コーヒーで旅する日本/東海編|あのときに知ったカフェラテの衝撃が、自分を突き動かす原動力。「HAJIKAMI」
東海ウォーカー
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第27回は、愛知県半田市にある「HAJIKAMI」。スペシャルティコーヒー、クラフトビール、多国籍料理を3本柱に掲げ、レストランとしても利用できる古民家カフェだ。店主の北川尋千さんが「カフェをやりたい」と考えるようになったきっかけは、1杯のカフェラテ。そのハイレベルな技術に感銘を受け、友人を招いておうちカフェをするなど、コーヒーに興味を抱くようになった。さらに「業務用のエスプレッソマシンを扱ってみたい」とカフェで働き始め、「カフェラテやエスプレッソのことをもっと勉強したい」とラテアートセミナーに参加。スペシャルティコーヒーの存在を知ってからは、「生まれ故郷である知多半島にその魅力を広めたい」と考えるようになった。年を追うごとに、北川さんの抱くコーヒーへの興味は深まるばかりだ。

Profile|北川尋千(きたがわ・のりゆき)
1984年(昭和59年)、愛知県東海市生まれ。名古屋・徳重の人気カフェで、キッチンスタッフとして6年間勤務した後、姉妹店の立ち上げを担当し、3年間勤務。これらのカフェで働きながらラテアートのスキルアップを目指し、自主的にラテアートの教室やセミナーに参加してきた。2020年に「HAJIKAMI」をオープンし、生まれ故郷である知多半島でのカフェ開業の夢を実現。オープンから4年目に突入した2023年5月に、キッチンカーを始動。活動の幅を広げている。
食後のコーヒーまで、プロとしてこだわりたい

海に突き出た2つの半島を持つ愛知県。西の半島である知多半島は、海や山といった自然を満喫できる県内屈指の観光地であり、海の玄関・中部国際空港セントレアがある交通の要所でもある。そんな知多半島の中部に位置する愛知県半田市で営業するカフェ「HAJIKAMI」は、お昼時にはたびたび満席になるという人気店。幹線道路沿いに今も残る立派な古民家であり、通りからは、塀の高さを越えて伸びる庭木のさらに上に見える丸い看板が目印になる。

アプローチを抜けた先に見えるのは、緑に囲まれた玄関。どこか非日常の空気をまとった佇まいは、「時にはピリッと刺激的に、時にはホッと心の箸休め」という店名に託したコンセプトにも似合っている。

「HAJIKAMI」では、バックパッカーとして世界一周をした経験を持つ北川尋千さんが、世界各国の味を再現している。台湾、ベトナムなど比較的馴染みのある国から、タンザニア、イスラエルなどどんな料理か想像もつかない国まで、自身の経験を交えながらできるだけ現地のリアルな作り方に沿って調理する。

「自分たちがレストランへ出掛けたとき、料理はものすごくおいしいのにコーヒーにはあまりこだわらない店が結構あって、残念に思っていたのです。だから、ウチはコーヒーも本気でやろうと決めていました。ランチやデザートにセットで付いてくるコーヒーであっても、そこにめちゃくちゃ力を注いで、知識や技術もしっかりと磨いてから提供するというのが僕のこだわりです」
憧れを追いかけて、技術を磨く日々

そもそも北川さんにとって、コーヒーとはカフェの仕事を志すきっかけとなったほど重要なファクターなのである。「現在は名古屋・久屋大通で営業している『cafe one』が名古屋・本山にあった頃、こちらのカフェラテを知って『こんなレベルの人が日本にいるんだ!』と驚きました。それから、趣味でおうちカフェをやりだして、最初はエッチングでラテアートをしていました。だんだん、エスプレッソマシンを自分で触ってみたくなって、カフェで働き始めたんです」

