「また佐賀県が何かやっている」。ゲーム・アニメコラボほか10年間36件のプロジェクトで佐賀をアピールし続ける「サガプライズ!」の戦略とは
東京ウォーカー(全国版)
コラボで得たノウハウを生かしてオリジナルコンテンツの制作へ
数々の企業などとのコラボを実現してきた佐賀県だが、クリスマスに登場した“空腹お嬢様向けタイムライン執事・サガスチャン”はオリジナルコンテンツになる。「サガプライズ!」発信のオリジナルコンテンツとしては3つ目のプロジェクトだが、なぜオリジナルコンテンツの発信を始めたのだろうか。
「佐賀の特産品をさらに一段階押し上げるためにも、コラボにとらわれず、どんなPRをしていけば世の中に刺さるのか考えました。コラボだけでやっていると次に何をやるか考えたときに、コラボ先の選定だけをするような状態になってしまうんです。それで、いま一度自分たちの資産を見直した結果、オリジナルコンテンツの制作をしようということになりました。地元企業だけではできないようなことも、佐賀県と一緒にやることで挑戦していけるのではないかと思います」
コラボの場合は、コラボ元についている“お客さん”を取り込むことができるが、オリジナルコンテンツだとイチからの集客になる。その点は難しくなかったのだろうか。


「第1弾は『23時の佐賀飯アニメ』という佐賀県グルメを主役に据えた超短尺アニメで、宮野真守さんに主演声優をお願いしました。アニメ制作のクリエイター陣もアニメ好きの方々から支持される豪華なメンツです。第2弾は『佐賀海苔主役祭り』といって46都道府県の特産品と佐賀海苔が登場する“妄想グルメ漫画”を作ったんですが、漫画動画も合わせて制作しまして、人気声優の梶裕貴さん、石川由依さんに出演していただきました。『サガスチャン』も杉田智和さんに声をあてていただいています。こうした声優・クリエイターの方々のお力を借りて、多くの方に注目していただけています。予算が無尽蔵というわけではないので、どこにどうかけるかというあんばいには毎回苦労しますが、オリジナルコンテンツという誰も知らないものを着火させるためにも、声優・クリエイターの方々の力はなくてはならないものです」

「23時の佐賀飯アニメ」は1話約15秒の短尺アニメ。主演を「佐賀の飯」とし、シズル感たっぷりの描写で観ている人の食欲をそそる内容になっている。
「『23時の佐賀飯アニメ』は、日本最大級のクリエイティブアワード『2021 61st ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』の2部門で受賞するなど、複数のアワードで評価していただく機会がありました。こうしたアワードでの評価はオリジナルコンテンツを作り始めて得られたものです」
ビジュアルが地味な佐賀海苔を主役に据えた「佐賀海苔主役祭り」、佐賀グルメを推す執事「サガスチャン」とコンセプトのユニークさも目立つが、これは「企画コンペやプロポーザルで、制作会社からご提案いただいた企画です」とのこと。
「僕らは制作会社にテーマとコンセプトの話をして、佐賀県が伝えることは何か?という部分でのディレクションを担っています。一流のクリエイターの方々に僕らの思いとテーマを伝えて、自由にクリエイティブをしてもらうことを大切にしています」

サガスチャンは(頭に佐賀県を掲げてはいるが)美麗なキャラクターデザインと美声に反して、コミカルなシナリオも印象的。これはSNSとの親和性を考えて、シナリオライターが作り上げていったものだ。サガスチャンの企画で一番気を遣った部分を聞くと「表現の部分でしょうか。クリエイターの方から提案していただいた表現が、佐賀県民の目線から見たときにちょっとどうだろうということはあるので、その調整をお願いしました。おもしろさは残しつつ、人を傷つけたりしない表現に変えていくようディレクションしていきました」と愛垣さん。県として発表するプロジェクトゆえ、悪ノリが過ぎないようにコントロールすることが求められるという。
オリジナルコンテンツ企画を3本経て、手応えは感じているか尋ねると「正直、今のところはないです」という率直な返事が2人から戻ってきた。
「とはいえ、オリジナルコンテンツ企画のファンがついてきてくれているのは感じています。オリジナルコンテンツ用にTwitterアカウント『佐賀県グルメ【公式】(@saga_meshi)』を運用していて、企画内容が変わっても同じアカウントを継続して使用しているんです。そうしたところ、サガスチャンの企画をスタートさせたときに、『また佐賀県が何か始めたぞ』『次の声優は誰だ?』というような反応はいただけました。フォロワー数も一時期には3万フォロワーまで増やすこともできました。佐賀県グルメに関してはいい流れがきていると思うので、積み上げてきたものをこれからも育てていきたいという思いがあります」
柴田さん、愛垣さんも含め「サガプライズ!」を担当するのは佐賀県庁職員。3年ほどで異動がかかるそうだが、引き継ぎという点では難しくないのだろうか?
「コラボにせよ、オリジナルにせよ、毎回やることが大きく異なるので、引き継ぎはかなり難しいと感じています。引き継いだ内容がそのまま次の企画に生かせるということもなかなかないですね。プロジェクトリーダーは僕で4人目です。皆さん『サガプライズ!』を離れたあとも状況を気にかけてくださっているので、何かあったら話を聞いたりするようにしています。企画内容は毎回異なっても、人と人をつないで佐賀県の魅力を伝えていくという部分は変わらないので、そこを大事にこれからもやっていきたいですね」と柴田さん。


ちなみに、柴田さん、愛垣さんそれぞれに推しの佐賀グルメを教えてもらったところ、柴田さんからは「佐賀県20年ぶりの新ブランドとなる『いちごさん』と生卵を落とす『佐賀ラーメン』」、愛垣さんからは「『サガスチャン』でも登場した『白石れんこん』」という回答が。「サガスチャン」や「23時の佐賀飯アニメ」の動画はサガプライズ!のYouTubeチャンネルで視聴可能(「サガスチャン」は2023年9月6日頃までの予定)なので、ユニークな角度から推される佐賀グルメをチェックしてみてはどうだろうか。知らないものを“知ってもらう”ためにはインパクトが大事。インパクト作りにおいて、佐賀県が一歩進んだ場所にあることを実感できるに違いない。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・コンテンツ制作者の力を発揮してもらうための視点でプロデュースをする
・オリジナルコンテンツを広めるためには、着火剤が必要
・“おもしろさ”のさじ加減に注意
取材・文=西連寺くらら
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