10代の“ゆらぐ心”に寄り添う飴。「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」でカンロが目指す未来とは?

東京ウォーカー(全国版)

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こだわったのは「透明感」

無垢な透明感にこだわり、120回もの試作を経て完成した【撮影=三佐和隆士】


ーーターゲット層の“感情”という言語化が難しい部分にフォーカスした商品ですが、開発のなかで特に苦労した、大変だったことはありますか?
【河野亜紀】そうですね。ひとつは先ほども出た飴の透明度で、最初から「ハートの形で透明感のある飴」というところはキーワードとして大事にしていました。最初のサンプルを出したときに「もっと透明がいい」と言われたり、例えばカンロの技術で飴の中にジュレなどを入れることもできるというお話もしたのですが、そうすると透明感が減ってしまうから何も入れないほうがいいというように、とにかく無垢な透明感というところをオーダーされました。本来、試作は多くても30回くらいなのですが今回は120回ほど試作を重ねて、レシピや製造条件などを細かく調整して実現しています。そのかいもあり、彼女たちからも「すごくかわいい!」という太鼓判をいただき商品が完成しました。

ーー形について、なぜハート型を採用されたのでしょうか?
【河野亜紀】まず座談会の時点でハート型をアイデアとして出してくれる方が多かったことと、やはり写真を撮る際のポーズだったりSNS上のいいねボタンだったり、彼女たちの生活の中にハートが溢れていると感じます。また、彼女たちと話をしているとやはりハートがほかのモチーフよりも一段階飛び越えて特別な存在であり、「“映え”といえばハート」という意識が結びついていて、これは飴としても取り入れるべきモチーフだろうということでハート型に決まりました。

ーー味もCDと一緒に決めていったのですか?
【河野亜紀】企画会議では基本的に私たちのほうでいくつか案を出してそこに彼女たちの感覚を入れていくという流れの繰り返しで、味もこちらからいくつか提示をした中で、やはり長く愛されるためにはおいしいけれど食べ飽きない味だったり、どこか懐かしさを感じられることが大事だという意見をもらい、それをベースにレシピに落とし込んで味作りをしていきました。

【河野亜紀】「どんな味がいいですか」と聞いてしまうと、フルーツ味みたいな答えになってしまうのですが、食べ飽きない味、どこか懐かしい味、といったワードや、あとは食べることによってどのような気持ちの変化が起きるかということも今回は大事にしています。そういうワークも通したなかで、「クリアな気持ちになる」というベネフィットを採用して味作りを行っており、心が透明になる、洗われるという感覚で、それによって前向きになるということを目指しています。

飴に無関心な人にも振り向いてもらえるよう「あえて飴感を落とすことにもチャレンジしている」とのこと【撮影=三佐和隆士】


ーー舐めるとクリアな気持ちになるというのは、商品名の『透明なハートで生きたい』にも表れていると感じます。どのようにしてこの商品名に決まったのでしょうか?
【河野亜紀】商品名に関しても私たちプロジェクトチームから10案くらい出して、彼女たちにどれがいいか、その理由は何かという問いを投げて人気が集まった案に着地した流れなのですが、満場一致で『透明なハートで生きたい』に決まりました。飴らしくないところがいいと思っていて、飴を食べなくなってしまった人、飴に無関心な人、そういった人たちにも振り向いてもらえるようにあえて飴感を落とすということにもチャレンジしています。

【河野亜紀】また、彼女たちに対して「青春楽しい!」みたいな、ちょっと無敵なイメージがあったのですが、実際に話を聞いてみるとすごく心が脆くて、楽しかった次の瞬間にはもしかして私一人ぼっちなんじゃないかと感じてしまうこともあるとか、感情のゆらぎが大きいところがあり、「そんななかでも自分らしく生きたい」という意志を込めた商品名となっています。

ーー脆さやゆらぎというのも、深掘りして出てきたものなんですね。
【河野亜紀】ワークでなりたい気持ちを12個くらい挙げてグルーピングしていくなかで、つながりや安心、愛といったワードが出てきたのですが、その背景として、SNSではつながっているけれどコロナ禍もありリアルでのつながりが薄かったというところがさらに加速して、デジタル上だけではなく本当のつながりや愛を感じたい、安心したいという気持ちを強く持っているというのは新たな気づきでした。そのためパッケージについても、青空や晴天ばかりではなく少し陰っているくらいがいいとのことで空模様にバリエーションを持たせました。

