タイタンのマネージャーが「実りゆく」を監督。八木順一朗監督、主演・竹内一希インタビュー

関西ウォーカー

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映画「実りゆく」は10月9日(金)よりTOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー


長野県のりんご農家を舞台に、夢を追いお笑い芸人になりたい息子と父親との絆を描いた映画「実りゆく」。芸能事務所タイタンのマネージャーをしながらも本作のメガホンをとった八木順一朗監督と、お笑いコンビ「まんじゅう大帝国」で今作の主演を務めた竹内一希に話を聞いた。

芸能事務所タイタンのマネージャーをしながら本作の監督を務めた八木順一朗

主人公の実を演じた竹内一希


本作は堤幸彦や大根仁が審査員を務める「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で、堤幸彦賞とMI-CAN男優賞を受賞した作品「実りゆく長野」をファンの期待に応えて劇場映画化したもの。監督の八木順一朗と主人公・松尾進役の竹内一希はそのままに、父親役の田中要次をはじめ三浦貴大、小野真弓、山本學といったベテラン俳優陣も出演。さらに本人役として爆笑問題や島田秀平も登場する。

タイタン・太田社長も絶賛!予告作品から出発した「実りゆく」

りんご農家を舞台に父と子の物語が描かれる「実りゆく」(c)「実りゆく」製作委員会


―本日はよろしくお願いします。まずは「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」に予告作品「実りゆく長野」を出品しようと思った経緯を教えてください。

八木「タイタンのマネージャーとして働いているんですけど、実は小さい頃から映画監督になるのが夢で、タイタンにいながらにして、その夢をずっと持ち続けていたんです。日々どうやったら映画監督になれるのかアンテナを貼っていたら『未完成映画予告編大賞 MI-CAN』を知りました。『予告編だったら全部を撮る予算やエネルギーはないけど、短い部分を撮って出品するくらいならできるのではないか』と考え、この映画のモデルとなった松尾アトム前派出所という芸人の話をベースに物語を作ろうと思い挑戦してみました」

―出品した「実りゆく長野」から主人公には竹内さんを起用していましたが、その理由は?

八木「まんじゅう大帝国のマネージャーとして彼と接していく中で、お芝居が上手いというのと、表情の作り方や話し方が主役になる存在だと思っていたので、そのタイミングで起用したいと思っていたんです。それに彼の人柄というか、非常に暖かいし、何より竹内くんは東京生まれ東京育ちなんですけど、田舎くさいところがありまして、この長野を舞台にした作品にピッタリかなと思いました(笑)」

予告作品から出発した「実りゆく」(c)「実りゆく」製作委員会


―ちょっと失礼な気もしますが(笑)。ちなみに竹内さんは東京のどのあたりの出身なんですか?

竹内「小学校まで品川区、それからは世田谷区に今日の今日まで住んでいます。確実に監督の言う『田舎』の要素が入る余地がないんですけどね、いつ入ってきたのか(笑)。両親も東京出身なので、不思議ですね。もしかしたら八木監督は人を見る目がないのかもしれないですね(笑)」

八木「確かに(笑)。でも竹内くんはやはり暖かさだと思うんです。変に尖った部分もないですし、ギスギスした心のトゲもない。本当に大自然で裸足で畑を駆け回っていそうな大らかさがあるんですよね」

―竹内さんご自身としては監督が言われた要素はあると思いますか?

竹内「僕はコンクリートジャングルにいましたからね、散歩といえば『恵比寿ガーデンプレイス』まで歩いていくぐらいですから(笑)。全然自然と触れていないんですけど、親は本当にできた人で、僕は反抗期もなかったんです。反抗する理由がないくらい良い親で、何の不満もなかったんですよ。ご飯はおいしいですし、何不自由なく大学まで行かせてくれるし、程よくおもちゃを買い与えてくれ、家族で旅行に出かけ、何の文句もないといいますか(笑)。だから監督の言う『暖かさ』は両親のおかげですね」

―竹内さんは「実りゆく長野」で主役に抜擢された時、どう思われましたか?

