WEB連載【GEAR'S VOICE Vol.13】ノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」マジシャンの山下翔吾インタビュー@『BAR探偵』
関西ウォーカー
秋の観光でにぎわう京都の街で絶賛公演中のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」の連載コラム第13回目(毎週木曜日更新)。
今回も制作スタッフの大名(だいみょう)が、「ギア」マジシャンの山下翔吾さんにインタビュー。
「こんにちは、大名です。京都もすっかり秋の気候になり、過ごしやすい日々が訪れました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか? 今回は「ギア-GEAR-」に出演中のマジシャン・山下翔吾さんに、左京区のバー『BAR探偵』さんにてお話を伺いました」
大名:本日は『BAR探偵』さんにお邪魔しています。選ばれたきっかけは?
山下:ここは、僕が通っていた大学の学科長でもある映画監督の林海象さんが経営されているお店で、マジシャン・山下翔吾のスタート地点となった場所なんです。
大名:いいお話が聞けそうな予感がします。では、まずご出身からお伺いします。
山下:僕は熊本県の出身なのですが、熊本市内からは遠く、島を5つも渡らないと辿り着けない島で生まれ育ちました。京都に出てきたのは、大学に入ってからなんです。
大名:遠く離れた京都の大学に行くことを決めた理由は何だったのでしょうか?
山下:大好きな映画を学べる学科があったから、という理由が大きいですね。ぼくは小さい頃から映画が大好きで、字幕も読めないうちから、祖母に隣で字幕を読んでもらいながら西部劇を観たりしていたんです。一般的な子どもでいう読み聞かせのようなことを映画でしてもらっていたんですよ。中学の頃には自主制作映画を撮ったりもしました。
大名:そんなにも映画好きの山下さんがマジシャンの道に進まれた経緯をお聞かせください。
山下:大学に入って、ちゃんと映画のことを学んでみて、自分が考えていた理想と現実との違いに愕然としたんです。それまで、映画は感性があれば創れるものだと思っていたんですが、実はその裏側には本当にたくさんの事務的な作業があって、色んな手順を根気強くこなしていかないといけないんですよね。その現実につまづき、大学に通わなくなった時期がありました。その頃に始めたのがマジックでした。
大名:なぜマジックだったのでしょうか?
山下:京都に出てくる前に、小学生の姪っ子が「京都でも頑張ってね」と、簡単にできるマジック用トランプをプレゼントしてくれたんです。それを友人の前で披露してみると、意外にも好評で、「これは面白いかも知れない」と、どんどんマジックにハマっていきました。そうして、学校にはろくに通わずにマジックに明け暮れる日々が始まりました。そんな日々のなかで『BAR探偵』と、林 海象さんとの出会いがあったんです。何せ大学にはほとんど通っていなかったので、監督にもほとんどお会いしたことがなかったんですが、このお店でお話をして、いろいろと人生相談に乗ってもらいました。そのお返しとしてマジックを披露してみたところ、気に入ってくださって、「よし、来週からここでマジックをやれ!」と言われたんですよ(笑)。それから、一着しか持っていないスーツを着て、毎週バーに来るお客さんにマジックを見せるようになりました。それでチップをもらえるようになり、少しづつお仕事としてマジックをさせていただけるようになったんです。
大名:たくさんの人との出会いがありそうなこの場所ですが、ほかにも思い出深いエピソードがあれば教えてください。
山下:マジックを初めて2年目くらいのことだったと思います。女優の小泉今日子さんがいらっしゃっていて、マジックを披露させていただいたところ、すごく驚いてくださって、お返しにとご飯をご馳走していただいた上に、いろいろとお話をさせていただきました。そのなかでふと「早く一発芸から抜けないとね」という言葉をおっしゃったんです。人前でマジックを披露することにも慣れ始めていた頃だったので、この言葉は胸に刺さりました。自分が多少なりとも自信を持ってやっていたことは、まだまだ一発芸だったんだな、と。本当の芸について深く考え直す機会を与えてくださった小泉さんには、すごく感謝しています。
大名:マジックの魅力はどんなところでしょうか?
山下:あくまでも知的に、平和的に、驚かせるというのがいいですよね。ぼくは、小さい頃から友人からも嫌がられるほどのイタズラっ子だったんです(笑)。相手を嫌な気持ちにすることなくビックリさせることのできるマジックは、僕にとって最高の遊びなのかも知れません。あとは、人との良きコミュニケーションの手段になるということでしょうか。ぼくは、マジックを義務教育に取り入れるべきだと真剣に考えているんです。話すのが苦手な人でも、ひとつのマジックをするだけで、不思議なことに何の壁もなくなっちゃうんですよね。人とのコミュニケーションの入り口として、ぜひもっと多くの人にマジックを活用してもらいたいと思っています。
大名:今後の活動のビジョンがあればお聞かせください。
山下:ぼくの場合、「絶対マジシャンになる!」という確固たる決意が元々あったわけではなくて、気付いたらマジシャンになっていた、という感じなんですね。そして、いまは気付いたらギアという舞台の上で演技もやっています。流される、ということ。ぼくはこれが別に悪いことだとは思っていなくて、むしろ好きなんです。変に決めつけてこなかったからこそ、いまがあるのですから。ぼく、流されていく先の運が良いんですよね(笑)。
だから、これから先も絶対マジシャン!という明確な気持ちは特にないです。もちろんマジックは大好きだし、敬意は常に持っています。ただ、マジックだけにとらわれないエンターテイナーになりたいんです。ぼくにとってマジックは、あくまでも人を楽しませるための手段であって、最終目的ではありません。
マジックに関して言うなら、僕はマギー審司さんがされているようなコメディーマジックのスタイルが大好きなんです。笑いというのは、実は多くのマジシャンが苦手とする分野なんですが、ぼくは「笑いがあるからこそ驚きがある」と考えていて、常に笑いとともにあるマジックを目指していきたいと思っています。
さらには自分のマジックで、まるでひとつの映画を見たような感動をお客様に与えることが目標です。いまのぼくにとって、その地点に最も近いのがギアだと思っていて、必ず到達できると確信しています。ぜひ一度、劇場に体感しに来てほしいですね。
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