ーー販売後の反響はいかがでしたか?
【河野亜紀】まず、販売面でいうと今回は数量限定での発売ではあったのですが、発売2週間で在庫切れになるお店も結構あり、好調でした。クチコミとしてはやはりこの商品名に惹かれたとか、パッケージ面でも話題になりました。私たちはシャボン玉やお花のデザインが人気かなと思っていたのですが、意外とプールが人気だったり、数種類を集めてくれていたり。『ピュレグミ』などではカラーバリエーションを多く展開していて集めてくれる方もいるので、新商品でも同様の行動が作れたというのはいい成果かなと思っています。また、味の評価も非常によくて、CDと作り上げた食べ飽きない味というのがちゃんと伝わったのかなと感じています。

【河野亜紀】SNSで空にかざして撮った写真を上げてくれたり、ストーリーズにアップしてくれる方も多く、メンションがないと気がつかないので数として拾っていくことは難しいのですが、今回はカンロのアカウントをメンションして投稿してくれる方が結構いてすごくうれしかったですね。普段飴を買わない方にも手に取ってもらえたなと感じるクチコミとしては「思ったよりも小さかった」とか「探すのが大変だった」というのがあり、そういう方にとっては飴のパッケージの進化というところもこの商品をきっかけにお伝えすることができたかなと思っています。

飴によって“時間が濃くなる”体験を作っていきたい

7月より発売の袋入りタイプのポイントは「個包装である」こと。友達や家族とのコミュニケーションを活性化する一助に【撮影=三佐和隆士】


ーー7月から「透明なハートで生きたい」の袋入りタイプが発売ということで、詳細を教えてください。
【河野亜紀】袋入りタイプは3つの味のアソートになります。1つはコンパクトタイプの際に好評だった「CLEAR(ホワイトソーダ味)」、あとは「KYUN(ピンクグレープフルーツソーダ味)」と「CHILL(ハニーオレンジソーダ味)」の3種類が入っていて、これらは飴を舐めることによってなりたい気持ちを表現しています。すべてソーダがベースになっているので飴の中に青い筋が入っているのですが、そこに黄色やピンクをそれぞれ組み合わせています。この色と味に関してもCDの感覚を入れ込んでいて、彼女たちがチルい、エモいと感じるお気に入りの写真を提示してもらい、そこから色味を抽出して気持ちの移りゆく感じを表現できるよう作りました。

ーーチルい、エモいといった言葉だけだと、なかなか感覚の理解が難しいですね……。
【河野亜紀】なかなかそこの感覚がつかめなかったので、お気に入りの写真を見ながらどういう感覚なのかを引き出していった感じですね。そうすると夕焼けや、道路を走る車の光が流れるような写真といったちょっとまどろむ感じのものが多く、そのイメージをもとに言語化していきました。

ーー前回と異なり、袋入りサイズにしたというのは何か理由があるのでしょうか?
【河野亜紀】今回のポイントは個包装であるという点で、飴を渡すことでつながりを物理的に作るといいますか、彼ら・彼女らのリアルなつながりをお手伝いすることができたらいいなと思っております。前回のコンパクトタイプはどちらかというとパーソナルユースで個人に寄り添う形でしたが、今回はお友達や家族とつながる一助になると考えています。

ーー今回はZ世代の飴の原体験というところがメインですが、ほかの世代の原体験について特徴などはありますか?
【河野亜紀】ほかの世代について詳しくリサーチしたというわけではないですが、やはり現在の飴の主要購買層である40代以上においては飴がご褒美であったり、遠足などのキラキラした思い出の中で友達と交換したり、うれしいものの象徴だったのではないかなと思っています。そうした原体験があることで今も購買につながっていると思うので、Z世代の方々にもそういった原体験を作れたらいいなと考えています。

ーーでは、現代の「飴」の市況、トレンドについて教えてください。
【河野亜紀】現在はのど飴によって復調してきている状況です。外出の需要が増えてきており予防意識が高まっているなどの理由から、のど飴が伸びています。また、コンパクトサイズの展開により若い女性にも「飴=かわいい」というように意識が少しずつ変化してきているため、今後の飴市場にも期待ができるのではないかと考えています。

ーーありがとうございます。最後に、「透明なハートで生きたい」を通じて成し遂げたいことや、今後のビジョンを教えてください。
【河野亜紀】「透明なハートで生きたい」は“飴の原体験を創る”という目的のもと作られた商品ですので、やはりこのコンパクトタイプ、袋入りタイプというような単発の商品のみでは成し遂げきれないと思っております。そのため今後も引き続き商品展開をしていくことで、飴がキラキラした体験の中に入っていき飴によって時間が濃くなるという体験作りをしていきたいと思っています。

「飴がキラキラした体験の中に入っていき、飴によって時間が濃くなるという体験作りをしていきたい」【撮影=三佐和隆士】


この記事のひときわ #やくにたつ
・ターゲットと対話し深掘りすることで新たな発見を得ることができる
・妥協しないプロダクト作りが共感を生む
・中長期的なユーザーの拡大には、単発で終わらず継続することが大切

取材・文=山本晴菜、撮影=三佐和隆士

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