コーヒーで旅する日本/関西編|昭和の空間で令和のコーヒーを。「COFFEE LONG SEASON」が示す継承喫茶の進化形
東京ウォーカー(全国版)
ユニークな店づくりと意外なギャップが生む出会い

一見、純喫茶然とした店に、これほどエッジの立ったコーヒーがあろうとはよもや思うまじ。それゆえ当初は、以前の店を知るお客が戸惑うこともあった。「近所の方が来られて、“トーストください”とか、“店主が若くてびっくりした”、とか言われることもありました」と笑う沖田さん。逆に、若い世代にとっては、この店構えは新鮮に映っている。
「東京から来た人などは、向こうにはないので楽しんでくれます。こんなローカルな土地に、金沢とか仙台とかからお客さんが来るのは、ある意味で奇跡的。店も狭いから、お客さん同志がしゃべりつつ、自分が大阪の街の案内もしている。1年半続けてきて、人との出会いがおもしろいと思えるようになりました。いきなり地元に根付くというよりは、より尖っていって、外からお客さんが来て、回り回って地元の人が来るようなサイクルをイメージしています」

元々、喫茶店が多かった界隈だが、浅煎りの個性的なスペシャルティコーヒーを打ち出す店はなかった。「今思えば、よくここに腰を据えたなと思いますが(笑)。豆に素直に向き合う焙煎で、コーヒーのテロワールを楽しむ場として、少しずつ広げていければ」と沖田さん。その接点の1つとして、開店時からコーヒーのお悩み相談を受け付けるワークショップも開催。基本はロースターだが、カウンターでは今まで培ったバールマンの経験も活かされているという。
そうした積み重ねのなかで、知らずに訪れたお客の嗜好を変えることも少なくない。「この場所なので、スペシャルティコーヒーと縁遠い人とも接点ができます。店に寄って“あれっ、喫茶店じゃない?”と思っても、“新しくできた店やし、せっかくやし飲んでみよか”とか、“初めてでものんびりできるわ”という方も多い。知らずに入った方ほど、思わぬ出会いが生まれることもあります」。実際、ここでコーヒー好きになったという年配のお客からは、“フルーティーですっきりと透明感があって、ワインに似ているのがおもしろい”という声も。失われつつある昭和の喫茶店空間で、最先端の令和のコーヒーに出合う。今時の店にはない新鮮なギャップで、ファンを広げている気鋭の一軒だ。

沖田さんレコメンドのコーヒーショップは「The Sowers」
次回、紹介するのは、神戸市の「The Sowers」。「店主の安田さんとは、同じ焙煎機を使っていたことがきっかけで出会って以来のご縁。同世代で、店ができた時期も近く、今までなかった神戸とのつながりが広がるきっかけになりました。神戸といっても自然豊かな北区にあって、マルシェのような開け広げな店の雰囲気はここならでは。おでかけ気分になるロケーションとご夫婦の笑顔がすてきな一軒です」(沖田さん)
【COFFEE LONG SEASONのコーヒーデータ】
●焙煎機/AILLIO 1キロ(電熱式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)
●焙煎度合い/浅~中煎り
●テイクアウト/ あり(600円~)
●豆の販売/シングルオリジン3~4種、200グラム2200円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。
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