チーム広報が語る、名古屋グランパスのクラブ改革《10周年特別企画・後編》

東海ウォーカー

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア


ピクシー体制の終焉。リーグ初制覇のその後

ファン・サポーターからは“ジョシュア”と名前で呼ばれて親しまれた、元オーストラリア代表FWのケネディ選手。2年連続でリーグ得点王となった(C)N.G.E.


2010シーズンに悲願のリーグ初制覇を達成すると、“ピクシーグランパス”はACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)に出場しながらJリーグを戦った翌2011シーズンも好成績を残す。第29節から最終節まで怒涛の6連勝を見せるなどして、柏レイソル、ガンバ大阪と3つ巴の死闘を演じたが、惜しくも首位の柏にわずか勝ち点1およばず2位。2連覇の夢は潰えてしまったものの、ジョシュア・ケネディ選手の2年連続ゴールデンブーツ(リーグ得点王)獲得からもわかるように、チームとしても堂々と胸を張って振り返ることができるシーズンだった。

梅村氏(右)は、広報としてチームに帯同し、報道陣の取材対応などをする。左はチームのレジェンド、ドラガン・ストイコビッチ元監督(C)N.G.E.


その後、ドラガン・ストイコビッチ監督は2013シーズンに勇退するまで、6年もの長きに渡ってチームの指揮を執った。これは現在もグランパスの歴史でもっとも長い体制となっている。グランパスのレジェンドでもあるカリスマは、プレイヤーとして2つの天皇杯を、そして監督としても1つのマイスターシャーレをクラブにもたらしたのだった。

オリジナル10の失墜。J2降格が与えた衝撃

試合に敗れたことでJ2降格が決まり、うなだれるグランパスの選手たち。リーグ初制覇の時も初めての降格の時も、対峙した相手は湘南ベルマーレだった(C)N.G.E.


そこからのグランパスは、お世辞にも“順風満帆”とは言い難い状況だった。なかでもクラブにとって大きな転機となったのは2016シーズン。グランパスは初めてJ2降格という憂き目にあう。鹿島アントラーズと横浜F・マリノスと共にJ2降格経験が一度もなかった“オリジナル10”のビッグクラブの失墜は、日本のサッカー界に大きな衝撃を与えた。梅村氏は当時について、クラブを見直すいいきっかけになったと振り返る。

グランパスのリーグ初制覇と初めてのJ2降格、当事者としてその両方を知る田中マルクス闘莉王選手(左)と、楢﨑正剛選手(現・クラブスペシャルフェロー兼アカデミーダイレクター補佐兼アカデミーGKコーチ、右)(C)N.G.E.


「選手たちはもちろん努力していましたが、結果を出すことができず…グランパスを応援していただいている皆様を悲しませることになってしまいました。でも、今はネガティブなことばかりだったと思っていません。残留争いをしている時には、皆様から温かい声をたくさんいただきましたし、窮地のグランパスを後押ししようとスタジアムに戻ってきてくれた往年のサポーターも大勢いました。これまでのグランパスは、皆様に『なんとなく街に存在しているチーム』というイメージを持たれている気がしていました。『支えても支えなくてもどっちでもいい。自然と街にあるものだ』と。でも、降格という危機に直面したことで、サポーターや地域の皆様に『私たちが応援しなきゃいけない』と、改めて思っていただけた感覚がありました。それがクラブの大きな支えになりましたし、結果としてJ2降格となってしまいましたが、あの時の皆様のサポートが追い風となって、1年でJ1に復帰できたと感じています」(梅村郁仁氏、以降発言部分はすべて同氏)

目に見える数字として表れたクラブ改革の結果


J2降格を経験したことでクラブの人気は落ち込むのかと思いきや、逆にJ1復帰後の方がより多くの観客数を記録している。その数字は、初めてのリーグ優勝を決めた2010シーズンをも大きく上回っているのだ。グランパスのホームゲーム1試合の平均観客数は、2009シーズンで1万5928人、2010シーズンはリーグ優勝の特需で増加して1万9979人、2011シーズンは1万6741人だった。その後も平均観客数は1万6000~7000人前後で推移していた。

クラブ史上最多入場者数を更新した、2018シーズンの明治安田生命J1リーグ 第21節 鹿島アントラーズ戦。4万3579人もの観客が豊田スタジアムに詰めかけた。試合は、難敵・鹿島に4‐2で快勝した(C)N.G.E.


しかし、J1に復帰した2018シーズンには22年ぶりに2万人を超え、クラブ歴代最高(当時)となる平均2万4660人を動員。2019シーズンはそれをさらに更新する同2万7612人を記録する。グランパスは確実に変わったのだ。かつては週末開催の試合で見たような観客数を、平日開催のホームゲームで叩き出すことさえある。実際にスタジアムへと足を運んでみれば明らかだが、今やグランパスのホームゲームはどのクラブにも負けないような高揚感や一体感にあふれ、初めてサッカー観戦に訪れる人でも自然と熱くなれる雰囲気に満ちている。なぜだろうか。そんな疑問を梅村氏にぶつけてみた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4

この記事で紹介しているスポット

この記事の画像一覧(全16枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!全国の花火大会ランキング

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る