フィギュアスケート 今季期待のジュニア女子選手【中編】

東京ウォーカー(全国版)

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大怪我から見事復活した白岩優奈


白岩優奈。ショートプログラムの演技。数を数えるシーンでの指の使い方に苦労したという


今年の春、骨折したとの報を聞き、その回復具合を案じていた白岩優奈。まずは怪我とリハビリの経過について聞いた。

「4月の初めに、左足の脛骨を骨折したんです。そこから2か月、氷に乗れませんでした。氷上に復帰したのは6月11日。7月からジャンプを跳び始めて、ちょうど1か月経ったところです」

7月のドリームオンアイスに出演した頃は全くジャンプが跳べない状態だった。そこから1か月で3+3が跳べるまでに回復したことは驚異的だ。「普通に練習していただけです」というが、トレーニングも怠らなかったようだ。

「休んでいる期間に体幹の強化に取り組みました。そのおかげですぐにジャンプが跳べるようになったのだと思います」

体幹の力は、去年までは全然なかったという。怪我のリハビリの過程で、体幹の力がないことをリハビリの先生に指摘され、トレーニングに取り組むきっかけになったのだ。今は、要らない筋肉を落として、必要な筋肉を増やしている段階だという。

今回のサマーカップは、出場が決まっているジュニアグランプリのロシア大会に向けて、スピンやステップのレベルチェックの意味で出場したという。実際に取りこぼしが見つかったことを前向きに捉え、改善を進めるとのことだ。

今季のショートプログラムは、“I Got Rhythm”。ジェフリー・バトルの振付だ。

「楽しい曲なので、曲を楽しもう、という気持ちで滑りました。メリハリのある曲なので、そこを意識し、ビデオを見たり、鏡を見たりして、どんな表現が良いのかを研究しました」

表現面で最もこだわったのは、「ワン、ツー、スリー、フォーと数えるところです。ジェフの振付では親指から順に指を上げるので、フォーの時には小指だけ曲げる形なんです。これが最初は出来ませんでした」

意外な答えだったが、確かに慣れていないと難しい。そしてこの数え方の方が、確かに絵的に格好良い。白岩選手のショートプログラムを観る際は、こんなところにも注目してあげてほしい。

叶わぬ恋を表現するという。難しいテーマに挑む


「今日は5か月ぶりの試合でした。試合のやり方を忘れてしまって、緊張して不安だったんですが、最後まで楽しく滑ることが出来ました」

こうして明るく取材を受けてくれたショートプログラム後の白岩選手だったが、フリーでは思うような演技が出来なかったようだ。

「フリーは反省点だらけです。良かった点はない。去年も跳べていたものは、跳べて当たり前かな」

ジャンプ練習再開からわずか1か月にしては十分な演技が出来たと言える。観客はその出来栄えにスタオベで応えたほどだ。そもそも故障明けはスタミナが戻っておらず、ショートプログラムはこなせたとしてもフリープログラムは体力の問題からミスが出がちだ。それほど気に病むことはないと思うのだが、白岩選手はとにかく自分に厳しい言葉を並べる。

「課題がたくさん見つかったので、次の試合ではそれをクリアしたい。もっと真面目に練習しないといけない、と思いました。先生からも言われましたが、この大会は怪我明けから練習してきたことが、そのまま出てしまった。もっともっと練習しなければいけない」

つくづく、理想の高い選手なのだと感じる。今後の目標について尋ねると、どの大会で優勝だとか、そういった言葉は一切聞かれなかった。

「ジュニアグランプリではショート、フリー、両方ともノーミスの演技で自己ベストを出したい。合計で190点を出すのが目標です」

「上に上手な人もいるし、下からの追い上げもきつい。自分は追いかけること、逃げること、両方しなければならない立場です。まずは自分のできることを最後までやり切ることが目標です」

今季のフリープログラムは“ノートルダム・ド・パリ”。キャシー・リードの振付だという。

「女性ボーカルのところは、叶わない恋をしているジプシーを演じています。それを表現したい。キャシー先生からは、体が小さいので大きく体を使いなさい、とアドバイスを受けました。指先まで伸ばして、少しでも大きく見えるようにしたい。綺麗な曲なので、美しさをもっと磨きたいと思います」

どこまでも自分に厳しく、高い理想を求める彼女、ジュニアグランプリでの演技を楽しみに待ちたい。

好調を維持する横井ゆは菜


横井ゆは菜。ショートプログラムの演技


一昨シーズンは腰に故障を抱え、スランプに陥ったこともあったが、怪我の癒えた昨シーズン、見事に復活。シニアの全日本選手権にも出場し、今季はジュニアのトップ選手の一角としてシーズンを戦う立場となった。滑り出しのこの時期から好調を維持しているようだ。

今季、横井選手はショートプログラムのコンビネーションジャンプを、3フリップ+3トウループへと変更した。プログラム自体は昨年と同じ“サウンド・オブ・ミュージック”だが、コンビネーションジャンプとスピンの難度を上げ、より高得点を目指している。この日は得点源のループジャンプがダブルになってしまったことを悔やんでいた。いつもよりも慎重に滑ったために表現面でアピールが足りなかった、とも反省していた。ただそれでも得点は53.15。評価は確実に上がっている。

そして翌日のフリースケーティング。横井選手はトリプルアクセルに挑戦した。まだ回転は足りていない印象だが、果敢に大技に挑戦した、その理由を聞いた。

「トリプルアクセルは紀平選手が挑戦していますし、他の選手も凄く上手い。それに少しでも近づくために挑戦したんです」「練習では、2月にいい感じで降りられたんですが、それからは降りられていません。感覚を身に着けるためにも試合で挑戦していきたいと考えています。今日は最初の大技、トリプルアクセルを失敗したことで体力を消耗し、その後の演技に響いてしまいました」

横井ゆは菜。フリースケーティングの演技


プログラムは鈴木明子の振付、“バーレスク”。素敵な振付だが、今日はミスを重ねていくうちに表現が抜けてしまったそうだ。「失敗しても見せられるようになりたい」と今後に向け、意欲を見せた。

そしてこのプログラム、最後を2アクセル+3トウループ+2トウループの3連続ジャンプで締める珍しい構成だ。

「最後で失敗すると印象が悪いので、しっかり決めたいと思います。決まると格好いいんです。振付の段階からこうしようと決めていましたが、実際に練習してみたらとてもきつかった」

体力的にはきつそうだが、確かに決まるととても格好良い。終盤に盛り上がるプログラムに仕上がっている。現在のところ、ジュニアグランプリへの出場は決まっておらず、おそらく中部ブロックから本格的なシーズン入りとなることだろう。<後編に続く>【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】

編集部

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