実際にエスプレッソマシンを扱うようになり、「もっとエスプレッソやラテアートのことを勉強したい」という欲が高まった北川さん。全国各地からラテアートを学びにやってくる「cafe one」の講習会などに参加し、「cafe one」が主催するラテアートの大会「Latte One」にも参加。2021年には3位入賞を果たし、憧れの存在に少しでも近づけるように技術を磨き続けている。
エスプレッソとドリップで焙煎度合いを変える

店で提供しているコーヒーは、愛知県知多市の「OISEAU COFFEE(オワゾー コーヒー)」が焙煎した豆を使用。「僕がカフェで働いていたときに立ち上げを担当した店で『OISEAU COFFEE』の豆を使わせてもらっていました。自分で店を始めるときにも、『絶対お願いしよう!』と思っていたんです」と北川さん。オリジナルで作ってもらったというHAJIKAMIブレンドはブラジル、グァテマラ、エチオピアで構成。ドリップ用は中煎り、エスプレッソ用は中深煎りに仕上げたものだ。

「当店の料理はスパイスをたくさん使うことが多く、海外の珍しい料理は食べなれていないのでインパクトも強い。その印象に負けないコーヒーであってほしいけど、料理の邪魔もしないようにしてほしい、とオーダーを出しました。僕はしっかりとボディーのある味わいが好きなので、そういった好みも伝えつつ、スペシャルティコーヒーならではの個性も感じられるようにしてもらいました。もう、ドリップコーヒーはめちゃくちゃ気に入っています」

ドリッパーは、誰が淹れても味がブレにくいカリタウェーブを使用。「僕はずっとハリオV60を使っていたんですが、店をオープンするタイミングでカリタウェーブに変えました。僕以外のスタッフが担当することも多いので、味の安定感を優先しています。アイスコーヒーのときは蒸らしを少し長く取るなど、時間と分量はしっかりと測るように気を付けています」

一方、エスプレッソは少し焙煎を見直しているんだとか。「焙煎度合いが浅いと、豆のガスをコントロールするのが難しいんです。だから、もう少し深くしてもいいかな、と思っています。ラテアートのコントラストが強くなって、見た目も美しくなります」

エスプレッソマシンは、日本ではあまり普及していないファエマを使用。「これは、オープン時に『cafe one』から譲ってもらったんです。憧れの人が使っていたマシンなので、『誰かに譲りたい』と聞いたときにすぐ立候補しました(笑)。最近はエスプレッソにも蒸らしの概念が重要視されてきましたが、このマシンは蒸らしができるし、適度なパワーで扱いやすいです。スパウトを外しているので、エスプレッソが落ちてくるところを目で見て確認できるのもいいですね!」
地域に根付いて、少しずつ成長していきたい

北川さんには、自分がカフェを営業することで、生まれ故郷である知多半島を盛り上げたいという想いが根底にある。だから、自分が行きたいと思う店を自分で始めることにした。「HAJIKAMI」には北川さんの琴線に触れたものが詰め込まれており、コーヒーもそのひとつなのだ。「この場所も、ひと目見て気に入りました。知多半島に根付いて、少しずつ成長していけるような店になりたいと思っています」
北川さんレコメンドのコーヒーショップは「OISEAU COFFEE(オワゾー コーヒー)」
「当店で豆を使わせていただいている、愛知県知多市の『OISEAU COFFEE』をおすすめします。私にスペシャルティコーヒーを教えてくれたのは、店主の花村さんなんです。コーヒーに対する情熱は素晴らしいものがあり、コーヒーの産地であるコスタリカまで足を運ぶなど、その真摯にコーヒーと向き合う姿勢を尊敬しています。当店や『OISEAU COFFEE』がある知多半島は、スペシャルティコーヒーに特化したお店がまだ少ない。だから、知多半島においしいコーヒーが根付くように、一緒に盛り上げていきたいですね!」(北川さん)
【HAJIKAMIのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/ハンドドリップ(カリタウェーブ)、エスプレッソマシン(ファエマ E71)
●焙煎度合い/中煎り~中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム880円
取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二
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※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。
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