岸井ゆきの主演『やがて海へと届く』コロナ前後で変わった台本は「喪失感がより深く描かれている」
東京ウォーカー(全国版)
映画『愛がなんだ』やドラマ「恋せぬふたり」などさまざまな作品で圧倒的な存在感を放ち、いま最も注目を集めている俳優・岸井ゆきの。主演映画『やがて海へと届く』では、突然いなくなった親友を思い続ける主人公・真奈を演じている。喪失から再生へと向かう物語を描いた本作の撮影秘話や、浜辺美波との現場エピソード、さらに好きな海外ドラマについて語ってもらった。
「すみれと真奈の思い出を最後まで大事に取っておくこと」を意識しながら演じた
――台本を読んだ時の感想からお聞かせいただけますか。
【岸井ゆきの】本作のお話は3年以上前にいただいたのですが、当時の台本には“喪失感”の部分がもう少しライトに描かれていました。そのあとコロナ禍になったりいろいろなことがあったりした中で監督は何度も台本を書き直したそうで、最終的には“真奈の喪失感”がより深く描かれたものになっていました。この物語は3年以上私の心の中にあって、クランクインを迎えた時は“ようやく真奈を演じられる”という、うれしさがこみ上げてきたのを覚えています。
――中川龍太郎監督と今回初めてご一緒されてみていかがでしたか。
【岸井ゆきの】台本を読んでいたら「ここで真奈はなんて言うのだろうか?」と書かれていた箇所があったので、“え!台詞じゃなくて問いかけの言葉?”と驚いて。そのあと監督とお話ししたら、しっかりとビジョンを持ってらっしゃって、すごくこだわりはあるけれど、だからといって監督の思った通りには演じて欲しくないという意思がなんとなく伝わってきたんですね。
これは監督に直接確認したわけではないのですが、おそらく“決められた枠組みの中で驚かせて欲しい”と思っているのではないかと感じて。なので、そこを自分の中で考えながら演じるようにしていました。
――真奈を演じるうえで大事にしたことや意識したことを教えていただけますか。
【岸井ゆきの】クランクインした最初の頃に、浜辺美波さん演じるすみれと真奈が仲良く過ごしている時期をまとめて撮ったのですが、その時に現場で感じた気持ちや二人(すみれと真奈)の思い出をクランクアップまで大事にしながら演じていました。それから、すみれに関して“彼女はきっとこういう人なのでは?”とか“すみれはこんなことを考えているのでは?”みたいなことを監督に聞かないようにしていました。
――それはなぜですか。
【岸井ゆきの】すみれに関するあれこれを言語化してしまうのは違うような気がしましたし、監督もそこは言葉で説明されなかったんですね。先ほど(この取材の前)監督と一緒に取材を受けたのですが、「岸井さんと僕がすみれについて思っていることがバラバラだったのが良かった」と仰っていたので、あのやり方で間違ってなかったんだなと改めて実感しました。すみれに関しては、お客さんにも自由に解釈してもらいたいですね。
――浜辺さんとはどのように関係性を作っていかれましたか。
【岸井ゆきの】現場では役やシーンに関する話は一切せずに、「どこでお茶するの?」みたいな他愛もない話ばかりしていたのを覚えています(笑)。そんな中で、真奈とすみれの関係性を浜辺さんと一緒に自然に作ることができたので、事前に細かく決めなくて良かったなと思います。
古着屋の店員さんの話は「興味津々で聞いちゃいます(笑)」
――大切な人がいなくなったあと、喪失感を抱えながら生きていく真奈の姿が本作では描かれていますが、もしも岸井さんが真奈と同じ状況に陥ったとしたら、どうやって乗り越えていくと思いますか。
【岸井ゆきの】人間だから大切な人のことを忘れてしまう瞬間って絶対にあるじゃないですか。それがわかっていても、忘れたことに気が付いた時に “なんで忘れちゃったんだろう…”と自分を責めるし、“もうその人はどこにもいないんだ”と認めてしまったりするんですよね。真奈は“忘れたくない”という気持ちが強いですけど、私だったら“大丈夫、忘れない!”と思うようにするんじゃないかなと。
