コーヒーで旅する日本/関西編|名産地が生み出すコーヒーの多様な個性を発信。関西唯一の“コロンビア・オンリー”カフェ。「CAFE TALES」

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

★キャプヌケ★


関西編の第59回は、大阪市中央区の「CAFE TALES(タレス)」。関西では唯一、コロンビア産コーヒー専門のカフェとして注目を集める、まさにオンリーワンな一軒だ。店主の村上さんは、幼馴染が携わっていたコロンビア産コーヒーの普及を手伝ったことを機に、アパレル業界から転身。「初めてコーヒーをおいしいと思えた」という出会いを経て、今ではすっかりーヒーに首ったけ。自社で直輸入する多彩な豆を、関西各地のロースターが焙煎を手掛けるというユニークなスタイルで、コロンビア産コーヒーの多様性と未知の醍醐味を世に広めている。

店主の村上さん


Profile|村上ゆうや(むらかみ・ゆうや)
1988(昭和63)年、青森県生まれ。アパレルの仕事を約10年続けた後、幼馴染が携わっていたコロンビア産コーヒーの普及を手伝い始めたのを機に、コーヒーの魅力に目覚める。その後、自らもコーヒーの世界に転身し、ほぼ独学で知識や技術を習得。2019年、関西では優唯一のコロンビアコーヒー専門のカフェ、「CAFE TALES」を大阪市中央区にオープン。

幼馴染との縁から出会った人生を変える一杯

ガラス張りのシックな店構え。ガラス面に描かれたイラストやコメントも注目

とりわけ稀有な一軒。近年、新興の産地も増え、コーヒー豆の顔ぶれも広がるスペシャルティコーヒー専門店の中でも、関西で唯一、コロンビア産オンリーを掲げる「CAFE TALES」は、全国的にも珍しい産地特化型の店だ。店主の村上さんにとって、7年前に体験したコロンビアのスペシャルティコーヒーは、まさに人生を変える一杯だった。「当時、コーヒーはありふれた飲み物という印象で、特に関心もなかったんですが、その時に飲んだコーヒーは明らかに違うもので、初めて“コーヒーって、おいしい”と思えた瞬間でした。あの日の感覚はいまだに忘れません」。そう振り返る村上さんに、思いがけない縁をもたらしてくれたのは、幼馴染のケンジさんだった。

店名はスペイン語でコーヒー農園を意味するcafetalesが由来


日本人の母とコロンビア人の父を持つケンジさんは、「家も近所で、小学生の頃から一緒にいることが多かった」という、最も付き合いの長い友人。長じて、村上さんがアパレルの仕事に就いていた頃、ケンジさんがコロンビアのコーヒーを広める手伝いをしていることを知る。「聞けば、コロンビアにいるケンジの知人、パトリシアさんから彼あてにサンプルの生豆が送られてきたことが事の始まり。彼女の実家は、コロンビア・カウカ県にあるサンタ・バーバラ農園で、コロンビアのコーヒーを日本でも広く知ってもらおうと考えていたようです。当時、ケンジはその豆を持って、関西のロースターを回っていたんです」

サンタ・バーバラ農園は、過去にカップオブエクセレンス(COE)入賞経験もある、現地でも有数の農園。さらにパトリシアさんの親族の多くが、現地のスペシャルティコーヒーを扱う商社・BANEXPORT社に勤めているという、まさにコーヒー一家。送られてきた豆は、いわばコロンビアのトップオブトップであり、ケンジさんの持ち込み活動の甲斐もあって、すでにいくつかのロースターから高い評価を得ていたという。

産地への親近感が沸く、生産者の写真を使った豆のパッケージ


折しもケンジさんが、コロンビアのコーヒーをさらに広めるための窓口となる、カフェを任せられる人を探していた時期でもあり、白羽の矢が立ったのが、一番縁が深い友人である村上さんだった。「たびたび誘いは受けましたが、10年くらいアパレルの仕事一本で、コーヒーのことは全く知らない。家族もいるので、転身するのには勇気が要りましたね」と、最初は逡巡があった村上さん。それでも、ケンジさんに誘われて、生豆の味を見るためのカッピング会に同行した時に、“人生を変える一杯”が待っていた。

