不二家のショートケーキ発売100周年!大切な思い出をコンセプトにケーキを作る「ショートケーキ12の物語」企画の裏側
東京ウォーカー(全国版)
“ケーキ”と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはおそらくショートケーキではないだろうか。しかも、白いホイップクリームにおおわれたスポンジケーキの上に、赤いイチゴがのったもの。そんな王道中の王道のショートケーキだが、その発祥は日本にある。
日本における最初のショートケーキがどこで作られたのか、という話にはいくつか説があるが、そのひとつと言われているのが食品メーカーの不二家。創業者である藤井林右衛門氏が、ビスケットやスコーンようなサクサクとした生地に、生クリームやイチゴをはさんだアメリカ式のショートケーキを、日本人好みに仕立てていったのが、現在私たちがよく知るショートケーキの先駆けと言われている。
そして販売されたのが1922年(大正11年)。つまり今年2022年は不二家のショートケーキが生まれて100年という特別な年なのだ。これを記念して今年1月からスタートしたのが「ショートケーキ12の物語」。各月限定のショートケーキが登場し、そのバラエティ豊かな内容で話題を呼んでいる。この企画を担当した不二家の洋菓子事業本部営業推進課の課長・瓜生麻未さんと佐久間愛さんに、企画が生まれたきっかけを聞いた。
さまざまなシーンを彩るケーキ。思い出に寄り添ったケーキを作る
瓜生さんと佐久間さんは、販促イベントや催事イベント、大型プロモーションなどの企画に携わっている。2022年度の企画立案をしていくなかで、2022年は不二家がショートケーキを発売して100周年であり、周年を盛り上げる企画ができないかとの思いから、今回の企画をやっていくことを決めたんだそう。
「誕生日、七五三、結婚記念日などさまざまなシーンでケーキは食べられてきています。記念日にケーキが欠かせないものだったということは、一人ひとりの中に、思い出のショートケーキというものが必ずあると思うんです。それは、うれしいとき、悲しいときにと食べてきたシーンも思い出も千差万別。ショートケーキの味わいもそれぞれ違っているでしょう。この“日本におけるケーキの在り方”を考えたことをきっかけに、思い出にケーキを結びつけるという今回の企画にいたりました」(瓜生さん)
毎月主人公となる人から、ケーキにまつわる思い出をヒアリング。そこから、その月限定の新作ショートケーキを作り上げていく。その人の持つ物語をコンセプトにケーキを作っていくのは、瓜生さん、佐久間さんにとって初めてのことで、大事な思い出を扱う難しさと対峙することになったという。
「ご本人の大事な大事な思い出に触れさせていただいているなかで、これは違うな、というものを出してはいけない。その人の人生の思い出を背負わせていただいているというのがあるので、主人公になっていただいた方とは密なやりとりをしていきました。ただ、全国各地にいらっしゃる方々に主人公になっていただいたので、コロナ禍も相まって試食していただくタイミングがつかめないなど、日程の調整に苦労しました。3月を担当してくれた熊本の高校生たちに試食してもらうときは、九州の工場にレシピを送って作ってもらったり、7月のケーキのときも別部門の担当者に試食用のケーキを名古屋まで持って行ってもらったりと、エリアや部署を超えて企画を作り上げていきました」(瓜生さん)
不二家に縁がある人に声を掛け主人公になってもらったが、タレント、俳優、アスリート、将棋棋士と実にバラエティ豊かな面々。創業100年を超える不二家ならではの人脈と言えるだろう。9月のケーキは主人公になった方から「ペコちゃんをケーキにしたい」という要望があり、ペコちゃんの顔型チョコレートをトッピングすることになったんだそう。
「これまで販売してきたなかで反響が大きかったのはまずは1月ですね。『伝承の味 不二家のショートケーキ』と銘打ち、創業者の藤井林右衛門の作ったショートケーキをイメージしました。昔からの不二家ファンの方からは懐かしいという声が、若い層からはレトロかわいいと好評でした。SNSでも反響がありましたね。あとは5月のケーキは、不二家レストランのストロベリーホットケーキをインスパイアしているのですが、ホットケーキをショートケーキに仕立てるというスタイルが今までにないと評判でした。それから、8月の中のスポンジがカラフルなケーキも楽しんでいただけたかと思います」(佐久間さん)
「ショートケーキ12の物語」のケーキが販売開始になるのは、カレンダーで15(イチゴ)日が上に必ずのることから、「ショートケーキの日」と言われる毎月22日。月末までの約1週間のみの販売で、基本、再販の予定もないとのこと。10月以降も趣向を凝らしたケーキが登場するのでお見逃しなく。
厳選素材・国産素材にこだわったケーキ作り
不二家では常時さまざまなケーキを販売しているが、一番人気を誇るのは「プレミアムショートケーキ(国産苺)」だ。
「3年ほど前から不二家では厳選素材・国産素材ということにこだわっており、そのこだわりがよく表れているのがプレミアムショートケーキです。一年を通じて良質な国産のイチゴを使用した、不二家の基幹商品です」(瓜生さん)
口どけの良いシャンテリークリーム(ホイップクリーム)を使い、イチゴを2段サンドしていることが特徴で、贅沢な仕上がりになっている。国産イチゴが手に入りにくい夏にも大量のイチゴを確保するために日本各地の産地を毎年訪問し、卸売業者や農家の方とコミュニケーションをとり、連携して安定供給に努めているのだそう。また、工場のラインを整えることで、全国にあるどの不二家でも同じケーキが楽しめるようにしている。
100年という長い歴史のなかで、形や味わいを変えながら作り続けられた不二家のショートケーキ。藤井林右衛門氏が作ったショートケーキもどんなケーキだったのか、イラストや写真が残っていないため、販売開始当時、イチゴが使われていたのか、どんな形だったのかははっきりとはしていなんだそう。どのような変遷を経て現在のショートケーキに行き着いたのかは明らかになっていない部分も多いが、不二家のショートケーキが多くの人の思い出を彩り、そして愛されてきたのは確かだ。12月には「ショートケーキ12の物語」の最後のケーキも登場し、集大成を迎える。101年目に向けて、不二家のケーキに今後も期待が持たれる。
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この記事の#やくにたつ
・周年企画は商品・サービスが受け入れられている文化や土壌も考慮
・商品に思い出というストーリーをつける
取材・文=西連寺くらら
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