“和の鉄人”道場六三郎の味と技を、目の前で気軽に楽しめる和食店が登場!千葉県松戸に「懐食みちば」がオープンした理由とは?

東京ウォーカー(全国版)

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「懐食みちば」を“もっと、もっと、いいお店”にするための地道な努力と、今後の展望

――伊藤さんの前職から考えると、同じ和食でも別世界ですね。
【伊藤永】仕事に関しては、本当に手探りですね。料理の世界ではおいしいものを作ることが優先事項であって、値段はあとから決めることがあるんです。でも、ファストフード店は、そんなことをしていたら勝負にならない。「どのマーケットに幾らでこの商品を提供するから意味がある」という考え方です。場所や値段を先に決めて、その範囲で提供できるように作り込んでいくのが今までの考え方でした。そういう意味でいうと、和食の世界にファストフードの考え方を取り入れて、今、挑戦しているところですね。

【伊藤永】気軽であるコンセプトを実現するには、あの値段以上だと気軽にならないじゃないですか。そこで、道場先生や料理人の方々に「この値段でできる料理というのを開発してください」とお願いして、すったもんだしてメニューを考案しました。値段を先に決めたことで、料理人の腕でそれがおいしくなるという「料理人の腕の凄さ」を体感していただける店づくり、方向性が生まれたので、新しい風を入れることができたのかなと思っています。

季節ごとに変わるランチの献立。写真は春の昼席(3000円・税別)

ディナーも旬の食材を使い、季節ごとに内容が変わる。写真は春の夜席(9900円・税別)


――気軽感を演出されるために、どのような努力をされているのですか?
【伊藤永】食材に、少しだけいいモノを使うこともありますが、いわゆる誰もが知る高級食材はほとんど使われません。食器の数も、本来、和食は一つひとつの料理に違う食器を使いますが、その分、洗い場の作業はすごく大変なんです。しかもそれだけの食器をそろえれば、必然的にスペースも必要になる。どうやって食器の数を減らすか。一方で見栄えも味に影響するので、そのバランスも考えたりしています。

【伊藤永】さらに、洗い物の積み方などもっと細かい部分でも改善する余地があります。これはファストフードでも同じですが、きっと、そういうことの積み重ねがもっと負担を少なくできるノウハウになるんですよね。それができたときに、初めて“もっと身近で・もっと気軽に”というコンセプトの第3号、第4号店が目指せるんじゃないかなと思っています。その意味でも、ここが試金石と考え、今でもお値段に対する作業量の多さとか、日々戦ってチャレンジをしています。だから、まだまだお店の形として完成形ではないですね。

【伊藤永】お客様に喜んでいただいているのは、すごく実感したんですけど、松戸がゴールなわけではないので。「川崎から来たんです。次は川崎で」とか「府中に欲しいです」とか、遠方からお越しいただいたお客様から、ありがたいお言葉もかけていただいています。ただ、“身近”というコンセプトからすると、わざわざ遠方から来ていただいてはダメなので、より多くの人に喜んでいただきたいという夢を叶えるためには、今、本当に頑張ってこのレベルで出せているものを、もっと無理なくこの値段で出せるようにやっていかなければと思っています。

常に“もっと身近で・もっと気軽に”を実現するために、裏では日々細かい努力がなされているそう


――料理長は道場先生のもとで、どれくらいの研鑽を積んでこられた方なのでしょうか?
【伊藤永】20年と言っていましたね。一ノ谷浩司が料理長・店主として、店を任されています。元「銀座ろくさん亭」の料理長を務めていた人物ですが、やはりそういう方がやることに意義・価値があるんです。

【伊藤永】もちろん先のことはわかりませんが、次のお店を出すときも同様に「銀座ろくさん亭」から店主が選ばれるはずです。ただ、お店の形態が、会席料理ではなく、天ぷらや寿司などジャンルを絞って展開することもありなのかなと考えています。それなら、店主を例えば煮方のトップに任せて、職人の育成期間を短縮できるじゃないですか。もちろん「銀座ろくさん亭」から輩出していきますが、ジャンルの絞り方などお店の形によっては必ずしも料理長クラスの人物でなくてもいいのかな?とも思います。いずれにしても、“道場六三郎の技”が生きた料理というところは変わりませんから。

【伊藤永】道場先生が「止まるな。止まるな」って、「料理はどんどん進化するから、伝統の技を守るとかやめろ」とおっしゃるんですよ。「伝統の技を、さらに進化させて、もっとよくしてくれ!」と、日頃よくおっしゃっているので、道場六三郎を超えるような料理人を登場させることを目指さなきゃいけないと思っています。

――超えていくのは、相当大変そうですね。
【伊藤永】はい、かなり難しいとは思います。道場先生にはスター性があるんですよね。箸を持っているだけで絵になっちゃいますから。ちょっと難しいですよね(笑)。

――お店に道場さんご本人がいらっしゃることもあるんですか?
【伊藤永】来ていますが、基本的にはお客様がいらっしゃらない時間ですね。「銀座ろくさん亭」も同様ですが、営業時間外に来店されて、仕込みのチェックや味見をされていかれます。店の味は仕込みで決まることが多いので、「大丈夫だな」とか、「いや。直せ」とか言ってお帰りになることが多いです。なので、お客様の前に出るということは今後もそんなにはないと思いますが、お店は回られています。

――「懐食みちば」の今後のビジョン、成し遂げていきたいことを教えていただければと思います。
【伊藤永】カボチャの煮物のように自分が感動したもの、道場六三郎事務所にいる職人の技を、より多くの人に体験していただくことがこの会社の使命だと思います。結果的に、料理人たちからしてみても、増えたお店で店主となり名を上げるというチャンスも巡ってくるでしょうし、働いているスタッフにとっても、ここで働く未来が明るいと思えるような会社にしたいですね。それはなぜかというと、お客様が「おいしいね」と言って、すごく喜んでくださる方がいっぱいいらっしゃるからです。

【伊藤永】そのためには、まず「銀座ろくさん亭」は本当にすごい料理を出すけど、その周りにも支店がいっぱいあって、そこでは「気軽、身近」というコンセプトで戦っている料理人がいることを知っていただくこと。そして将来的には、和食の世界のなかで道場先生の名前に依存せず、道場六三郎事務所に凄腕の和食料理人が多く集まる会社として、知られるようになりたいと考えています。

――壮大なチャレンジですね。
【伊藤永】やる価値は高いと思います。職人たちは自分が感じたことを「懐食みちば」の料理で表現して、お客様も「すごいね。おいしいね」と喜んでくださる。そんなふうに会社が発展していったらいいなと感じています。

この記事のひときわ #やくにたつ
・事業継続のために、考え方をがらっと変えてみる<br />・自分の経験則を今の仕事に取り入れてみる<br />・伝統の技を、さらに進化させて、もっとよくしていく

取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=樋口涼

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