10/12(日)・13(月)「ホネホネサミット2014」開催! 一つひとつ手で作られる 驚きの骨格標本の世界(3)
関西ウォーカー
博物館に展示されている骨格標本は、主に標本業者の手で作られる。しかし、これは研究資料として収蔵庫に保管されている骨格標本のごく一部にすぎない。残りの「組立てない」9割以上の標本は、一つひとつが博物館スタッフの手作業で作られている。海外の博物館では標本作り専任のスタッフがいるのがふつうだが、日本の博物館では学芸員に任されており、実際には多忙な学芸員はなかなか標本作りまで手が回らないのが現状だ。しかし、この状態では社会教育施設としての博物館の役割を十分果たせず、不幸な状態といえよう。大阪市立自然史博物館を拠点とするなにわホネホネ団(以下ホネホネ団)はこれを逆転の発想で解決している全国でもめずらしい団体だ。市民が自ら標本を作り、実物に触れて学び楽しむ。それが博物館の魂とも言える標本コレクションの増加につながっている。最終回は、ホネホネ団の団長、西澤真樹子さんから聞いた、骨格標本作りの話を紹介しよう。
<標本作りは根気のいる作業>
骨格標本の作り方には様々な方法があるが、基本的には
動物の体長、体重、性別など各部の計測→皮を剥く→筋肉を取り除く→水になど浸けたり、砂に埋めて腐らせる→水洗して乾燥させると言う工程で作られる。ものによっては薬品に浸けたりすることもあるが、基本的なプロセスはこのようになる。骨にしみこんだ脂や、腱など腐りにくい部分の分解には手間がかかる。砂に埋めて自然に分解させる場合は、季節によっては非常に時間がかかることもある。1990年に堺港に上がったナガスクジラの場合、博物館友の会の会員も手伝って数年の歳月をかけて骨格標本が作りあげられた。
大阪市立自然史博物館では、天王寺動物園をはじめ、交通事故などでなくなり様々なところから寄せられた動物の死体を冷凍保存しており、これを標本にしている。小はネズミから、中はタヌキ、大はクジラまで大きさは様々。ネズミやタヌキなら気楽に皮をむいたり、肉を取ったりできるが、クジラやゾウなど大きなものは、重機を使わなければならないものもある。陸の動物は比較的処理しやすいが、イルカやアシカ、ウミガメなど軟骨の多い海の動物は、ホネにした後に確実に組立てられるよう、よく似た部位がバラバラになって混乱しないように別の手間もかかる。腐敗の進んだ死体も同様だ。しかし、ほとんどすべての鳥獣の捕獲に許可が必要で、野生動物の存在が貴重な今、遺体は望んで手に入るものではない、貴重な死を活かせるよう、ホネホネ団はどのような状態であっても標本化するため頑張る。
ときには苦労の多い標本作りだが、それでもホネホネ団が活動を続けるのは、なんといっても動物が好きだから。そして、骨格標本を作ることによって、よく知っている動物でも、どうしてそのような構造をしているのか、深く知ることができるからだと西澤さんはいう。ホネホネ団ではこれまで2000体近くの標本を作ってきた。その中には天王寺動物園から寄せられたダチョウやゾウなど大きなものや、ピューマやライオン、あるいはナマケモノやコアラなどもいる。
<クジラの標本を作る>
印象的だったのは、徳島県の無人島の磯に打ち上げられたザトウクジラ。動物を研究する人たちにとって、こうした存在は「天からの贈り物」なのだ。西澤さんたちホネホネ団は、クジラの死体を引き取るため大阪から自家用車を5時間運転し、船を出してもらってようやく現地にたどり着いた。
もちろん、巨大なクジラをそのまま持って帰るわけにはいかない。岩がゴロゴロする磯で解体し、運び出そうとするが、作業ができるのは引き潮の時だけ。1回目の解体ではすべて処理しきれず、日を置いて2回に分けて運び出すことになった。クジラの脂で滑る岩場には古着を置いて、滑り止めにした。往復10時間かけて持ち帰ったクジラは博物館裏の砂場に埋め、肉が分解されるのを待って骨格標本にされた。
<ホネホネサミットで博物館の仕事を見よう!>
※編集部よりお知らせ:10/13(月・祝)の「ホネホネサミット」は台風19号の影響で暴風警報が出ましたので、イベントが中止になっておりますので、ご注意ください。
西澤さんは10/12(日)、13(月・祝)に開催される「ホネホネサミット」について、「博物館は古くて昔も今も変わらないものを展示している施設のように思われているかもしれませんが、標本を集め続け、保管し続け、自然の記録を日々ずっと残し続けている生きた施設です。ホネホネサミットにも、「骨」を通してそうした記録を残したい人が集っています。ぜひここで博物館や博物館にかかわるみなさんの仕事を見ていただき、生き物の形と博物館に関心を持って欲しいと思います」と強調する。
今回のホネホネサミットでは「北海道から沖縄まで全国の骨格標本製作集団が集まります。その地域差が展示される骨の種類にもきっと現れるでしょう。また、今の博物館の標本はみんなが拾い集めたり、博物館に寄せられたりした動物を使って作られたもの。もし、動物の死体を見つけたら、博物館にご連絡ください」と西澤さん。こうした地道な協力が、大阪市立自然史博物館の活動を支えていく。
【取材・文=ライター 鳴川和代】
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