竹内「『何言ってるんですか?』というのが第一印象でしたけど、主演というのは目立つので、やはりうれしいという思いもありました。今までドラマなどで脇として出演はあったんですけど、主役となるお芝居と向き合う時間も増えるので、ここまでのものは初挑戦でしたね」

―予告作品「実りゆく長野」から今回の劇場映画「実りゆく」一番の変化は何だったのでしょう?

八木「一番の変化はやはり人数、特にスタッフの変化ですよね。予告の時は僕自身がカメラを持って撮ってただけで、スタッフが一人でしたので。予告の時は出演してくれる芸人さんに僕が乗った台車を押してもらって横移動してる風に撮ってみたり、本当に手作りでした。1人から40人くらいに一気に増え、分担作業で、僕は自分の演出に専念して作品を仕上げることができたので、『これがプロとアマチュアの差か』と痛感することができました。あと、自分が監督という立場でみんなをまとめて先導する責任感はありましたね」

竹内「予告作品は八木さんのプライベートなもので、実は事務所に黙って撮ってましたからね(笑)」

―そうだったのですか!

竹内「本職はマネージャーですから、本当に仕事の傍ら『ちょっと付き合ってもらって良いですか?』っていう入り方だったんですよ。タイタンのお笑いライブの日にこっそりカメラを持ち込んで、これからライブするって時に『竹内くん、ちょっとここで立って、5分だけ』って勝手にやってるんです。農園のシーンなんかもそっちのロケの仕事をわざわざとってきて、ロケ終わりに『さあ、やりましょうか』って撮影始めて、八木さんはやり口がめちゃくちゃなんです(笑)」

八木「めちゃくちゃでしたね(笑)。だから予告編の制作費は1万円とかでしたよ」

―そんな勝手なことをして太田光代社長には怒られなかったのでしょうか?

八木「『未完成映画予告編大賞 MI-CAN』では一次、二次審査を経て最終審査があって、最終に残った時に社長に作品を出品したことを報告したんです。そうしたら『ちょっと観せなさいよ』って話になって観てもらったんです。すると案外気に入ってくれたようです。気に入ってもらえて本当によかったですね、こちらも元気付けられたので。ダメだったら『何やってるの』言われてましたから」

竹内「そこ(太田社長に気に入ってもらえるか)が一番の大勝負だったと思いますよ(笑)」

爆笑問題も本人役で出演(c)「実りゆく」製作委員会


竹内一希が語る、親子の思いがぶつかるシーンで起こったミラクルとは?

実の父・等役の田中要次(c)「実りゆく」製作委員会


―予告作品を経ての本作の「実りゆく」。本格的な作品の主演をするのは緊張はしなかったのでしょうか?

竹内「本当は緊張する“べき”なんでしょうけど、映画の主演というものが分からなさすぎて、逆にプレッシャーを感じなくて『これだけプロの集団がいるんだからなんとかなるだろ、みんな頑張れ!』ぐらいの感じでいました。悩んでもしょうがないので八木さんに全てお任せして『なんとか僕を役者に仕上げてくれるだろう』って思ってましたね」

―八木監督は演技の指導はしたのでしょうか?

八木「細かいところはもちろんしましたけど、ベースは竹内くんなので、松尾実というキャラクターをする上でのびのびとしてもらいましたね」

―主人公の松尾実はお笑いでネタをする時は普通に喋れますが、普段は吃ってしまう役柄です。役について勉強されたのでしょうか?

竹内「八木監督と吃音の方に実際に会って取材させていただきました。特定の条件であれば喋れたり、喋ることのできる度合いも変わってきたりする。そういうのを脚本に落とし込んでもらったので『実ならどこまで喋れる』というのを、吃音のことを知っている人が見ても違和感がないようには気をつけていました。ただ予告作品から含めると1年くらい役作りの時間があったようなものなので、不安のようなものはなかったですね」

―予告作品から製作体制も変わった中で、本作で一番力を入れたシーンは?

八木「ネタバレがあるので詳しくは言えないですが、最後のクライマックスは入れましたね。それ以外だと中盤、嵐のなか、実と父親が喧嘩する場面ですね。実の幼少期のトラウマがフラッシュバックしたりとか、父親に言えなかったことを初めて言葉にするところ、実と父親の歴史の全てがぶつかる瞬間で、かつ撮影でも嵐という、物語上でも撮影上でも精神的にも大事なものがあそこのシーンに集約されるので、撮影時には気合を入れて臨みました。結果それだけのものが撮れた自信があるので、注目してほしいですね」

―竹内さんは実が父親と喧嘩するシーンを演じた時のことを振り返ってみるとどうでしょうか?

