【第17回】創業以来の継ぎ足し味噌ダレで煮込む、「味処 叶」の元祖・味噌カツ丼を求めて

東海ウォーカー

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繁華街の路地裏に佇む創業68年の老舗。丼のイラスト看板が目印だ


元祖・味噌カツ丼の店としてテレビや雑誌などのメディアに多数出演している「味処 叶(かのう)」。1949(昭和24)年の創業時から変わらぬ場所で、現在は2代目の主人が店を切り盛りしている。名物の味噌カツ丼を求めて、近隣で働く人から観光客まで連日多くの人が集う。

創業当時の面影が残る、温かみのある店内


低めで腰かけやすいテーブル席とカウンター。壁には著名人のサインや写真がびっしり


壁には撮影で訪れた著名人のサインや写真がびっしりと貼られている。テーブル席は低めで腰かけやすい造り。主人によると、高齢の方がいつ来ても座れるようにシルバーシートを確保しているとか。常連さんへの気配りは長年愛される名店ならではと言える。

先代の息子さんである2代目の主人。取材慣れはしているものの撮影は照れるとか


2代目の主人は、亡き先代の息子さん。若かりしころは、先代とケンカしたこともあったそう。それでも、先代の背中を見て味を習得していった。「きちんと教えてくれたことはなかったですね。初めて私が作ったものも、食べてみるとダメ出しばかり」。店を任された今、昔ながらの作り方に工夫を凝らしながら、愛されてきた味を守り続けている。

肉厚でボリューム満点の元祖・味噌カツ丼


【写真を見る】「元祖 味噌カツ丼」(1320円)。肉厚のカツがたっぷり、中央に半熟煮のたまごがのる


元祖と呼ばれるようになった理由は、客が味噌のカツ丼を“味噌カツ丼”と略して注文したのが始まりだそう。味噌ダレをかけるだけでなく、少し煮込むのが叶流だ。元祖・味噌カツ丼(1320円)の作り方は、豚肉に少し高めの温度でさっと火を通してからカットして、継ぎ足しの味噌ダレにドボン。余分な脂が落ち、味噌の旨味が染み込んでいく。中央にのせる卵も、同じ味噌ダレの中で作る。ふんわりと白身が固まり、中はとろり、味噌味が付いた最強の半熟卵が完成するのだ。豚肉は脂身の少ない背ロースを使い、肉厚でもたくさん食べられる理由はここにある。

夏はネギ乗せ(+100円)がさっぱりして人気。冬はカキ丼(時価)も登場する


夏は+100円でトッピングできる、ネギのせがさっぱり食べられるとあって人気だという。たっぷりとのせてくれるネギの量も文句なし。風味のいい青ネギと味のいい白ネギを合わせているところも抜かりがない。冬には期間限定でカキ丼(時価)が登場し、目当てに訪れる客もいるという。

「味噌エビ丼」(1720円)。エビの尾を開いたのは2代目主人のアイデア


味噌カツ丼に続いて人気なのが、味噌エビ丼(1720円)。同じ味噌ダレにくぐらせた大きなエビフライが2つと、もちろん半熟卵ものる。ぎゅっと引き締まったエビの身は、プリプリで食べごたえ抜群。エビの尾を開いて出したところ、かわいいと女性からの評判も上々らしい。

厚さ約1.5cmはある肉厚の背ロースを惜しげもなく使う、生姜焼き(単品1680円)


隠れた人気メニューなのが、生姜焼き(単品ごはん付き1680円)だ。分厚い背ロースを生姜醤油に浸けて、蒸し焼きにする。調理工程で目が離せないことから忙しいランチタイムはオーダーを断ることもあるため、どうしても食べたい人は夜の時間を狙おう。単品に付いてくるご飯も大盛り、+100円で味噌汁も付けられる。

ごはんはおひつで保温。余分な水分を吸収してくれる


ごはんは余分な水分を吸収してくれるおひつで保温。このおひつ、作ることができるのが日本で1人しかいないそうで、壊れないように丁寧に使っている。ほかにも、食材はその日使う分だけを毎日仕入れ、カツに使うパン粉は生パン粉を手作りするなど、手間をかけて丁寧に手作りの味を届けている。

味噌カツ丼の元祖と呼ばれる理由とは?


創業時から修理して使い続けていたというボウル。ついに穴が空いてしまった


創業時から店にあるものとして、1つのボウルを見せてくれた。当時は物があまりない時代、調理器具を例にとっても修理を重ねて大事に使っていたという。「ついに穴が空いてしまって」と主人。それでも捨てられないのは、店を守ってきた一員だからだろうか。

メニュー表の後半では、店の歴史と味噌カツ丼の始まりを知ることができる


メニュー表には、創業当時の厨房の写真と店の歴史や、味噌カツ丼が生まれたエピソードが記されている。味噌カツ丼の歴史に思いを馳せながら、味わうというのも粋なのではないだろうか。そして、メニュー表の裏には、先代が笑顔でメッセージを伝えている。長きに渡り愛されてきた味は、きっと心も満たしてくれることだろう。【東海ウォーカー/小玉みさき(エディマート)】

小玉みさき(エディマート)

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