SNSフォロワー約20万人の漫画家が手掛ける化粧品「BUSY」が話題!起業から製品開発の裏話を聞いた
東京ウォーカー(全国版)
初回生産分は6分で完売!新商品の発売に向けて試作を重ねる日々
――BUSYのクイックオールインワンジェルは2022年3月に販売開始になりましたね。予約分が2分で、一般販売も6分で完売と大反響でしたが、これは予想していましたか?
【芸子】予想外でした。私としては多めに作ってしまったと思っていたんです。初回生産量についてはBUSYを作ってくれたOEMメーカーの方の「これくらいの数を作った人はこれくらいの期間で売り切っていた」という話を参考にしていたのですが、まさかの展開で。SNSの力を実感しました。
――商品を発注してから芸子さんのもとに納品されるまではだいたい4カ月かかるとのこと。初回完売はうれしい悲鳴だと思いますが、在庫コントロールは大変ですね。
【芸子】今でも読めないですね。BUSYとは関係のない日常漫画がバズったタイミングで売り上げが伸びたり、フォロワー数を持っているアカウントの方が紹介してくださって伸びたりということがあって、月によって売れる個数がだいぶ違います。
――BUSYはOEM(相手先ブランド製造)を利用されています。OEMでは最低ロット数が設定されていることが多いですよね。資金面でも個人では大変だったのではないでしょうか?
【芸子】ある程度大きなOEMメーカーだと少ない個数での発注は難しく、少量で作ってくれるところを探したんですが、その数だとこちらの予算ではできなかったので、やはり大きな額がかかってしまいます。とはいえ、OEMで作ってもらうと、自分で機械や什器を用意する必要がないですから、始めやすくはあるんです。ただ、私のようにひとりで化粧品ブランドを立ち上げるという人はほかにもいるので、競争は熾烈です。作ったのはいいけど在庫がはけないケースも多いというのはOEMメーカーの方から聞いていました。それもあっての初回の個数を決めました。売れなかったら、最悪、一生かけて自分で使えばいいかと思って(笑)。
――BUSYの開発秘話漫画は2021年6月ごろからInstagram上で連載をスタートされています。このタイミングではまだ商品は完成していなかったのですか?
【芸子】そうですね、まだ未完成でした。開発のタイミングで、だいたいのリードタイム(商品製造の工程の着手から完成までの期間)はどれくらいかかるのか、商品の処方が完成してもそこから品質実験にどれくらいかかるかというのは聞いていたので、その間に漫画を連載して、予約と販売開始を最終話のタイミングにぶつけられたらと思って描き始めました。


――BUSYの開発にあたってはさまざまな試練があったと思いますが、一番大変だったのは何でしょうか?
【芸子】気持ち的に沈んでいたのは仕事を辞めなきゃいけなかった、先のわからない時期です。オールインワンを開発すると決めてから大変だったのは、自分の持っている肩書きが通用しなかったときでしょうか。SNSを通しての仕事では、15万人のフォロワーがいるインフルエンサーとして、相手方は丁寧に対応してくださいます。対して、SNSの世界を出てみると、それまで使えていたフォロワー数というのは信用度が高くないというのをとても感じました。武器だと思っていたフォロワー数を伝えても、「今だけのSNSのフォロワー数を強みにしているんですか?」って思われちゃうんです。「一緒に仕事をしても大丈夫な人なの?」と懐疑的に見られてしまうので、その視線のなかで開発を進めていく難しさがありました。


――開発秘話漫画で、OEMのことを教えてもらったり、信用金庫からOEMメーカーを紹介してもらうという描写がありました。事業立ち上げにあたっての取引先との関係作りは大変でしたか?
【芸子】そうですね。ネットでいろいろ調べて、この会社がよさそうと思ってメールしても、返事ももらえないというのもざらにありました。やっぱり今の時代でも特にスタートアップ時は対面で会って話をしていくような、人と人のつながりがないと難しいというのは感じました。
――BUSYで出しているのはオールインワンのみ(2023年6月現在)ですが、今後ほかの商品も考えていたりしますか?
