壮絶ないじめを克服し、天才ギタリスト・MIYAVIに師事した元ヴィジュアル系バンドマンに半生を聞いてみた「自分が間違っていると思わないでほしい」
東京ウォーカー(全国版)
「MIYAVIさんには視座を高く持つ姿勢を教えてもらいました」

――辛い高校時代に生きる活力を与えてくれたバンドマンへの夢。夢を叶えるためにどんな行動をされてきたのでしょうか?
「ある時、ヴィジュアル系バンドの音楽雑誌を読んでいたら、人気バンドマンのインタビュー記事に『昔ローディーをやっていました』という話が頻繁に出てくることに気付いたんです。“ローディー”とは、コンサートやライブツアーを支えるスタッフのことで、当時はきちんと理解していませんでしたが、『ローディーになるとプロの道が開ける』と漠然と思っていました。そんなある日、ギタリストのMIYAVIさんが所属していたバンド『Dué le quartz(デュール クォーツ)』のCDを買ったら “ローディー募集”と書かれたチラシが同封されていたんです。見た瞬間に『これだ!』と思い応募しました」

――MIYAVIさん所属のバンドのローディーは競争率が高そうですが、結果はどうでしたか?
「『履歴書を送ってください。2週間経って連絡がなければ落ちたと思ってください』と言われ応募しましたが、待っても結局連絡はなかったんです。『落ちたんだ…』とがっかりしましたが、『僕以上にやる気のある人なんていないはず!履歴書を見ただけで僕の何がわかるんだ!』と思い直し、電話したんです。『なんでダメなんですか!?』と半ばキレ気味で(笑)。すると向こうの担当者さんも押されたのか『では今度ライブに来てください。楽屋に通すのでお話しましょう』と言われ、ライブ会場で面談をしました。『今日からよろしくお願いします』とメンバーにも紹介されて、その日のライブからローディーとしてお手伝いすることになりました。その時は憧れていたバンドのメンバーが目の前にいて、本当に夢みたいでしたね」

――すごい!結局、担当者さんはMIHIROさんに合格の連絡を忘れられていたのでしょうか?
「いえ、後から知ったことなのですが、それこそが一次面接だったようです。というのも、ローディーって想像以上に過酷なんです。全国各地のライブ等に同行するので自分のプライベートは皆無ですし、仕事も機材を運んだりと重労働なんですね。業界的に当時は体育会系の縦社会で、ベテランのスタッフの方たちは職人気質で手が出ることもあります。なので、気合が入っている人でないと続かないんです。『2週間待って連絡なければ不採用です』と言われて連絡してこない人はそもそも採らないというスタンスだったんです。自分から電話をした時点でほぼ合格だったようです」
――行動したからこそなれたローディーだったんですね。ローディーになってからはどんな日々でしたか?
「とても貴重な経験で、バンドマンとして学ぶことがたくさんありました。家に帰れない日々が続いたので、当時はMIYAVIさんの部屋に泊めてもらうことが多く、半同棲のような生活をしていましたね(笑)」
――MIYAVIさんとの半同棲生活うらやましいです(笑)。
「ステージ以外のMIYAVIさんを見られたことはとても勉強になりました。当時のMIYAVIさんは天才で破天荒なイメージでしたが、実際は違っていて超絶努力家。寝ているのは移動中や僅かな空き時間だけで、それ以外はギターの練習やパソコンで曲作りをされていました。僕はその姿を間近で見ていて『成功する方の努力量ってこんなにすごいんだ』と、10代で知れたことはとても貴重でした。視座がとても高くなりましたね。また人柄もとても優しくて、いつも僕に対して真剣に向き合ってくれました。高校生時代からの人間不信を引きずっていた僕は、こんなに素敵な人も世の中にいるのかと感動し、救われる気持ちでした」
――MIYAVIさんと過ごした日々で、特に印象的だったエピソードがあれば教えてください。
「とにかくめちゃくちゃかっこよくて、ステージ以外でも常にMIYAVIさんなんです。家でも常に皮パンを履いていて、外にいる時と服装が変わらなかったですね(笑)。あと印象的だったのは、僕がローディーを卒業する時にかけてくれた言葉。僕が自分のバンドを始めるというタイミングだったので、MIYAVIさんから『バンド頑張れよ。つっちゃん(MIHIROさんの愛称)はどんなバンドマンになりたいねん?』と聞かれて。僕は『憧れのMIYAVIさんみたいになりたいです!』と答えたら怒られたんです」
――なぜですか?
「『お前そんなんじゃあかんで。俺なんてヴィジュアル系というフィールドのなかで少し注目を浴びているだけで、俺を目指すくらいじゃ全然ダメ。世界中を見れば俺よりスゴイ人なんてゴロゴロいて、俺はそういうところを目指してる。お前も俺に憧れるんじゃなくて、今のうちからそういう視座を持って、俺を脅かすくらいの奴になれよ』と言われて、しびれました。今世界規模で活躍されている姿を見ると、あの時の言葉がより真実味を増して、改めてスゴイなと思っています。MIYAVIさんには視座を高く持つ姿勢を教えてもらいました」

高校時代のいじめを乗り越え、ヴィジュアル系バンドマンになる夢を実現したMIHIROさん。後編では念願のバンドマン活動と引退、そしてビジネスマンとして歩むこととなったストーリーを深堀りしていく。

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