追憶のイメージ―『植田正治小旅行写真帖　音のない記憶』

独創的な演出写真を生み出し、世界からも高く評価された写真界の巨匠、植田正治の展覧会が開催。1972年、初めてのヨーロッパ旅行から戻った植田は、すぐに写真集の制作を思い立ち、1973年の発行を前提に準備を進めた。しかし、植田は印刷の直前、出版を白紙に戻し、前年と同じ季節に再びヨーロッパを訪れる。この2回目の撮影の成果を加えた写真集が出版されたのは1974年のことだった。今展では、写真集「音のない記憶」に収録されたモノクロ写真を展示し、それぞれ撮影旅行1回目のものか2回目のものか、さらには撮影地についても可能な限り特定を試み、植田がのこした追憶のイメージの断片をたどりながら、写真の魅力を紹介する。