「その時に訪ねたのは、神戸のコーヒーロースト六甲道さんでした。コーヒー専門店に行くのも初めてで、最初に“酸っぱいコーヒー飲めますか?”と勧められたのが、スペシャルティコーヒー初体験。初めて素直に“コーヒーがおいしい”と思えた、あの時のことは、いまだに忘れないですね。そこから、いろんなロースターさんと知り合って、どんどんコーヒーの世界に足を踏み入れていきました」

自社輸入の豆と関西各地のロースターのマッチング

コーヒーの抽出レシピは、その日の気候や豆の状態、お客の声にも応えて日々調整

実は、その頃の村上さんは、自ら選んだアパレルの仕事を、一生続けられるかどうか自問自答していた転機にあった。「お客さんに感謝を伝え、笑顔にする機会をもっと作れる仕事をしたい、と思って選んだ仕事でしたが、ケンジと一緒に店を巡っていると、お客さんと接する機会はコーヒー店の方が多いと感じて。何より、お店の方々が皆さん楽しそうに仕事をする姿が印象的で、今いる環境とは違う世界を知って、自分が目指すものを別の形で表現したいと思えたんです」。何より、初めておいしいと思えた、コロンビアのコーヒーを世に広めたい。さまざまな転機が重なって、2019年、村上さんは「CAFÉ TALES」の店主として新たなスタートを切った。

「CAFE TALES」では、パトリシアさんが手掛ける商社・マグナカップ社から豆を直輸入。生豆の卸と共に“コロンビア・オンリー”のカフェとして、さらなる普及の窓口としてファンを広げている。開店にあたり、バリスタの仕事など未経験だった村上さんは、分からないことを知り合ったロースターに聞きながら、ほぼ独学で技術を習得。「夜中まで練習していても、おいしく淹れられると、思わずほれぼれしてましたね」と、この頃にはすっかりコーヒーが生活の中心になっていたようだ。

カフェラテM550円・L650円。滑らかな質感と後を引く甘い余韻が印象的


シングルオリジンで5種類をそろえるコーヒーは、年2回の豆の収穫時期に合わせてメニューを入れ替え。コロンビアの生産量のうち50%以上を占めるカスティージョから、ピンクブルボンなどの希少品種、さらには、アナエロビックやアエロビック(好気性発酵)、コーヒーチェリーのジュースを使ったコロンビア独自の精製方法・シトラススイートネス、フルーツとワイン酵母と共に漬け込んだインフューズドコーヒーなど、最新の精製プロセスを経た銘柄も登場する。かつてコロンビアは“マイルドなコーヒー”の代名詞として一括りにされていたが、「産地の名前だけで判断していた先入観を覆し、今のコロンビアコーヒーが持つ魅力の奥行きを知ってもらいたい」との思いは、バラエティに富んだ豆の顔ぶれに表れている。

さらに、「CAFE TALES」がユニークなのは、自社で輸入した豆の焙煎を、関西各地のロースターに委託するスタイル。現在、焙煎を手掛けている店には、西宮のTAOCA COFFEE、大阪のTERRA COFFEE ROASTERS、Lilo Coffee、京都のABOUT US COFFEE、Kurasuなど、本連載に登場したロースターも数多い。例えば、軽やかで繊細な酸味を持つピンクブルボンの浅煎りはTERRA COFFEE ROASTERS、酸味が少なくふくよかでマイルドなカスティージョ・アエロビック・ナチュラルの中深煎りはABOUT US COFFEE、エスプレッソ専用のオーガニック・カスティージョはTAOCA COFFEEといった具合。複数のロースターの豆を提案する店は以前からあったが、生豆の個性に合わせてロースターをマッチングできるのは、自ら原料の直輸入を手掛けるこの店ならではだ。

好みの豆が選べるハンドドリップコーヒー550円~。バスクチーズケーキ650円、村上さんお手製のチョコチャンククッキー330円


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