ。それをどんどん拡大していくことによって、市外のみなさんにも参加していただく。東京から有名なアニメ作品を持ってきても、それは結局、他で生まれたものになりますからね」と、丘フェス独自の魅力を語ってくれた。


そして飯田市の牧野光朗市長。「飯田のメインカルチャーが人形劇なら、サブカルチャーとしてフィギュアがあっても面白いと言う市民のみなさんの発想を受けて、街中を歩行者天国にしてイベントができるようにと13年前からバックアップしてきました。また、人形を少しずつ動かしながら作った人形アニメから、“ジャパニメーション”と呼ばれるようになった今のアニメカルチャーにつながっていくんです」と、人形=フィギュア=アニメという文化のつながりと広がりが、丘フェスの原点となっているそうだ。丘フェスの最も特徴的なところは、「行政に言われたり、誰かに頼まれたりしてやるわけではなく、市民のみなさんがやりたいことをやっているだけであること。みなさんがアイディアを出し合って進化させてきた、自己増殖型のイベントなのです」と語る。「丘フェスは、いいだ人形劇フェスタと同様に市民主体の実行委員会方式で運営しています。市民のみなさんが主役となってやっていただいているからこそ、継続しているのです」。


さらに牧野市長は「飯田の課題は若者が出て行ったまま帰ってこないこと。だからこのイベントをきっかけにして、彼らが故郷に興味を持ってくれるような魅力ある町を作ることが大切だと思っています」と話す。
行政と市民が同じ方向を見て実施される丘フェスには、同じ課題を持つ自治体にとって大きなヒントが隠されているのではないだろうか。これからも丘フェスはどんな進化を見せてくれるのか。目が離せない。
北村康行
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