あとは無理に乗り越えようとせずに、辛くて寂しい気持ちを抱えるだけ抱えてみて、どん底まで落ちたら上がっていくみたいな。そんな感じで喪失感と向き合いながら生きていくと思います。
――真奈はすみれに対して“憧れ”という感情を抱いていますが、岸井さんは憧れの存在はいますか。
【岸井ゆきの】人ではないのですが、ヨーロッパ全体に憧れています。ヨーロッパの国には古い街並みやアートが身近に感じられるスポットがたくさんあるじゃないですか。だからすごく好きなんですよね。あと、ヨーロッパに住んでいらっしゃる方々のお洋服や髪型もかわいくて憧れます。
美容院に行く時は、いつもヨーロッパ系の方の画像から素敵な髪型を探して、美容師さんにそれを見せてからカットしてもらうようにしていて。ただ、顔の造詣が違うので、同じにはならないんです。わかってはいるんですけど。
――ヨーロッパに行かれたことはありますか。
【岸井ゆきの】ベルギー、フランス、ロンドンには行ったことがあって、いつか状況が落ち着いたらドイツに行ってみたいです。
――ドイツのどんなところを訪れたいですか。
【岸井ゆきの】ドイツの古着が好きなので、古着屋さん巡りがしてみたいです。東京でもよく古着屋さんに行くのですが、ベルリンの壁があった頃の服があったりするので驚きます。何十年も前のものなのに、とても綺麗な状態で売られているのが不思議で。古着屋の店員さんが「このタグはこの時代しかなくて」なんて話しをし始めたら興味津々で聞いています。
何かを極めた方のお話はすごくおもしろいですし、店員さんから古着の背景を聞くと、購入するなら大切に着なくちゃと思わされます。古着はどこか歴史を背負うような気持ちにもなるので、そういうのも含めて好きですね。
岸井ゆきのが語る、おすすめの映画&海外ドラマ
――最近ハマっていることはありますか。
【岸井ゆきの】それが…映画しか好きなものがないんです(笑)。お休みの日は映画を観るか、散歩に行くか、ジムに行くぐらいで。
――いくつか岸井さんのインタビューを拝見したのですが、そこでも「趣味は映画館に行くこと」と答えていらっしゃいました(笑)。ちなみに海外ドラマはご覧になりますか。
【岸井ゆきの】ドラマも割と観ますね。最近だと女の子が失踪した事件の真相をめぐるサスペンスドラマ「クルーエル・サマー」がおもしろかったです。あと、ケイト・ウィンスレットが主演・製作総指揮を務めた「メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実」もおすすめです。田舎町で起きた殺人事件をきっかけに、住民たちの新たな顔が次々と明らかになっていく物語なのですが、一度観始めたら止められません(笑)。
伏線も綺麗に全部回収したうえで「え!まだ何かあるの?」と驚きましたし、最後にとんでもない「ドッヒャー!」が待っているのでぜひ観て欲しいです(笑)。
――“ドッヒャー!”が気になるので観てみますね(笑)。最近のおすすめの映画も教えていただけますか。
【岸井ゆきの】『コーダ あいのうた』がすごく良かったので2回観に行きました。めちゃくちゃおすすめです!
――新作が公開されたら絶対に初日に観に行く映画監督やシリーズはありますか。
【岸井ゆきの】初日に必ず観に行くのは、マーベルシリーズですね。ネタバレが怖いというのもありますけど、初日ってマーベル大好きな人たちが劇場に集結するので、鑑賞中に自分がどんなに大きなリアクションをしても大丈夫という安心感があるんです(笑)。特に初日の六本木の映画館は外国の方やキャラクターのTシャツを着ている方がたくさん来るので、その雰囲気がたまらなくて。
あと、新作を絶対に初日に観るのはクリストファー・ノーラン監督、ガス・ヴァン・サント監督、ダーレン・アロノフスキー監督、M・ナイト・シャマラン監督あたりですね。最近注目しているのは『アマンダと僕』のミカエル・アース監督。新作が公開されたら絶対に初日に観に行こうと思っています。
取材・文=奥村百恵
◆スタイリスト:森上摂子 Setsuko Morigami
◆ヘアメイク:秋鹿裕子 Yuko Aika
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