第55回 名古屋ご当地ラーメンの雄。“好来系”の元祖「好来道場」

2018年1月31日 11:55更新

東海ウォーカー エディマート

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住宅街にたたずむ好来道場。看板に「総本家」の文字が掲げられる
photo by 古川寛二/(C)KADOKAWA

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好来系(こうらいけい)、というラーメンをご存知だろうか。名古屋市千種区に店を構える「好来道場」を元祖とするラーメン店の総称で、今では全国区の知名度となった台湾ラーメンと同じく“名古屋ご当地ラーメン”の1つとして知られている。その源流を辿るべく、好来道場の門を叩いた。

シンプルで、食べ飽きることのない“日常の味”

【写真を見る】チャーシューが3枚のった基本ラーメン「松」(900円)photo by 古川寛二/(C)KADOKAWA

「好陽軒」「陣屋」「好好」「招福軒」など、名古屋市を中心に約20店が暖簾を掲げる好来系のラーメン店。それらの元祖として位置付けられているのが、1959(昭和34)年創業の好来道場だ。「好来系とは?」という問いに対して、よく耳にするのが“薬膳ラーメン”という言葉。「“薬膳ラーメン”は分店のどこかが言い出した言葉でね。うちのラーメンはそんな大層なものじゃないよ」と話すのは、好来道場の3代目店主を務める大橋健次さん。あっさりとした醤油スープにもっちりとした太麺、途中で加える高麗人参酢など、好来系ならではのやさしい味わいを表した言葉だが、材料や製法を詳しく聞くも、確かに“薬膳”の本質は満たしていない。

スープは6時間以上かけて炊く。この工程がスープに独特のにごりを与えるphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA

「スープは鶏ガラに少しの豚骨、たっぷりのタマネギとニンジン、ニンニクを炊いたもの。何も変わったことはない、普通のラーメンですよ」と大橋さん。確かに材料だけを並べると特筆すべきものは見当たらないが、好来道場のラーメンは「最後まで飲み干したくなる」と言われる通り滋味深い味わいを感じる。「製法は創業者の我流でね。野菜や鶏ガラの下処理1つとっても本当に丁寧に、時間をかけてやっている。それを変える訳にはいかないんです」。大橋さんが話す「何も変わったことはない」という言葉こそ、名古屋で昔から愛されてきた“日常の味”の秘訣なのだ。

卓上の高麗人参酢は食べる途中に加える。「酢を加えることで、好来系は完成する」と語る人もいるとかphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA

スープもさることながら、マダケを塩漬けして醤油でさっと炒めただけのメンマや、たまり醤油と水、塩だけで煮込んだチャーシューなど、単純な味付けながらも存在感のある具材は食べ飽きることがない。「途中で高麗人参酢を忘れずに入れてね。味がまろやかになるから。ラー油は瓶底からすくって、チャーシューにかけて食べると旨いよ」と大橋さんは教えてくれる。これらの卓上調味料も、好来系のラーメンを決定付ける特徴の1つだ。

ラーメン専門店の先駆けとして開業

好来道場・3代目店主の大橋健次さん。創業者、楓彰氏の娘婿にあたるphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA

好来道場は創業当時、「好来」という屋号で店を構えていた。「ラーメン専門店は、当時の名古屋にほとんどなかったと聞いていますね」と大橋さんは説明する。当時、ラーメンと言えばうどん店やそば店がサブメニューとして出していることがほとんど。創業者の楓彰氏は、ラーメン専門店を出すためにいくつもの店をわたり歩き、研究を重ねたそう。「なぜラーメンだったのかは不明です。スープに大量の根菜を入れてみたり、高麗人参酢やラー油のトッピングを考案してみたりと、アイデア力に優れていたのだと思う」。

好来のスープが“最後まで飲み干せる”理由

松、竹、寿、快老麺など、独特なメニュー名も特徴的。これらの呼び名も創業者が考案したそうphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA

前述の“薬膳ラーメン”の話をしている際に、大橋さんは楓さんのこんなエピソードも明かしてくれた。「今のお客さんの中には『スープをすべて飲み干せる』と言ってくれる人が多いです。そもそもは創業者が店に立っていた当時、スープを残すお客さんを叱って回っていたんですね。『うちのラーメンを残すなっ!』って。それでほとんどのお客さんが、最後まで残さず食べてくれるようになったんです」。大橋さんは、そんな楓氏の行動も“スープを飲み干せるラーメン”とイメージ付けた要因の1つだと分析する。しかし強制ではなく、楓氏の自信どおり好来のスープが飲み干せるほど旨いのも確かだ。

「すべてにおいて怠らないこと」。元祖が果たす責任とは

基本ラーメンの「松」からメンマの量を多くした「大竹」(1300円)photo by 古川寛二/(C)KADOKAWA

好来系は暖簾分けではなく、各店が独立して店を構えていくシステム。故に、基礎は同じでも店によってラーメンの味や思想は微妙に異なる。「大事なのは怠らないこと。時代に合わせて変えていくのも大切だけど、素材選びや下処理にかける手間は惜しまないようにしたい」。

好来道場の店内。客層は男性が中心だが、ファミリーの来店も多いというphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA

好来道場の営業は昼の3時間のみ。70歳を超える大橋さんはその3時間のために、朝7:00には店で準備を始め、営業後は夜7:00まで次の日の仕込みを続けるという。「ずっと好来を見てきましたから、引退は考えられないですね」と大橋さん。好来系の生き字引として、名古屋の日常の味を支える1人として、いつまでも元気で厨房に立ち続けてほしい。

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