コーヒーで旅する日本/九州編|楽しみながら、地域貢献も少しだけ。「ROUND COUNTER」が古小烏町で愛されるワケ
九州ウォーカー
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第67回は、福岡県福岡市にある「ROUND COUNTER」。レンガ造りのレトロなたたずまいの建物、店内に入るとU字型のカウンターや木材を組み合わせた天井、開放的なイートインスペースと、空間だけを見てもステキなコーヒーショップだ。そして、店で目を引くのが陳列されたエプロンやバッグ、パンツといった服飾小物。これらのプロダクトもまた同店の大きな特徴になっている。店主の久保光太郎さんはバリスタになる前はパタンナーとして活躍した異色の経歴の持ち主。コーヒー以外にもさまざまなモノ・コトと出合えそうな「ROUND COUNTER」の魅力を探る。

Profile|久保光太郎(くぼ・こうたろう)
1985(昭和60)年、福岡県福岡市生まれ。服飾関係の専門学校を卒業後、大手デニムメーカーに就職。ジーンズブランド・Leeのパタンナーとして7年間活躍。モノづくりに携わっていたものの、お客と直接繋がることがない環境に違和感を覚え、退職。コーヒー好きだったことからバリスタを志す。2013年に福岡に帰郷。REC COFFEEに入社し、同店の過渡期を支えたバリスタとして活躍。周囲の後押しなどもあり、2019年12月に「ROUND COUNTER」を開業。
活かせるスキルがあるなら

2019年12月にオープンした「ROUND COUNTER」。開店直後にコロナ禍となり、独立・開業するタイミングとしては厳しいものになったと想像できる。ただ店主兼バリスタの久保光太郎さんはひょうひょうと「大変だったかと言われると、大変だった気もしますが、前年と比べようがないので、逆に悲観することもなかったですね。もちろんコロナ時期の売り上げは想定より少なかったですが、だからこそ逆にちゃんと営業しないと、という気持ちでした」と2020年の緊急事態宣言当時を振り返る。

一方でコロナ禍において、久保さんが持っているスキルが重宝されることになった。2020年春以降、世の中からマスクが消え、手に入らないという事態になったのは記憶に新しい。久保さんはもともと大手デニムメーカーでパタンナーとして勤めていた経験があるだけに、開店当時から巾着やエプロンといった服飾小物を自作し、オーダーメイドにも対応。店内に縫製や刺繍を行うためにアトリエを設け、バリスタとパタンナーの二足のわらじを履いて店を切り盛りしていた。
久保さんは「世の中からマスクがなくなって、困っている人がたくさんいることはわかっていましたが、なんとなく大々的に『マスク作れます!』とは言いたくなかったんです。便乗商法と思われたくないというか…。ただとある常連のお客様から『人助け、社会貢献という思いでやってみても良いのではないか』と言われ、『確かにそうだ』と考えを改めました。ただSNS等でオーダーを受け付けていたら、とんでもない量になってしまうことは予測できたので、あくまで店頭で直接注文いただけるお客様に限定しました。すべて手作業のため、作れる量にも限界がありましたので。でも少しでも困っている方々の手助けになれたのは純粋に僕自身、うれしかったですね」と話す。
モノづくりに携わる上での理想形

久保さんはバリスタとしての経験も豊富だ。東京の人気店からコーヒーの道に入り、その後福岡に帰郷し、REC COFFEEへ。REC COFFEEといえばワールドバリスタチャンピオンシップ2016で世界2位に輝いた岩瀬由和バリスタ、そして北添修バリスタが共同代表を務める、福岡を代表するコーヒーショップの一つ。久保さんはそんな環境で、6年にわたりバリスタとしての腕を磨き、最終的には新店舗の立ち上げを任されるまでになった。

ただ、そもそも服飾の世界からコーヒー業界へと転職を考えたのはなぜだったのか。「デニムメーカーでパタンナーとして働いていた時は、1つの型から年間何万本という数のジーパンを作るんです。もちろん自分たちが作ったジーパンを履いてくださっている方を街で目にすると、純粋にうれしいですし、感謝の気持ちもあります。ただ、1つの型から何万本という製品を作っていると、その感覚が麻痺してくるんですよね。それが僕にとっては違和感で、もうちょっとお客様と近い関係性で“モノづくり”に携わりたいと考えました。そこで選んだのがコーヒーだったのですが、なぜコーヒーを選んだのかと問われると、純粋に僕自身コーヒーが好きだったからでしょうね。コーヒーを淹れる側になってみたかったというのも理由の一つ」と久保さんは笑う。

バリスタとして店に立つようになった久保さんはこうも続ける。「REC COFFEEでは技術はもちろんですが、『一杯一杯のコーヒーに情熱を込めること』というバリスタとしての大切な心構えを学ばせていただいたのが大きかったと感じています。バリスタの仕事はお客様に商品をご提供するサービス業ではあるのですが、コーヒーやカフェラテといったドリンクをおいしく作ることができるかが最も大切です。目の前のお客様に、自分が淹れた一杯をその場で評価いただくわけで、こんなにお客様との関係性が近いモノづくりの現場ってなかなかないと思いませんか?飲食業界は仕事がきついといったイメージを持たれがちですが、こういった経験ができるという点からもコーヒー業界に転職したのは僕の性格的に合っていたと感じています」
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