【芸子】いろいろ試作しているところです。BA時代、会社から「こんな商品が欲しい」と企画書を書くことが求められることがありました。そのときに採用されなかったもの、でも私がずっとこんなのが欲しいと思っていたものを形にしたいと思っています。クレンジングと洗顔、それから朝用のオールインワンです。こだわりが強いので、まだ完成にいたっていないのですが年内にひとつは出せたらいいなと思っています。
――新商品もオールインワンを作っているOEMメーカーにお願いしているんですか?
【芸子】私自身、たくさんの会社を知っているわけではなかったので、フォロワーの方で、OEMメーカーにお勤めで処方を組んでいたという方がどのOEMメーカーがどの分野に強いかアドバイスをくださいました。今後こういう商品を作りたいと話をしたら、個人で問い合わせしたら相手にしてくれないであろう大手のメーカーさんにつないでくださったんです。なので、現在複数社に試作してもらっている状態です。
――現在販売中のオールインワンに対しては、変更・改良は考えていたりしますか?
【芸子】本当は今の商品を作っている段階で、ボトルは真空原理を利用したエアレスボトルにしたいという希望があったんです。最後まで出し切れて、空気に触れないので酸化しづらいという便利なものなのですが、最低ロット数とコスト面から断念せざるを得ませんでした。今のディスペンサータイプのものは何百個単位で注文ができるんですが、エアレスボトルのものは数万個が最低単位になってしまいます。1個あたりの値段も桁違いに高いです。それから、エアレスボトルって高級な美容液に使われることが多いので、内容量の少ない50mlや80mlのものが多く、オールインワンに合ったサイズが見つかりませんでした。現在のディスペンサータイプだと、空気に触れる部分が多いのに加え、最後まで出し切るのが難しいので、お客様からも「時短コスメのはずなのに、最後まで出し切るのに時間がかかる」というお声をいただいていて、本当にもっともなことです。容器についてはよりいいものをずっと探していて、最近やっとこれはというものが見つかったので、準備が整い次第改善したいと思っています。
――レビューを見ていると、無香料のものを求める声もありますね。
【芸子】私自身、つわりがひどいときに香りのキツいものが駄目だったので、無香料を求めるお客様の声はよくわかります。ただ、無香料って難しいんです。化粧品ってどうしても時間が経つと酸化して香りに変化が生じてしまいます。顔につけるものだと、その変化が敏感にわかってしまうんです。特にBUSYは天然由来成分にこだわっているため、その匂いの変化が目立ちやすいというのがあります。変化を抑えるのには防腐剤を入れればいいんですが、子どもにも使えるものにしたいというのもあって、そういう処方にはしていません。それで、現在の香りになりました。無香料のものを出す線を捨てたわけではないですが、全く違う処方にするか、防腐剤を入れるかという話になるので、なかなか難しいですね。
――化粧品って好みが細分化されやすいジャンルですね。ニーズに応えるのと、作るとのバランスの難しさがあるということでしょうか?
【芸子】私は今、消費者目線が強くって、それを軸に開発しています。作る側の目線と消費者目線って全然違うので、そのギャップをどう埋めていくのかというのが難しいです。
――今後、2つの仕事をどのように回していきたいと考えていますか?
【芸子】今はSNSバブルの状態。PR案件をたくさんいただきますが、これを10年後、20年後も続けていけるか?と考えると厳しいのではないかと思っています。しかし、漫画を描くというのは自分としても楽しいですし、評価していただけるなら続けていきたいと思っているので、ほかに何か収入になる柱を用意しなければ、漫画を楽しく描けないんじゃないかと思っています。その軸に化粧品がなってくれたらいいですね。化粧品は自分が携わらなければならないこともありますが、ひとり歩きしくれる部分もあるので、BUSYを大きくしていけたら人を雇って、私は漫画を描きつつ化粧品についてはリアル店舗を構えたり、ひとりではできない規模に大きくしていけたらという野望があります。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・人に任せられるものは任せる
・ネットでの情報よりも、人とのつながりで得た情報が強いことも多い
・消費者目線と生産者目線にはギャップがある
・消費者からのニーズに応える一方で、その線引きも大事
取材・文=西連寺くらら
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