コーヒーで旅する日本/関西編|”分からない”から始まったおいしさの探求。「珈琲もくれん」が体現するコーヒーの奥深さと面白さ
関西ウォーカー
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

関西編の第14回は、和歌山市街に残る、昭和レトロな横丁に店を構える「珈琲もくれん」。界隈のマイクロロースターの草分け的な一軒として、和歌山のコーヒー好きから厚い支持を得る一軒だ。元々はコーヒーに深い関心がなかったという店主の村上さんは開業後、福岡の名店・珈琲美美との出会いを境に心機一転。コーヒーが持つ未知の魅力に引き込まれて以来、長年、探求を続けてきたからこそ見える、コーヒーの面白さとは。

Profile|村上洋一
1976(昭和51)年、大分県生まれ。高校卒業後、京都で木工職人として働き、岐阜に移って造園業などの仕事を経て、和歌山市に移住。昭和30年代に開業した「わかやまじゃんじゃん横丁」のリノベーションに携わり、同施設内で1999年に「珈琲もくれん」をオープン。2012年に店舗を拡張してリニューアル。
和歌山との縁をつないだじゃんじゃん横丁

「60歳くらいになったら、喫茶店をしようかな」。何気ない会話が、時に進む道を変えることがあるが、ふと漏らした一言がなければ、この店のカウンターに店主・村上さんの姿はなかったかもしれない。
地元・大分から京都に出て木工工場に勤めた後、岐阜に移って造園などの仕事にも就いていた村上さん。「岐阜にいた頃、仕事でお世話になっている方が、僕が喫茶店の話をしたことを覚えていてくれたんですね。ある時、“和歌山のじゃんじゃん横丁の再生を手伝うことになったから、そこで練習のつもりで喫茶店をしてみたら?”と言われたのが事の発端。実は、その時、北海道の牧場に行こうかと思っていたんです(笑)」。和歌山への移住を決めたのは、コーヒー店を始めるというよりは、現在、店が入居している施設のリノベートのためだった。

わかやまじゃんじゃん横丁は、1955年に、大阪・新世界のジャンジャン横丁をモデルにして作られた、今でいう複合施設的な場所。4棟のビルに囲まれた一角は、飲食店を中心に個性的な店舗が入居し、いまや和歌山の名所として人気を集めている。「この横丁は、今の大家さんの父親が建てたもの。早くに父親を亡くされたのですが、思い入れがあったこの場所を潰すのは忍びないという思いから、再生を企画されたんです。1棟ごとに長屋みたいな構造になっていて、その中の1軒として自分も店を開くことになりましたが、当時は“面白そう”という反面、“やっても4年くらいかな”と思っていました」

そもそも、この時まで、コーヒーとはほぼ無縁の生活を送ってきた村上さん。むしろ、岐阜にいた頃、先に喫茶店を始めていた奥さんの方が開店に乗り気だったとか。「妻が岐阜の店で手網焙煎したコーヒーはおいしいと思いましたが、それ以上の興味は湧きませんでした。しかも、店を始めるにあたっての準備と言っても、開店の3日前にサイフォンの使い方を教わっただけ(笑)。焙煎も店ができてからの話で、店の管理人さんに“おもしろいやん!”って後押ししてもらって手網焙煎をやり始めましたが、全然うまく焼けなかった。当初のコーヒーのメニューはエルサルバドル1種だけ、自分がおいしいと思う深煎りにしていましたが、焙煎が追いつかない時もあり、夜通し焼いていた頃もありましたね」

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