10万バズのWeb漫画を起用。森永製菓の「欲しがりすぎない」SNSプロモーション戦略とは

東京ウォーカー(全国版)

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有名な童話を下敷きに筋肉の力でストーリーを改変するというギャグ漫画に、「Eルチン」という言葉や商品のイラストが挿入されているだけ――。森永製菓株式会社がTwitter(現『X』。以降はTwitterと表記)や自社サイト上で展開する「Eルチン筋肉童話」は一見、荒唐無稽ながら、ユーザーから大きな反響を集めたPR漫画企画だ。

PR漫画なのに「違和感なさすぎ」。大反響の森永製菓「筋肉童話」Eルチン筋肉童話 作:赤信号わたる(@GoAkashin)


Eルチンとは、プロテインの働きを強めるとされるポリフェノールの一種。森永製菓が用途特許を取得している成分で、一般にはなじみの薄い言葉だ。その成分をPRするためにスタートした企画が「Eルチン筋肉童話」で、漫画家の赤信号わたるさんの個人制作漫画「全てを筋肉で解決する」シリーズのスピンオフとして制作され、作中での製品や成分の扱いは最小限とPR漫画としては異色の形式に。にもかかわらず、「Eルチン」の認知度や成分への理解度は漫画企画実施後、前年より向上する結果を得たという。森永製菓マーケティング本部健康マーケティング部の畠中瞳さんに、ユニークなPR漫画の形にいたった背景や、SNSを活用したプロモーションの成功要因について話を聞いた。

【漫画】Eルチン筋肉童話を読むEルチン筋肉童話 作:赤信号わたる(@GoAkashin)

Eルチン筋肉童話 作:赤信号わたる(@GoAkashin)

Eルチン筋肉童話 作:赤信号わたる(@GoAkashin)


「まずは名称を」なじみの薄い成分を“筋肉童話”でPR

――はじめに、「Eルチン筋肉童話」がスタートした経緯について教えてください。
【畠中瞳】広告を実施する背景には、弊社がプロテイン製品に配合している『Eルチン』という成分をお客様に知っていただきたいという思いがありました。これまでもEルチンを浸透させるためさまざまな施策は行ってきたのですが、“成分を知っていただく”という内容ですと、情報量の多さなどからなかなか手応えのある広告施策をできていなかったというのがこれまでの経緯としてございました。

【畠中瞳】なので、今回は知っていただく範囲をすごく狭めて、まずはEルチンという名称を知っていただこうという目的から企画がはじまり、SNSで読まれる漫画の中にEルチンという言葉と、Eルチンが含まれる製品を知っていただけるような内容として『Eルチン筋肉童話』がはじまりました。

――「Eルチン筋肉童話」は、商業作品ではなく個人制作作品とのコラボというのがまず意外でした。
【畠中瞳】当初から、今回の漫画をお願いした赤信号さんの『全てを筋肉で解決する』シリーズのスピンオフを狙ってというものではありませんでした。代理店との打ち合わせでどの漫画家さんがいいか候補の作家さんをいろいろ挙げていただいて、その中でも絵に馬力があり、ぱっと見で筋肉の話をしていることがすぐ伝わる作品を描いている赤信号さんにお願いする運びとなりました。その結果として前述のシリーズの展開を広げていただくような形でPR漫画を制作していただいたという経緯になります。

――同企画がはじまるにあたり、社内での懸念点があれば教えてください。
【畠中瞳】スタートまでわからなかったのは広告の目的をEルチンという言葉の認知としたものの、それが結果としてどうつながるのか未知数だったことです。それまでは名称だけではなくEルチンがどういうものかまで伝えるような内容で制作していたところ、『Eルチン筋肉童話』内には本当に名前と製品のイラストしか出てこないので、そこはやってみないとどう出るかわからないことでした。


失敗を恐れない、成果を欲張りすぎない姿勢が結んだ目標以上の成功

――Eルチンという言葉に狙いを限定した「Eルチン筋肉童話」ですが、どのような反響・結果となったのでしょうか?
【畠中瞳】Twitterでの閲覧数が多かったのはもちろん、そこからリンクをクリックして弊社サイトにアクセスしていただいている方も相当数いらっしゃいました。

【畠中瞳】また、弊社ではEルチンの認知度について定点調査を年に一度実施しているのですが、言葉認知だけでなく、成分の内容についても知っているという層の方も前年より増える結果となりました。この施策では言葉認知に全力で振り切ったのですが、言葉を知っていただくことでサイトでの情報や検索で詳細を知っていただく機会が増えたのか、結果として成分そのものも深く知る人を増やすことにつながったのではないかなと思っています。

――言葉認知の拡大という目的の達成だけでなく、より詳細を知りたいと思うユーザーの増加も成果となったわけですね。
【畠中瞳】広告において製品の訴求ではなく成分の訴求というのはなかなか成功事例がありませんでした。ですので、いわゆる勝ちパターンのようなものもなかなか確立できていなかったのですが、今回のEルチンにおいては成分の認知が広まったというのは大きな成功事例だと認識しております。まず言葉認知という形ですそ野を広げると、そこから深く興味を持っていただく方は出現しうるというというのが今回の漫画施策での学びだと思います。

――「Eルチン筋肉童話」では、成功の要因はどんなところにあったとお考えでしょうか?
【畠中瞳】どの施策においても欲しがりすぎないと言いますか、スタートの時点で広告の目的を何とするかを明確にすることは大事にしています。今回で言うと、『Eルチンという言葉の認知』に振り切って、それ以外は求めないというスタンスを最初に決めて徹底したことで、わかりやすいPRとなって目標としていた以上のものを得られたと思います。

【畠中瞳】また漫画の内容で言えば、童話というベースも効果があったと考えています。当初は『童話はお客様が皆知っているからわかりやすい』ぐらいの見解だったんですが、いざ童話以外のジャンル、例えばオリジナルストーリーで展開しようとすると内容を新たに読み取る分、そのほかの情報が入りにくくなると気づいたんです。童話は内容がわかっていてすんなり読めたからこそ、全体の情報量の底が下がってEルチンや製品が浮き立ったのではないかという仮説を持っています。

――実際に漫画の中で広告の情報量は絞られています。完成にいたるまでの過程で課題はありましたか?
【畠中瞳】漫画は赤信号先生がラフをまず描いてくださり、そこに対して法令上表現できない部分は弊社でチューニングさせていただきながら漫画を完成させていくというフローでした。あくまで法令遵守の範囲が前提ですが、薬事に関わる部分については『この表現はいきすぎでは』『これならいけるんじゃないか』と、マーケティング部と薬事の確認部署との間でせめぎあいはありました。最終的にはどなたが読んでもEルチンについて誤認を与えることなく、ストーリーを楽しんでいただける内容になっているかと思います。

――また、柔軟なアイデアを生み出す秘訣や土壌があれば教えてください。
【畠中瞳】担当が『これはいい』と思って提案することは、ちょっと突拍子もないようなアイデアであっても頭から否定されることはあまりなく『まずやってみたら?』という雰囲気が根底にあるかもしれません。弊社では失敗を恐れずトライすることを奨励しておりまして、新しい提案もとりあえず出してみる、やってみないと結果はわからないのでとりあえず試してみるという空気はあります。

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