今が見ごろ!「そうだ 京都、行こう。」冬の京都の楽しみ方を体験レポート
東京ウォーカー(全国版)
“不変の美”と“雄大な世界”を感じる妙心寺 退蔵院

今度は右京区へ足を延ばし、JR「花園駅」下車徒歩約7分にある京都最大級の禅寺・臨済宗妙心寺の塔頭である退蔵院を訪問。画僧・如拙が1413年(応永20年)前後に描いた日本最古ともいわれる水墨画で国宝の瓢鮎図(ひょうねんず)や、一休(一休宗純は臨済宗の僧侶)が描いたという禅の祖、達磨大師の掛け軸などの「お宝」が多いことで知られている。


ここまで紹介した石庭が造園作家の手によるものに対し元信の庭は、室町時代の絵師・狩野元信の作品。常緑樹を用いることで、“不変の美”を表現した優美な庭だ。枯滝・蓬莱山・亀島と石橋など多数の庭石が豪快に組まれ、時折奥に植えられた竹藪からの音が、水のせせらぎのように聞こえる。なんとも美しい景色に心が洗われる。

枝垂桜を中央に、白砂の「陽の庭」と黒砂の「陰の庭」が向かい合う石庭は、合計15個の石が使われている。15という数字は仏教において完全を表すそうで、転じて「この上なくおめでたい」を意味するのだとか七五三も三々九度のいずれも合計数は15、さらに十五夜という言葉も。思い起こせば成人式も昔は1月15日に行われていた。そんな日本の伝統を改めて感じた。

そこから続く余香苑は1965年(昭和40年)、中根金作によってつくられた池泉回遊式庭園。水琴窟をはじめとして枯山水とは対照的な水と緑の美しく広大な庭だ。その退蔵院では「京の朝を楽しむ 妙心寺退蔵院坐禅体験と朝がゆプラン」が行われる。かの剣豪・宮本武蔵が若かりし頃に禅の修行をし、近年では数々の有名企業が坐禅の研修を行っているそうだが、通常は50名以上から受け付けるため、個人で受けられることは難しい。宮本武蔵が坐禅した場所での坐禅とは、滅多にない経験といえそうだ。

坐禅というとお坊様が棒(警策)でパシッと肩を叩かれて痛そうというイメージだが、同院では希望者のみに行うとのこと。実際に15分ほど坐禅体験をしたが、雑念ばかりが頭をよぎり悟りの境地には程遠かったものの、日常がいかに煩悩にまみれているか身をもって知った次第。ちなみに達磨大師は9年間坐禅修行をしたとのことだ。
絶対に見逃せない霊地!圧巻の臨川寺

続いて嵐山へと移動し、臨済宗の臨川寺へ。天龍寺の東に建つ開山堂で、1335年(建武2年)に後醍醐天皇が第2皇子・世良親王の菩提を弔うために建てられた。

嵐山のにぎわいにもおかされず静寂さを保つ境内には枯山水の龍華三会の庭があり、その奥には開山・夢窓国師のお墓もある。

それゆえ、かつては門前(渡月橋~芹川橋間)に関門を設けて通行禁止にするほど、国師入定の霊地として重要視され、現在も特別参拝時を除き通常は非公開。だが3月15日(日)のみに行われる京都駅発着バスプラン「京の庭を楽しむ非公開石庭めぐり」では参加者のみ参拝ができる。門から長く続く参道を通り足利義満の筆によって書かれた山門額のある中門の先には、見た事も無いような広大な石庭が広がり、その先に臨川寺三会院と呼ぶ開山堂(本堂)がある。

通常なら参道が本堂まで一直線に続くのだが、その道がない。これは本尊の弥勒菩薩から庭が美しく見えるようにしているためだとか。そんな龍華三会の庭は、中央の三尊石が、それぞれ釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩を意味し、その四方に十六羅漢が跪いて佛菩薩の法話を伺おうとするさまを表しているという。

開山堂の中に足を踏み入れると、凛とした空間に身が引き締まる思い。そこに静かに座り龍華三会の庭を長年眺めていたのだろう。

嵐山を借景とした雄大な枯山水庭園が広がる弘源寺

そこから歩いてすぐに、これまた通常は非公開の大本山天龍寺の塔頭寺院の弘源寺がある。1429年(永享元年)に室町幕府の管領であった細川持之が、天龍寺の開山である夢窓国師の法孫にあたる玉岫禅師を開山に迎え創建した。同院には、嵐山を借景とした雄大な枯山水庭園が広がる。

同院の柱には幕末の頃、 池田屋事件をきっかけとする蛤御門の変(1864年夏)を起こした長州藩士が弘源寺に逗留した際、試し切りの傷跡があちらこちらに残っている。

その他、同院には大きく体をそらせた毘沙門天立像(国指定重要文化財)もある。こちらも注目だ。



観て体験して禅の教えに触れる冬の京都
なお、この嵐山の近くには、おいしいものが沢山あるが、見たところ混雑している店舗が多い。せっかくなので、少し静かな場所で、京都の風情を感じながら食事を頂きたいと感じたらレストラン京 翠嵐(要予約)がオススメだ。築120年の旧財閥の邸宅空間をリノベーションしたレストランで、四季折々に変わる嵐山を借景にした日本庭園を眺めながら、会席料理とフランス料理の技法が融合した料理が楽しめる。ランチは5500円(税・サービス別)からで、フレンチといっても箸で頂くのでかしこまった感じは少ない。


石庭は、冬というモノトーンに彩られた京都と一体化し、さらなる深みを感じさせる。砂紋で水を表現する枯山水の世界は、一見どれも同じに見えるが、そのテーマは景色や教えと様々。限られた空間に自由と創造の翼が羽ばたいていた。禅宗は法話はもちろん、体験をする宗教。冬の古都で、坐禅や法話、そしてモノトーンの世界を観ながら「禅の世界」に触れてみてはいかがだろう。

栗原祥光
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