Toshlがテレビ出演に全力注ぐ理由 「最初は『バラエティだから』と斜に構えていた」

東京ウォーカー(全国版)

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世界的人気を誇るアーティストのToshl(龍玄とし)が、近年、バラエティ番組への出演や公式YouTubeチャンネルの設立、絵画展の開催など、活動の幅を大きく広げている。そんなToshlが今回、花王 アタック3XのWeb CMに初出演。さまざまな苦難を乗り越え、アーティストとして30年以上のキャリアを持ちながらも、常に新しいことへの挑戦を続けるToshlに、コロナ禍の中での創作活動や近年のバラエティ出演に懸ける想いを語ってもらった。

常に新しいことに挑戦し続けるToshl(龍玄とし)が自らの活動について語る撮影=Tsubasa Tsutsui


コロナ禍の中で、今だからこそ生み出せるアイデアや感情を大切に


――コロナウイルスの影響で、生活にはどのような変化がありましたか。

【Toshl】数カ月間、テレビなどの仕事以外はほとんど外に出ず、絵を描いたり音楽の創作をしたりしていました。また、当たり前のことですが、以前よりも体調管理に慎重に取り組むようになりました。少し体調も崩しましたし、どこかに不安があって、知らない間にストレスが溜まっていたんじゃないかと。でも逆に、そういうストレスの中だからこそ生まれてくる、そういう中でしか生み出せないアイデアや感情もあって、それをキャンバスや歌にぶつけ、アートとして昇華できたのかなと思っています。

「たった一人だけのコンサート」(※9月22日開催)も、今だからこそ生まれたアイデアです。自分が誰かのファンだったら、今どんなシチュエーションで何をやってほしいかなということを考えて、明るく楽しい夢のような企画を考えました。「プロジェクト運命」という名のもとに、自分の運命を切り開いていこう、できればみなさんとともに新しい生活、新しい生き方を切り開いていこうという強い思いを込めた活動をスタートしていて、今回のCMもそのひとつなんです。自分にとってすごく運命的な出会いでしたし、撮影が楽しみです(※取材は撮影前に実施)。

コロナ禍での生活について撮影=Tsubasa Tsutsui


――今回のCM出演のお話を最初にお聞きしたときの心境と、プロのアーティストとしてCMの中で「シャウト」を披露する上でのこだわりを教えてください。

【Toshl】洗濯がすごく好きなので、「まさか僕に洗濯の広告が」「ついに来たか、このときが」という気持ちでした(笑)。自分を選んでくださったということもうれしかったです。

撮影でも、ライブやコンサートで歌を届けるときと全く同じように、魂を込めてシャウトしたいと思っています。オーディエンスの方に熱い思いを届けようとするときにこそ、内側から出てくるものがあると思っているので。(スタッフの)みなさんも自分自身も納得するまで、一緒にいい作品を創造したいですね。

撮影でも魂を込めてシャウト

遊び心の詰まった「3人の子トシ」


――コロナウイルスの影響で、あらゆるアーティストが大規模なライブを行えない状況が続いています。今の音楽業界の状況を見て思うことはありますか。

【Toshl】音楽業界だけではなく、ほかの業界も非常に厳しい状況だと思います。ですが、「だからこそ何ができるのか」という発想の転換をしていくと、思わぬものが生まれてくるんじゃないかなと。自分としても、絵に以前より集中して向き合うことができましたし、ゆっくり本を読んだり、絵を鑑賞したり、音楽を聴いたりする時間をとることができました。それも全部、自分のアートを表現していく上でのエネルギーになっています。

外に出られないというストレスは確かにありましたが、だからこそできることがたくさんあるので、それを一個一個見つけていって、自分の中に落とし込んでいくことが大切だと思っています。

――自粛期間中に読んだ本や見た作品の中で、特に印象的だったものはありますか。

【Toshl】「愛の不時着」ですね(笑)。自分は作り手の方に意識がいきがちなんですが、総合的なエンターテイメントとして素晴らしいなと。やっぱり、言葉や国境を越えて感動を与えるものには、創作に対する深い愛情とメッセージが込められているんだなと思って、表現する上で一番大切な核のようなものを感じました。

“笑われること”への葛藤は?「スマホ向けの配信番組でバラエティへの意識が変わった」


――近年ではバラエティ番組への出演もかなり増えていると思います。一流のアーティストがある種“笑われること”への葛藤はありましたか。

【Toshl】最初は「バラエティだから」と斜に構えていたり、不安を感じて硬くなったりしていました。自分をどう演出するかに精一杯だったんだと思います。でも、やがて現場を見ていると、それまで気づくことのできなかったスタッフのみなさんの姿に目がいくようになりました。そうしたら、若い女性が重い荷物を持っていたり、汗水垂らして照明やさまざまな仕事をする人がいたり、どんな番組でもスタッフのみなさんが本当に一生懸命働いている。どんなジャンルであれ、出演させていただくからには自分も番組を作る側の一員として一生懸命に取り組んで、スタッフのみなさんにも視聴者のみなさんにも喜んでいただきたいと思うに至りました。

