【林 信行さんロングインタビュー】2012年、魔法の時代がやってくる!~ITが拓く未来~(その1)
関西ウォーカー
ソーシャルメディアが発展し、スマートフォンをはじめとする新たなデバイスが広く普及した現在、ITの世界は岐路に立っているといえる。これから先、私たちとITの関係はどう変化していくのだろうか。長年ITやソーシャルメディアなど、次代の最先端の取材を続けてきたITジャーナリストの林信行さんに、2012年の動向を聞いた。
「ソーシャルメディアのこれから」
林 東日本大震災でTwitterが役立ったと聞いてソーシャルメディアを始めた人やスマートフォンを買って始めたという人は大勢出てきました。しかし、Twitterは情報伝達手段との有効性が認められた反面、非常に騒がしい場所になってしまいました。ユーザーが増えるのはいいことですが、これまでと同じような人ばかりではなくなります。誰でもわかるだろうとつぶやいたジョークに対し、全然知らないフォロワーから過剰反応されて怖くなったとTwitterをやめ、Facebookに潜ってしまった人もいます。
逆にFacebookはいい感じでユーザーが増加しています。Twitterは拡散のツールとしては使えるけれども、深い話をするならFacebookと分かれてきた印象。でも、拡散の情報ばかりになると、Twitterがスパムメディアのようになってしまって、それも使いづらくなります。Twitterはどこかでうまい軌道修正が必要かもしれません。
いま、われわれが接する情報量は、もはや我々が対処しきれないほど増えてしまいました。総務省が2009年に発表した調査結果では、その12年前の1997年と比べて、日々接する情報量が678倍にも膨れ上がったと言うことです。今は、さらに爆発的に増えていることでしょう。情報の量は指数関数的に増え続けますが、人間の処理能力はそれに追いつけないので、言ってみればわれわれは常に677の情報を捨てながら生きていることになります。そんな時代にメッセージを届ける上で重要になるのが情報の絞り込みです。たとえば僕が「大阪に来ました」とつぶやくだけではみんな素通りしてしまいますが、「大阪の御堂筋線の何両目に乗っていたらこんなことがあった」とつぶやくと、「僕もその電車の何両目に乗っていました!」という反応があります。範囲が狭ければ狭いほど、読む側は親近感を感じ反応したい感情に火がつきやすくなります。
そうした絞り込みには「時間軸」「空間軸」「親密軸」が上げられます。いまの電車は「空間軸」です。時間軸も結構重要で、たとえばいま見ているテレビ番組がつまらなければ、録画した番組を見ればいいのに、「いまやってる番組つまらないよな」とTwitterでつぶやきながら、誰かと「つまらない」という体験を共有していくことがおもしろくなります。それが時間軸です。親密軸とは、それが誰が発した情報か、というフィルターです。例えば「おはよう」の一言でも、人気アイドルのつぶやきだと何十人もの反応が、その一言に熱い反応を返します。
「絞り込み」と同時に大事なアプローチが「巻き込み」。たとえばTwitterで完璧すぎるつぶやきに対しては、逆に何も言えなくなる。突っ込み所の多い間抜けキャラの方が「そこは○○だから」と突っ込まれて、話題を盛り上げることができます。
巻き込み型のソーシャルメディアとしてはアメリカのソーシャルファンドの「KickStarter」があります。さまざまな人が新製品などの企画を出し、賛同者に出資を募ります。たとえば5ドル払えば製品にクレジットを入れるとか、10ドルならステッカーを贈る、50ドル出せば商品を贈るといったプロジェクトがあります。たとえばiPhoneに付けて360度のパノラマ撮影ができる「GoPano micro」というレンズは僕も出資し、実際に商品を受け取りました。
こうした巻き込み型の商品は出資者が一番の応援団になります。自分はこれについていくら出資したというので、Twitterで宣伝したり、それによってバズも広がっていきます。たとえば、無料のアプリや電子書籍のレビューでは「有料だったら買わない」などと非常に評価が低いことがあります。でも、同じものでもお金を払った人は好意的なことが多い。これは自分の下した決断に責任を持ち、広げようという意識があるからです。無料で入手した人はバズを広げる効果はあっても、必ずしも質が高いわけではない。こういった点からもいかに巻き込み、当事者にしていくかが大事なところです。
(その2に続く)
http://news.walkerplus.com/2012/0104/11/
【取材・文=鳴川和代】
この記事の画像一覧(全1枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介