【その2】小説家や翻訳家として活躍中の渡辺由佳里。教育をテーマに展開される、新刊の内容とは?

関西ウォーカー

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_日本の教育は、学校や教育委員会に一任している状態ですよね。何か起これば、責任転嫁の繰り返しで。

「そうですね。日本が悪くなったとは言えないんですが…私が子供の頃も決して教育環境が良かったとは言えなかったから(笑)。だけどやっぱり、恊働できるシステムが無いというのが大きいと思いますね。やっぱりそこが一番の問題だと思います。これは当たり前のことですけど、教育というのは学校だけでは出来ないじゃないですか。それだけは本当に確かなので、ちゃんと学校と教師と関わり合って、一緒に手を繋いであるべき姿へ向かっていくという姿勢が大切なんですよね。それが出来ていると、多少のミスがどこかで生じたとしても、全員が関わっていることだから『学校に責任がある』『教育委員会に責任がある』ということではなく、それに関わる全員で『じゃあそれをこれからどう変えていこうか』という、とても発展的な対応になってくると思いますね。一緒に解決していこう、という。そうなってくると親の方としても、もし自分の子供に何か問題があったとしても相談しやすいんですよね。日本で教育熱心と言われてる方のなかには『自分の子供だけ』に目が向けられていることが多いのですが、それは違うと思うんです。自分の子供を含む全員の子供の将来がよくならないと、自分の子どもの将来もよくはならない」

_やはりアメリカは独立戦争以来、自治の意識がすごく高いということなんでしょうか。

「そうですね。今回の本でも独立戦争については触れているのですが、つまり『自由というのは自分で闘って勝ち取ったものだから』という意識がすごく強いんですね。まだ民主主義がなかった時代から、それを勝ち取るために闘ってきたわけなんだから、そうやって勝ち得たものは何としても守ろうという意識が非常に強く根付いているわけですね。でも日本人の場合は勝ち得たものではなく、戦後に与えられたものですよね。ですから民主主義というものが欲しくてもらったわけではないという。なので自由というものには必然的に義務がついてくる、という事をあまりよくわかっていないのではないかと感じます。自由は自分で維持しないと無くなってしまうということを。政府にあらゆる決断をすべて一任している、という点においてもそうですよね。」

_教育というカテゴリーに関心がむくのは、親であったり親になる願望がある人だけのものという意識もありますね。特に晩婚化が進んでいるという実状もあったりですとか。

「現在だと、晩婚だと言われる年齢ってどのくらいなんですかね(笑)。私も結婚したのは日本の基準では遅かったと思うんですが(笑)。30歳でしたけど。」

_30歳はもはや普通です(笑)。晩婚ならまだしも、未婚ですとか、結婚したとしても子供を持たない選択をする夫婦も増えていると聞きますが。

「それはやっぱり、働きながら母親になれる人が少ないからなんじゃないかな?って気がしますね。私の町、働いている女性がすごく多いんですね。仕事を持っているのが当たり前というか。」

_親でありながら、社会的な立場も維持していらっしゃる。

「うん。でもニューヨーク市郊外のグリニッジという大変リッチな町では、仕事を持っている方と専業主婦とのバトルもあるとそこにいる家族から聞いています。仕事を持っている方というのはウォールストリートでバンバン働いて稼いでいるような方ばかりで、一方専業主婦の方は、これがいわゆる模範的な、トロフィーワイフですね(笑)。そういう方たちがPTAに入るとすごいバトルになるようですよ(笑)。でも日本で晩婚化が進んでいるという理由が理解できるのは、結婚した女性の選択がふたつしか無いというところではないでしょうか。専業主婦をするか、仕事を優先して家庭崩壊の手前までいってしまうか、という。そういう現状を目の当たりにすると、家庭や子供はいらない、という選択をするということに繋がるんでしょうね。うちの主人が以前、日本で仕事をしていた頃に言っていましたけど、日本人女性はとても仕事が出来る方が多いと。それなのに、それを生かせる環境が整っていないのはとてももったいないことだと。」

_もっと根本的に、自分自身にどんな可能性があるのか、ということを自分でちゃんと見極める力が必要ですよね。

「そうですよね。すごく努力が必要なことではあるんですけど、私がアルコールが入るとよく『われわれの年代とその上の団塊の世代は罪の償いをしなくてはいけない』と言う話をするんですが(笑)、私たちのひと世代上は、戦後の経済をもり立てないといけない、ということでガンガンやってきた人たちで、その恩恵を享受したのが私たちの世代なんですね。私たちが大人になった頃はバブルがきて、短い期間ではあったけど、すごく贅沢な暮らしを経験したわりには、次の世代への贈り物みたいなものを何も作ってこなかった。自分だけ楽しむことに一生懸命になってきたというところが少なからずあると思うんです。教育ですとか、女性が働きやすい環境というものの土台作りをしてこなかった。ですが、今の日本には、私たちの頃には出会わなかった素晴らしい若者がたくさん登場しています。彼らを陰で支え、応援して行くのが、私たち世代の罪償いであり、楽しい役割でもあると思っています。」

【取材・文=三好千夏】

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