誰かと一緒に何かを作り上げるという意味では、音楽も(テレビ番組も)全く一緒です。だから、やるからには歌に傾ける情熱と全く同じ、あるいは経験が浅いからこそ、それ以上に全力でトライしていかなきゃなと思いました。そして、(ファンの)みなさんにも喜んでもらいたいし、一緒に何かを作っている仲間にも喜んでもらいたい。バラエティやいろいろなジャンルの番組に携われたことは、この2~3年くらいの僕にとってとても大きなことでしたね。

Toshlがバラエティ番組にかける想いとは撮影=Tsubasa Tsutsui


――そういった心境の変化のきっかけになった番組はありましたか。

【Toshl】「スウィーツKUREANAI」というスマートフォン向けの配信番組です。初めてロケに行きましたし、自分自身のパロディを自分でやりながらスイーツを紹介するとか、企画もなかなかすごかったです(笑)。その世界に飛び込むのには勇気がいりましたが、周りのスタッフが「一回挑戦してみた方がいいんじゃないか」「Toshlさんに合っているんじゃないか」と背中を押してくれたんです。それがきっかけで新たな出会いや発見があったので、その番組はとても印象的ですね。

――ファンの方の中には、大好きなToshlさんが笑われている姿を見たくないという方もいるかもしれません。そういったファンの方に向けて、何か伝えたいことはありますか。

【Toshl】感じ方は人それぞれなので、ファンの方一人ひとりにすべての活動を喜んでもらうことは難しいと思っています。だったらやっぱり、「できるか、できないか?」ではなく「自分がやってみたいこと」にまっすぐに挑戦していくしかないかなと。その結果、それが合わなければ仕方がないし、合えばラッキー。ただ、(誰かと)「一緒に喜びを分かち合えるのか」ということはすごく大事にして、忘れないようにしなければいけないと思っています。

日本のみならず世界的に人気を誇るアーティスト、Toshl撮影=Tsubasa Tsutsui


――バラエティ番組に出演するようになったことで、芸能界の景色は変わりましたか。

【Toshl】それまで僕は狭い世界にこもりがちで、人と交流することがほとんどなかったんです。ですが、音楽番組やバラエティ番組を通していろいろな方と出会い、連絡を取り合う仲間が少し増えました。特に音楽番組では、出演している方の歌をその場で聴くことに加えて、今流行っている歌やアーティストを知ることもできるので、それをきっかけに交流が生まれたり、その方の音楽を拝聴するようになったりしています。

自分でも「社交的になったかな」と思いますし、新しいものと出会えて、勉強にもなります。それがひいては自分が創作していくもののエネルギーになっていくので、さまざまなジャンルの方々との交流は自分にとってすごくプラスになっています。

“残された時間”が見えてきてからの生き方 「“無駄なこと”をしている時間はない」

すべての活動に共通する軸撮影=Tsubasa Tsutsui


――音楽活動はじめ、さまざまな活動に取り組む中で、これだけは曲げないようにしているという信念はありますか。

【Toshl】特にこのコロナ禍を経験して、当たり前が当たり前でないことを痛感する日々の中、明日歌えなくなるかもしれないし、明日描けなくなるかもしれないと思うようになりました。“無駄なこと”をしている時間はない。大切な人と関わって、大切な仕事をする、大切な時間を大切に使う。残された時間がだんだんと見えてきてから、そういう生き方になってきたかなと思います。

――今後、活動の中で力を入れていきたいことや、目標はありますか。

【Toshl】今は特に絵に集中しています。これから絵画展もあるので、まずはしっかり描ききること。音楽活動でも、今作っている新曲を書き上げること。それから、小説の執筆にもチャレンジしているので、これも書き上げるべく前へ向かうこと。今の僕にとって大切なのは、創造すること、制作すること、そしてそれをみなさんと分かち合うことです。

6年ほど前に茶道と出会ってから、その「茶の湯の心」みたいなものはいつも僕の真ん中にあります。人をおもてなしするというか、人が喜ぶことを準備して、少しずつでも丁寧に心を込めて作っていくということ。自分の作り上げるものすべてがアートだと思って、わくわくするような明るく楽しい「今」を創造していくということに、これからもチャレンジしていきたいと思います。

取材・文=今井優佳

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