山田孝之「ひたすら孤独だった」、『全裸監督シーズン2』の撮影について語る
東京ウォーカー(全国版)
世界190カ国を熱狂させたNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』。アダルトビデオの黎明期を席巻したカリスマ・村西とおるの半生を描く同名小説をもとに、彼が破天荒かつ奇想天外なアイデアで成り上がっていくさまを描いている。
6月24日(木)より配信される同作品のシーズン2は、シーズン1に引き続き武正晴が総監督としてメガホンをとり、山田孝之が村西とおる役、森田望智が黒木香役を演じる。がむしゃらに駆け上がる村西と仲間たちの物語の完結編は、どのように描かれるのか。3人が作品に込めた思いを聞いた。
あらゆるところで「Netflix!」と声をかけられた
――2019年、配信されると同時に瞬く間に話題となり、大ヒット作となった『全裸監督』。反響はいかがでしたか?
【山田】近所のバーで飲んでいたら、同席した外国人の方に、指をさされながらものすごい勢いで「Netflix!」って言われて驚きましたね。ハワイで友達の買い物に付き合っていた時も、店員が僕を指差して「Netflix!」。シンガポールのカジノの入り口でも「Netflix!」。
【武】「The Naked Director」じゃないんだ?
【山田】なぜか「Netflix」って言われましたね。こういうふうに言っていただけるのは、日本で映画が公開したり、ドラマが放送されたりというのとは感覚がまた違うなと。世界中で多くの人に見てもらえているんだな、という実感を肌で感じられました。
【森田】私も日本で「Are you Netflix?」って外国の方々からたくさん聞かれました!私はNetflixではないんだけどなぁ、と思いつつ(笑)。
【武】僕はNetflixとは言われなかったな。でも直接「The Naked Director?」と聞かれたことはありました。シンガポールで話しかけられたんですけど、作品名をそのまんま言われるんだなと。
【山田】俺は脱いでねぇよ、って感じですよね。
【武】そう(笑)。でもそういうふうに、海外の人にまで作品を広知く周されているのは初めてだったから驚きました。シーズン1が配信された頃にはちょうどアメリカの映画祭に行っていたんですけど、配信がスタートした2日後くらいにバーで飲んでいたら、「The Naked Director」っていう単語が飛び交ってるんですよ。よく聞くと「俺3話まで見たぜ」とか言っていて。耳を傾けていたら「お前は見たか?」なんて話しかけられて、「俺監督やってるよ」って答えたら、どんどん人が集まってきちゃったんですよ。「今、監督がバーにいるから来いよ!」とか友達呼ぶ人もいたりして。
なんてことはないエピソードですけど、今まで日本の映画は公開から1年後に海外のどこかで翻訳されて、という感じだったので、スピードの速さにびっくりしましたし、世界が近くなって、リアルタイムで繋がっているんだなと感じました。
――もちろん日本国内でも『全裸監督』の熱狂的なファンが多く、芸能界にもその波がありましたよね。
【山田】昨年末の「絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時」で草彅剛さんがモノマネしてくださったり、ジャングルポケットの斉藤慎二さんがバラエティー番組で村西とおるの格好をしているのを見かけたりで、なんというか…いいネタを提供できたなぁと。
村西とおるの孤独と、山田孝之の寂しさが比例していた現場
――世界が待ちに待った『全裸監督 シーズン2』が配信されます。シーズン1では村西とおるがアダルトビデオ業界に飛び込み、成功を収める昭和の時代が描かれますが、シーズン2は彼の転落や葛藤を描く平成時代編です。撮影現場はどんな雰囲気でしたか?
【山田】シーズン2の村西とおるは、自分の思い描く未来を信じて行動するものの、周囲がついてこなかったり、人間関係に亀裂が入っていったり、ビジネスの収支が合わなくなっていったりして、彼自身がどんどんぐちゃぐちゃになっていく姿が描かれます。イライラしていたし、後半になるにつれて、ひたすら孤独感を覚えましたね。
【森田】撮影の合間にふと見る山田さんは、いつもつらそうな表情を浮かべていらっしゃいました…。おっしゃるとおり、撮影の後半は役との境目がなくなっているんじゃないかと感じるくらい、山田さんは村西とおるという人物に入り込んでいたように見えました。
【山田】撮影現場には大勢の人がいるけど、ダイヤモンド映像のスタッフや女優陣と村西とおるの気持ちがどんどん離れていくにつれて、僕自身も孤独感が増していくというか。みんないるけどいつもひとり、と言っていいような気持ちでした。今回の撮影は、なんだか寂しかったですね。
【武】山田さんがしっかりと村西とおるの役柄を作り込んでくれたおかげで、我々も山田さんの朝イチの雰囲気で、どう撮るかを察する日々でした。今日はつらそうだなという日もあれば、今日はちょっと楽しいかもしれないぞという日もあって。監督のつらいさまを撮影するので、役者陣もスタッフもつらい気持ちになることが多かったなと。
――武監督は、同じ“監督”として村西とおるに共感する部分はありましたか?
