コーヒーで旅する日本/関西編|コーヒーを介して農業のイメージをアップデート。広大な畑の只中で始まった複業農家の新たな試み。「Sticks Coffee」
東京ウォーカー(全国版)
すべては農家の仕事のイメージを変えるために

ところで、農家の直営であれば、自らの農園の収穫物を使うことが多いが、ここにはほとんど見当たらない。その心は、「農家レストランの考え方ではなく、街なかでも成り立つようなコーヒーショップにしたかったから。若い世代に関心を持ってもらうためには、できるだけ農家の先入観からかけ離れた場にする必要があって、“農家はこんな仕事もできるんだ”というイメージを発信するモデルケースが、この店なんです」と南谷さん。もちろん、スペシャルティコーヒー専門店を謳うだけに、コーヒー好きにも応えるプロの技術、知識をもって提案する。それゆえ、最近では農業に関心を持つ人だけでなく、バリスタ志望のお客も少なくなく、コーヒーを入口に農家に関心を持ってもらう機会も広がっている。

広大な畑を持つ農家ゆえに、今後も土地に根付いてこの店を続けるものだと思い込んでいたが、南谷さんの構想は軽々とその想像を超えてくる。「逆に大都市の中に店を出したい。若い人が集まる場所に出して、自分たちが農家であるというメッセージを届ける。Sticks Coffeeが窓口になって、さらに関心を持つ人を増やしたい。農家であり、経営者でもあるので、特に京都などの観光地のインバウンド需要も経験しておきたい。農家への関心を海外の人まで広げられたら面白い」
一方でスタッフには、先々、独立したブランドを持って、同じ敷地内に別の店を運営する考えも持っている。「チーズケーキや韓国のヤンニョムソース。丘の上にいろんな店が集まる感じに。どうしてもコンサル目線になるので、社員には独立を促してる。地元の高校で毎年、講義もしていますが、農家になりたいという学生も結構いる。その年代だと、どうしてもダサいというイメージが先行するので、新しいモデルを示していきたい」と意気込む。
すでに、自らがデザインを手掛けるアパレルショップも展開、店内でも服やグッズを販売する。「わざわざ来てもらう場所なので、お土産が必要と思って。若い方が興味を持つ服をメインに、商品を通して農家のイメージを変えられたら」と、コーヒーからスイーツ、グッズまで店内にあるすべてが、“実は農家がやっている”という驚きにつながる。「すべては1次産業が大事という原点に基づいているんです」と南谷さん。開店から4年、唯一無二の複業農家の試みは、まだ始まったばかりだ。

南谷さんレコメンドのコーヒーショップは「3 Roastery」
次回、紹介するのは、兵庫県丹波市の「3 Roastery」。
「山ひとつ越えた隣町にあるロースターで、店主のマイクさんは、田舎でスペシャルティコーヒーの魅力を広める同志みたいな存在です。僕がコーヒー店を始めるまでは、よく通っていました。地域おこし協力隊として丹波に移住されて、コーヒーの勉強は移住後に始めたそうですが、優れた技術の持ち主。界隈でも知る人ぞ知る一軒です」(南谷さん)
【Sticks Coffeeのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし(マルハチコーヒーロースター、グリッジコーヒーロースター、ディアロースト)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、エスプレッソマシン(ラ マルゾッコ)
●焙煎度合い/浅煎り~中煎り
●テイクアウト/あり(600円~)
●豆の販売/シングルオリジン約10種、150グラム1650円〜
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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