竹内「あのシーンは僕を飛ばせるほどのプロペラ2台を設置して、雨を撒いて撮影したんです。雨は目に入ってくるし、プロペラの風で息ができない。お芝居どころじゃなくて、本当に命に関わるシーンでしたね。その『辛い!』という感情が呼吸困難から来ていて、実の心の叫びとマッチしてミラクルが起こりましたね(笑)。できあがったものを見ると見事だなって思うんですけど、『これ息できないだけなんだよな』って思ってしまいますね(笑)」

―マネージャーをしているからこそ、映画を撮りやすかった部分はありますか?

八木「今回はお笑い芸人を扱っているので、芸人の素の部分を知っているのは大きいような気がしています。芸人ってステージでネタをしているところしか皆さんは知る機会がないですけど、ほとんどがステージじゃない人生なわけです。そういった部分をここまでリアリティを持って感情の機微を描くのはできなかったので、まんじゅう大帝国に一番近い立場でマネージャーできたというのは作品にとってはすごく大きい気がしてます」

主人公の実はりんご農家をしながらお笑い芸人になりたい夢を追う(c)「実りゆく」製作委員会


竹内「芸人同士で飲んでて、一人だけが顔バレして…。で、バレなかった時のなんとも言えない感じとか本当によくあるんですよ。ライブ会場からトボトボ歩く感じなんかは本当に映画のままですね(笑)」

マネージャーをしながらの映画を撮影「自分自身を表現できた作品」

竹内一希の相方である田中永真も出演(c)「実りゆく」製作委員会

朱美役で出演の日本エレキテル連合・橋本小雪(c)「実りゆく」製作委員会


―りんご農家とお笑い芸人に揺れる「実りゆく」は、松尾アトム前派出所さんの人生をモデルにされていますよね。この部分は「芸能事務所のマネージャーをしているけど、映画監督にも挑戦したい」という監督自身の素直な部分があるから生きている作品だと思いますが、いかがでしょうか?

八木「自分が置かれている状況と、本当になりたかった姿が違う状態でほとんどの人は生きていて、僕もその一人だったんです。そういう意味でどうすれば思いや夢を実らせることができるのかと考え、主人公の実を僕自身として脚本を書きましたし、そういう意味で自分自身を表現できた作品だと思います」

実の母・慶子役の小野真弓(c)「実りゆく」製作委員会

地元で実を支えるヒデ役の三浦貴大(c)「実りゆく」製作委員会


―竹内さんは「もし芸人をしていなかったら」という、他の人生を想像したりするのでしょうか?

竹内「『何かになりたい!』ってタイプではないので、特にないですね(笑)。お笑い芸人も相方に誘ってもらってあれよあれよという間にここにいて、『なんとしても芸人にならねば』という思考がなかったので、逆に『芸人になっていなかったら』と考えるのが怖いですね。大学も高校の先生に『おもしろい大学ない?』って聞いて、日本大学芸術学部に滑り込みましたからね。主人公の実が自分の意思で芸人を目指していく姿は、だからこそすごいと感じますよ」

―ありがとうございます。最後に一言メッセージをいただけたらと思います。

竹内「僕が演じました実という青年は、いろんな困難を乗り越えながら自分の信念を持って、夢に向かって真っ直ぐ進みます。その姿を演じましたので大きい映画館のスクリーンで、大きい僕を見に来てほしいですね(笑)。映画館も安全な場所なのでぜひとも劇場でお願いします」

八木「コロナの影響で同じ場所に集まったり共有することが難しい時代になってしまったんですけど、映画もお笑いライブも一つのものをたくさんの人が見て同じ気持ちになることが大事だと思います。実りの秋に映画が公開できるのも何かの縁だと思いますのでぜひスクリーンでりんごと笑いの詰まった作品を笑って、泣いて見ていただけたらと思います」

映画「実りゆく」は10月9日(金)よりTOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー。

取材・文=さくらいけんたろう

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