【武】先程から山田さんが話すように、監督というのは誰しもが孤立無援なんですよ。それは、ジャンルは関係ないんです。監督という職業の気持ちの浮き沈みはよくわかるので、村西とおるという人物であることに加えて、“監督になった男”を撮っているのだなぁと思うこともありました。だからこそ撮影していて、つらいなぁと共感することはありましたね。
ただね、そんなつらい現場でしたけど、宇宙服のヘルメットをかぶった山田さんのあのフォルムには救われたなぁ。ブリーフパンツの上に山田さんのおなかがのっていて、実際に宇宙飛行士が使うヘルメットをかぶってさ。あのバカバカしさが、村西とおるのギャグっぽさと通ずるものがあるなと、おもしろがりつつ、感心しました。
『全裸監督』チームの次回作はコメディー?
――『全裸監督』はシーズン2で完結となりますが、もしこのチームが再集結して、作品を撮るとしたらどんなものにしましょう?
【武】次は絶対にコメディーを撮りたいです。今の世の中はいろいろなことが制限されて深刻な雰囲気でしょう。もちろん、映画の中で世相をありありと描くということも大切だとは思います。でも、それとはまた別に、バカバカしくて笑える、人情喜劇みたいな作品をいい俳優さんたちで撮りたいなぁ、と考えることがあるんですよね。『全裸監督』におけるコメディー部分を抽出したようなものをね。
バカバカしい作品って、どこかに教訓があるんですよ。落語の滑稽噺だって、バカなやつが出てきても、どこか自分自身に投影するところがある。『全裸監督』だって、無茶をする村西をバカにした目で見ていても、だんだん笑えなくなったりしたでしょう。突然、ハッとする部分があるんですよね。
【森田】まさか監督がコメディーって言うと思わなかったです。
【武】森田さんはコメディエンヌの才能がありますよ。シリアスな作品も似合うけど、黒木香のおもしろさを演じられる人ですからね。普段からおもしろい人だし。旅館の女将とかどう?
【森田】思いつきもしなかったです!コメディーを演じるのは難しいなと感じているのですが、もしオファー頂けたら……(監督をチラリと見ながら色っぽく)よろしくお願いします。
【山田】あははは!
【武】とっさにこういうアドリブができるでしょう?例えば森田さんが女将役で、温泉旅館同士の争いとか、そこに地上げ屋が絡んだりとか、ライバル旅館の女将が「うちにはこんないい女がいますよ!」なんて客を奪いに来て、火花散らしたりしてさ。伊藤沙莉さんにも再登板してもらったら、いい演技合戦ができるんじゃないかな。
――まさか『全裸監督』チームでコメディーの話になるとは、予想外です。
【武】浅草に古い銭湯があって、地下から沸いている天然温泉に浸かれるんです。下町で、昔ながらの場所でおかしげなものを撮りたいですね。今の暗いムードが漂う世の中だからこそ、大真面目にバカをやりたい。
【森田】いいですねぇ。
【武】それと、撮影って煮詰まってくるとピリピリしたり、揉めたりすることがあるけど、現場にお風呂があるとそれがないんですよ(笑)。お風呂に入って一段落したら怒りが収まって、またいい仕事ができる。そういうことを久しくしていないから、早くコロナ禍が明けて、そんな撮影ができるといいですね。
【山田】たしかに撮影する場所って大事ですよね。これから暑くなる季節はハワイもいいですね〜。
【武】ハワイ、いいねぇ〜!僕はシーズン1でハワイロケに行けなかったんですよ。山田さんたちがハワイで楽しんでいる間、劇中で使われている8ミリフィルムの駅弁のシーンの撮影して……行きたかったなぁ。日本で留守番しているスタッフ同士で「今ハワイ雨らしいよ」「ざまあみろ!」とか言ってたもん(笑)。
【山田】すみません(笑)。
【武】それだけ『全裸監督』は楽しいこともあったけど、つらくて厳しい現場を、みんなで乗り越えてきたんですよ。コメディーがこんなに恋しくなるくらい、あの撮影にどっぷり浸かって、没頭していました。
【山田】全員が本気で作り上げた作品だからこそ、『全裸監督 シーズン2』をしっかり見届けてほしいです。
撮影=冨永智子
取材・文=イワイユウ
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