今夏フェス中止200件超。専門メディア代表が語る「生存のカギはハイブリッド化」

東京ウォーカー(全国版)

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200件を超えるフェスが中止・延期に。一方で、オンラインを活用した取り組みも


そして今年、新型コロナウイルス感染拡大により、200を超えるフェスが中止もしくは延期に。特に国内フェスシーンの原点であり、数多くのフェスに影響を与えてきた“フジロック”の2021年への延期発表は、業界やファンの間だけでなく、社会全体に強烈なインパクトを残した。主催者やアーティストにとって困難な状況が続く一方で、現状を打破するための新たなアイデアも現れ始めている。

「既存のフェスがオンラインでオリジナルコンテンツを提供したり、感染拡大以降に新たなライブ配信型のフェスが立ち上がったりと、さまざまな動きがありました。オンラインだけでなく、密じゃない状態での小規模フェスや、車の中で完結できるドライブインフェスが企画されるなど、この状況下でも少しずつ前に進み始めています。秋には『サマーソニック』の代替フェスである『スーパーソニック』や人気の都市型フェス『グリーンルームフェスティバル』の開催が予定されており、実際に開催できるのか、開催する場合はどのような形になるのか、業界内外から注目されています」
※「グリーンルームフェスティバル」は、8月1日に中止を発表

【写真】驚きのフェスが次々に誕生!ソーシャルディスタンスを確保しながら楽しめる「ドライブインフェス」©Afro&Co.


そのほかにも、「サマーソニック」が過去のヘッドライナー映像を無料公開する、「メトロポリタン・ロック・フェスティバル」が過去映像を11時間にわたって生放送するなど、大規模フェスも次々に対応策を講じた。7月31日には、「フジロック・フェスティバル」が当初開催予定だった8月21日(金)~23日(日)の3日間にわたって、過去のアーティストパフォーマンスを中心に編成した特別番組をYouTubeにて配信することを発表。オンラインを活用したものや来場者を制限して行うもの、さらには、リアル×オンラインの“ハイブリッド開催”を打ち出したものも。業界全体で模索しながら、コロナ禍における新たなフェスの形ができつつあるようだ。

また、クラウドファンディングやグッズ販売を通じたファンからのサポートや、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会3団体によるライブエンタメ従事者支援基金「Music Cross Aid」、日本ミュージックフェスティバル協会が主宰する「フェス救済ファンド」「ミュージックフェス救済募金」といった取り組みなど、内外からの支援の輪も広がっているという。

兵庫県伊丹市の昆陽池公園で2日間にわたって開催される、無料ローカル野外音楽フェス「伊丹グリーンジャム」「ITAMI-GREENJAM」


今後伸びしろが大きい日本でのオンライン配信。国民性とマッチする部分も


しかし、オンラインフェスを始めとする代替策で従来と近しい収益・効果を生むには、「まだ時間がかかる」と津田さんは予想する。無料でもハイクオリティのライブ映像がたくさん観られる時代だからこそ、映像以外の付加価値、例えばグッズや飲食なども組み合わせた、リアルタイムでの体験を演出していくことが重要になってくるだろう。

「オンラインという特性上、アーティスト自身でも配信できるわけで、それがフェスである意味を考えていくとともに、アーティストにより多くを還元できる形を構築していかなければいけない。フェス自体がコンセプトやメッセージを発信して、アーティストがそれに共感する、もしくはフェス自体に世界観があって、それをオンラインで再現するというように、フェス側に“編集力”や“制作力”が求められるかもしれません」

そんななか、ひとつのターニングポイントになり得るかもしれないと注目を集めたのが、7月末に開催されたベルギーのデジタルフェス「トゥモローランド」だ。フェス自体にテーマがあり、ステージングやプレイ、装飾物でそのテーマを表現。ひとつの作品として、フェスの世界観をパッケージングして売るという、斬新な試みが行われた。

「オンライン配信の分野に関しては、日本にはまだまだ伸びしろがあり、配信+グッズ販売などの形でマネタイズが成功する可能性があります。また日本は、海外フェスのストリーミング視聴者数が多いとも言われている。普段からオリンピックやスポーツの深夜・早朝開催の試合をリアルタイムで観戦する人が多いことからも、日本人は世界のどこかで起きていることに対して、『時空を超えて遊びに行くこと・楽しむことが好き』『そういったことに抵抗の少ない』国民なのかもしれないですね」

リアル×オンラインの“ハイブリッド開催”。映像+付加価値などで収益化を目指す


5月25日に緊急事態宣言の全面解除が発表され、商業施設やテーマパーク、飲食店やライブハウスなどの営業が再びスタートした。3密を避けた新しい生活様式が日常で実践されるようになった今、関係者すべての健康と安全を確保した上で、フェスやライブを開催・運営することは可能なのだろうか。

「当面の間は、オンラインフェス、そしてリアル×オンラインの両軸で考えていかなければならないと思います。これまではリアル開催のチケット収入込みで収支が成り立ってきたフェスがほとんどであり、人数や規模を制限した形だと成立しないというのが現状。しかしリアルで開催する限りは、ステージ設営や出演費なども従来と同様に発生するため、それを少ない人数によるチケット収入とオンライン配信による収入でまかなっていくことになります」

「ROVO LIVE FOREST 2020」では、コロナ禍における野外フェス開催に挑んだ船橋岳大


感染が収束していけば、リアルの規模を徐々に回復させ、その上でオンラインを活用してパイを広げていくという形も想定できるが、残念ながら先行きは見えない。この状況が続くなら、多くのフェスがさらなる苦境に立たされることとなるだろう。

「実際に世界最大級規模の『グラストンベリー・フェスティバル 』でさえ、来年リアルでの開催ができないと収支的にかなり厳しく、フェス自体の存続に関わってくるとコメントを出しています。“縮小版リアル+オンライン”という形がしばらく続くなら、賛否両論はあれど、『プレミアムな体験として高価格帯のチケットを販売するリアル』と、『裾野を広げるため手に取りやすい価格で参加できるオンライン』の“ハイブリッド開催”も行われるかもしれないですね」

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