広告・宣伝なしで1万本以上のクラフトジンを販売!合成樹脂メーカーが作る新たなメイド・イン・トーキョー『ハチオウジン』の魅力とは?

東京ウォーカー(全国版)

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国内のブームと、広がっていくジン市場

ジュニパーベリーを基本として、独自に選んださまざまなボタニカルで味をつけていく【撮影=三佐和隆士】

少し前までは“バーで飲むお酒”というイメージがあったジンだが、最近では国内外のメーカーからさまざまなジンが発売されており、コロナ禍での家飲み需要の拡大や大手飲料メーカーのCMも相まってだいぶ日常に浸透してきた印象だ。

日本でのブームの一番大きなきっかけは、2015年に誕生した日本初のジン専門の蒸留所「京都蒸溜所」の存在だ。品質にこだわったクラフトジン「季の美」は世界中でヒットしている。さらに、焼酎メーカーがジン製造を始めたというのも広まるきっかけになったという。自社の焼酎と蒸留器を使って別の事業展開を、という流れだ。このようなジンの成功例ができてくることにより、新規参入がどんどん増えている。

さらに追い風となったのは2020年、大手のサントリーが発売したサントリージャパニーズジン「翠(SUI)」の存在だ。低価格で飲みやすいことを大きくプロモーション、「それはまだ、流行っていない」というキャッチフレーズのCMは大きく話題となり、これまでよりもジンというお酒が日本人の身近な存在になってきている。

「この認知の拡大によって、ほかのジンはどういうものなのかという興味へつながっていくきっかけになるので、市場はまだまだ伸び代があると感じています。まだ浸透しきってはいないので、これが『流行っている』という段階に変ったときにはうちのようなクラフトジンにチャンスが回ってくるのだと思いますね」

“地道な活動”で1万本以上販売。大切なのは「自分が届けたい人にちゃんと届いているかどうか」

高尾山の手前、狭間駅から徒歩8分ほどの場所にある東京八王子蒸溜所【撮影=三佐和隆士】

2021年12月、家業の工場の近くにクラフトジンを製造する「東京八王子蒸溜所」を設立した中澤さん。シックな外観の建物は、1階が蒸留所になっており、2階の洗練されたバースペースはガラス張りの開放的な空間。ここでは商品の説明や試飲を行ったり、下の階でジンを製造している様子を眺めることもできる。ジン作りの本場であるイギリスの蒸留所にならい、作るだけでなく“魅せる”という機能も兼ね備えているのだという。

「ただ作るための工場というだけではなく、それをしっかりプレゼンする場所もセットでやらないとうまくいかないと思ったので、そこはこだわりましたね。本業で建築資材を扱っているので、なんとなく建築の知識というのは人よりはある。図面を見たりとかそういうことはできるので、設計事務所を決めて、設計師さんをリサーチしたり、業界の付き合いのなかで紹介していただいたりして。あとは魅せる形の蒸留所を作りたかったので、インテリアデザイナーさんをオファーしました。これは私が『この人に頼みたい!』という人がいたので、設計士さんとそのデザイナーさん、私と3人で作っていきました」

2階にカウンターと飲食スペースを設け、商品の魅力を存分に伝えられる空間づくりをしている【撮影=三佐和隆士】


工場では見学会も行っており、募集するとすぐ枠がいっぱいになる人気ぶりだ。八王子市内から来る人が全体の3分の1だが、それ以外は県外や、台湾、アメリカ、オーストラリアなど国外からも訪れるという。

1階で蒸留している様子を眺められるよう設計され、細部までこだわりが詰まった施設となっている【撮影=三佐和隆士】


現在、商品は主に八王子や首都圏をメインに販売している。すでに1万本以上出荷しており、注文が徐々に増えてきているというが、聞けば広告や宣伝は行っていないとのこと。

「販路の確保は地道な活動が多いですね。こうした取材などで多くの人に知ってもらうこともありますが、一軒一軒お店を回ってバーテンダーさんとお話をするとか、興味を持っていただいた人をここでじっくりご案内するといった、地道な繰り返しが一番効いています。そのようにしてうちの考え方や商品の魅力を知ってもらって、バーテンダーさんたちはその魅力を自分たちのお客さんに説明してくれるわけです。こういう伝達がじわりじわりとつながっているという感じですね」

「宣伝とかは私自身があまり信用していないというか、興味がないんですよ。それよりも、自分が届けたいと思う人にちゃんと届いていることのほうが優先順位は高いので、結果的にその方法で効果が出ていることを考えると間違っていないかなと思います」

すでに香港・台湾・シンガポールといった海外への輸出も始まっており、また新たなブランドも開発している。中澤さんのこだわりがたくさん詰まった『ハチオウジン』をどのような人に飲んでほしいかを聞いた。

「まだクラフトジンというものを知らない方にぜひ飲んでいただきたいですね。もっとジンが身近な存在になり、みんなに飲んでもらえるようになったらうれしいなと思います」

「まだクラフトジンというものを知らない方にぜひ飲んでいただきたい」と語る中澤さん【撮影=三佐和隆士】


この記事のひときわ #やくにたつ
・届けたいターゲットと使うユーザーのことを第一に考える
・商品の魅力や思いを届けたい相手にしっかり伝えることで自然と広がっていく

取材・文=山本晴菜、撮影=三佐和隆士

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