大阪・本町「バンブルビー」鋭利な個性が光る、唯一無二の深煎りスパイスカレー
関西ウォーカー
大阪でブーム加熱中のスパイスカレーの名店を紹介するWEB連載「大阪スパイスカレー名店ファイル」第3回は大阪・本町の人気店をご紹介します!
今回紹介するのは焙煎スパイスで知られ、カレー店主のファンも多い「バンブルビー」。「スパイス使いの魔術師」と呼ばれる店主・藤岡恒明さんが作り出すカレーは、ズシンと重量感のあるスパイスのコクや、複雑に広がる辛味、そしてフレッシュな香りが堪能できる。また、“バンブルビー”といえば、ジビエ。ジビエが苦手な人でさえ「ジビエのカレーってこんなに旨かったのか」と言わしめるほどの定評がある。あえて馬肉や鴨肉、ヤギ肉を使う理由とは? さっそく藤岡さんに聞いてみた。
すべて火入れが鉄則! 視覚と嗅覚を駆使して約30種のスパイスを毎朝焙煎

藤岡さんは毎朝8時に店に入り、9種のカレーに合わせてスパイスを焙煎する。主具材によって、スパイスの配合もまた焙煎時間も異なるため、段取りが大変だそうだ。なぜなら1種のカレーに約30種。それが9種もあるのだ。業者にインドレストランの3倍と言われるほど、スパイス量は半端なく多い。しかも、ただ単に配合したものを一気に焙煎しているわけでない。バラバラの大きさでは均一に火が入らないため、粒の大きいものから順次火入れをしていく。中には、マスタードシードやカスリメティリーフのように一緒に火入れをすることで香りや甘味がさらに高まるなど、スパイスやハーブ同士の相乗効果を考えながら焙煎を行っている。特にヤギ肉は匂いがキツイため、嫌いな人でも食べられるようにスパイスのほかにフルーツをたくさん使っているという。山羊のカリーは“バンブルビー”でもスパイス度数No.1にも関わらず、ある客は甘いと評価したほどだ。
夢の中でまでスパイス焙煎

焙煎は中華鍋で一気に。火力が強いので焦げないように細心の注意を払う。「スパイスは値段が高いから、焦がすわけにはいかん(笑)」と藤岡さん。レシピは自己流だ。大阪・道頓堀にあったインドレストラン「モンティー」では、スパイスをすべて朝挽きし焙煎して使っていたそうだ。「モンティー」に刺激を受け、また目標にしてきた。店を始める前、自宅で何度も何度も配合を考え焙煎した。「あ~これはちがう、これでもない」と夢の中でまで焙煎スパイスの配合を行っていたそう(笑)。時には夢の中で配合した量を実際に焙煎したこともあったとか。
スパイスが命の恩人。闘病生活から生まれた健康カレー

店を持つ前の藤岡さんはサラリーマン。バブルがはじけ、収益求めるようになった会社にうんざりし、1980年後半からインドレストラン「モンティー」のカレーにはまっていたこともあり、カレー店を開こうと23年間勤めあげた会社を辞めた。心機一転、店を持つにあたり人間ドッグを受けたところ、医者から「よう、生きてたな」と言われるほど重度の糖尿病と診断され、即入院。その日から1年半の闘病生活を送ることとなってしまったそうだ。その間、食事制限を余儀なくされ、大好きだった「牛肉もダメ、塩も砂糖もダメ」と言われ、それでも何とか食べられる肉はないかといろいろと探し、低カロリー、低脂肪、高タンパク質の馬肉や猪肉、鴨肉、ヤギ肉に行きついた。スパイスの存在を知ったのも同じ。塩や砂糖がなくてもスパイスを使えば、野菜カレーができる。それを毎日食べていたら、劇的に血糖値がよくなって、医者もびっくりしたそうだ。いわば、スパイスは藤岡さんにとって薬であり命の恩人なのだ。
そんな1年半を「いい時間だった」と振り返る。「あの時、スパイスの存在を知らなければ、店を持つことはもちろん、この世にいたかどうか…」と。そんな壮絶な過去を乗り越えた藤岡さんだからこそのメニューが“バンブルビー”にはある。
今後の夢が2つあるという藤岡さん。1つは店を広くすること。そして、もう1つはレトルトカレーを販売することだ。実現に向けてゆっくりと頑張ってもらいたい。多くの“バンブルビー”ファンたちも期待しているはずだ。
※本連載はムック「KansaiWalker特別編集 関西カレー’17新時代!」(現在発売中)の発売を記念した連載記事です。大阪スパイスカレーの名店・新店を多数紹介した本です。ぜひ興味のある方は書店・コンビニでチェックしてください。
【関西ウォーカー編集部/ライター惣元美由紀】
惣元美由紀
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