コーヒーで旅する日本／関西編｜空想を形にした独自の世界観で魅了。「CINEMA COFFEE ROASTERS」が描く、コーヒーから始まる夢のストーリー

コーヒーショップから夢が広がるストーリー

西脇の新名所として、地元に定着しつつある「CINEMA COFFEE ROASTERS」。森さんが創り出したユニークな世界観が多くのファンを呼び、2022年にはお隣の加東市に、早くも2号店となる「CINEMA COFFEE TERMINAL」がオープン。さらに2023年は、3店目となる「CINEMA COFFEE UMBRELLA」が西脇市内に開店。瞬く間に展開が広がっている。「シネマをキーワードに、3つの店でそれぞれに異なるストーリーを持っています」という各店では、開店当初からコーヒーのワークショップを開催。「ROASTERS」ではハンドドリップの教室を開き、小学生もチャレンジするなど、幅広い世代が参加して賑わいを見せる。また、市が主催するイベントも行う「TERMINAL」では、フリースクールに通う生徒に向けた、バリスタ体験教室も行っている。

森さんが、イベントや教室に力を入れるのは、我が子と同じ境遇にある子どもたちに、自分の可能性に気付いてもらいたいとの思いがある。「人の才能は決まった物差しで測れるものではない。子どもの可能性は無限にあるはずなので、必ずしも将来、バリスタやコーヒーの仕事に就かなくてもいいので、ここで何かを見つけるきっかけをつかんでもらえればうれしい」。もちろん、開業者のためのセミナーやサポートなども積極的に受け入れ、コーヒーを通じた地域のつながりの輪を広げている。

また、3店目の「UMBRELLA」は、これまでなかったイートインスペースを設け、自家製の菓子やパンの製造拠点としても機能。神戸、阪神間の名店のシェフにも協力を得て、自家焙煎の強みをいかしたコーヒーとのペアリングも追求する。「3店目は、今までと違った業態で、どちらかというと菓子・パンの製造がメイン。自社製造することで、地元で製菓を学ぶ高校生にもインターンに来てもらえます。一人でコーヒーを追求するというよりは、地域の支援や福祉につなげていきたいですね。この場所で何ができるのか、コーヒーだけでない付加価値を、スタッフにも感じてほしい」。新しい自分の可能性を見つけるということで言えは、お客もスタッフも同じ。明るく朗らかな接客からも、多くの人を惹きつけるこの店の魅力が伝わってくる。

森さんの発想の原点となった「ニュー・シネマ・パラダイス」の公開当時のポスターには、こんな惹句が添えられている。“映画から夢が広がった　大切なぼくの宝箱”。形は違えど、コーヒーショップから夢が広がるストーリーを楽しみにしたい。

森さんレコメンドのコーヒーショップは「Youth Coffee」

次回、紹介するのは、兵庫県明石市の「Youth Coffee」。
「ちょうど夏に水出しコーヒーを研究していたときだったんですが、偶然立ち寄って飲んだ水出しコーヒーの、ピーチのようなみずみずしいフレーバーに驚きました。こぢんまりとしたスタンドですが、オリジナルのイラストや黄色のディードリッヒ焙煎機が目を引く、おしゃれな店構えが印象的で、明石でも注目の一軒です」(森さん)

【CINEMA COFFEE ROASTERSのコーヒーデータ】
●焙煎機／ プロバット 5キロ(半熱風式)
●抽出／ハンドドリップ(オリガミ)、エスプレッソマシン(イーグル・ワン)
●焙煎度合い／浅～深煎り
●テイクアウト／ あり(450円～)
●豆の販売／ブレンド3種、シングルオリジン約10種、100グラム850円～

取材・文／田中慶一
撮影／直江泰治

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