発達を促す遊びにも効果は見られず…意思疎通できないまま迎えた一歳半健診の日【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(
@nire.oekaki
)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。
ウォーカープラスでは「今日もまゆみは飛び跳ねる~自閉症のわが子とともに~」と題して、にれさんが新たに描き下ろした漫画に加えて、エッセイも配信。人によっては「あるある」と共感したり、これまで知らなかった新発見があったり、ほっこりしたりもしてしまう…。そんなエピソードを隔週でお届けします。今回は第3回です。
受けるのが怖かった一歳半健診
まゆみの発達の遅れに気がついて以来、ずっと一歳半健診の日を恐れていました。わが子が正常か否かを公的に判断される審判の日のように感じていたからです。このころは「親子で努力すれば定型発達の範囲に届くかもしれない」と考えていた時期でもあり、来る日も来る日も発達を促すとされる遊びに取り組んでいました。
しかし、当然ながら自閉スペクトラム症はそんなことでなんとかなるようなものではありません。健診の日が近づくにつれて私の焦りと不安は高まっていきました。
健診が翌日に迫ったとき、とうとう観念して母子手帳と一歳半健診の問診票を記入しましたが、「いいえ」に○をつけるときの心境は形容しがたいものがあります。子どもが大切だからこそ異常があるとは認めたくない。けれど認めないと子どもも自分も先に進めない。神経発達症(発達障害)の子どもを持つ親の多くは、そうした葛藤を飲み込んで「いいえ」に○をつけているのだと思います。
その例外の一人が、夫のそてつでした。夫はそのイカツイ風貌から「お祭で焼きそばを焼いている人」「町内会イチ鯉口シャツの似合う男」「どこぞの鉄砲玉」などと噂されることが多いのですが、その実態は道行く人から避けられることに心を痛めている片田舎の純朴なおばあちゃん子です。茶畑に囲まれて育ち、大らかに物事を考えるタイプの彼は、私がまゆみの発達の遅れを訴えても「健診で引っかかってから考えたらエエやん。まゆみはまゆみ」と鷹揚(おうよう)に構えていました。そんな呑気なところに救われてもいましたが、不安を口にすることが出来なくなったために苦しい思いを私一人で抱えることになってしまったことは、今思い返してみても私たち夫婦の反省点です。
わが家に限らず、子どもの問題が持ち上がったときに夫婦で足並みを揃えるのは難しいことだと思います。仕事のために子どもと接する時間を満足に取れない人もいるでしょうし、パートナーがワンオペでお世話をしているとなると、子どもに関する困り感に差が出るのは仕方のないことかもしれません。家庭によって事情はいろいろですが、メインで子どもを見ている保護者さんは、どうか公私問わず複数の相談先をつくってほしいと心から願います。自閉っ子育児は孤独になりやすいので、一人でも多く「子どものことを話せる人」につながることが、親の心を守ることにもなると感じています。
さて、そんなことを踏まえた上で、今まさにお子さんの健診を控えて不安な方にお伝えしたいのは「健診は怖がるようなものではなかった」ということです。当時の私はまゆみに「異常」の烙印を押されることを恐れていたのですが、実際の健診は子どもの発達に不安や困りごとを抱えていることを行政に把握してもらえる機会であり、担当の保健師さんや心理士さんといった後々まで味方になってくれる人とつながれる場でした。
もちろん信頼できる人と知り合えるとは限りませんが、公の相談先を得られるというのは発達相談や療育など次のステップへ進めるチャンスでもあります。健診はお子さんの発達に不安を感じている方には辛い場ではありますが、意見を聞きに行くつもりで受診してみると次の展望が見えてくるかもしれません。
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