コーヒーで旅する日本/関西編|お客本位の姿勢はそのままにコーヒーの質を追求。「Coffee Temple」が示す、進化した喫茶店の形

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

木目調のシンプルな空間は、幅広い世代がくつろぐ姿が見られる


関西編の第68回は、神戸の中心・三宮で半世紀続く老舗「Coffee Temple」。早朝から、界隈に勤める人々でにぎわう、街のオアシス的な存在だ。17年前に家業を継いだ2代目の田和さんは、2009年にスペシャルティコーヒーの展示会に参加したのをきっかけに、大きく変化するコーヒーの新たな波に刺激を受け、知識や技術を深めることに邁進。一方で、長年のお客の嗜好とのギャップをいかに近づけるかに腐心してきた。コーヒーシーンの劇的な変化と街の喫茶店に求められる役割、その間で模索を続けた田和さんがたどり着いた、共存の形とは。

店主の田和さん


Profile|田和佳晃 (たわ・よしあき)
1979年(昭和54年)、神戸市生まれ。会社員を経て、2006年から「Coffee Temple」の店長として家業を継承。2009年にSCAJに参加したのを機にコーヒーへの関心を深め、コーヒーマイスター資格の取得を皮切りに、競技会にも出場。ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ2012 5位入賞、ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ2018 セミファイナリスト。2016年より、SCAJブリュワーズ委員、競技会審査員も務める。2018年に、自店の焙煎所をリニューアルし「Temple Coffee Roaster」としてリニューアル。豆の販売に力を入れている。

“店に求められていること”に気付いた2代目の大変身

店はオフィスビルの1階。創業時は隣のビルに入っていたが、震災後に移転

市役所をはじめ、多くの官庁や企業、商業施設が集まる、神戸の中心・三宮で、1972年から続く「Coffee Temple」。早朝のモーニングに始まり、ランチタイム、食後のコーヒーブレイクと、店内は界隈に勤める人々が入れ代わり、立ち代わり。いまや見ることも少なくなったが、コーヒー片手に一服する姿も、ここでは日常のこと。気取らぬ雰囲気はまさに、オフィス街のオアシスといった趣だ。

店名のTempleは、お寺のように誰もが集まれる場所に、との意味合いもあるが、実はもう一つ由来があるとか。「元々は、先代の伯母が栄町で喫茶店を始めたらしいのですが、叔母がアメリカの女優、シャーリー・テンプルのファンだったからとも聞いています」とは、店主の田和さん。ハイカラな名づけのルーツに、神戸らしさを感じさせる。

カップは震災を機に一新。京都にある陶器の老舗に依頼したオリジナルの有田焼を


田和さんが2代目として店を継いだのは、2006年から。ただ、喫茶店が家業だからといって、コーヒー好きだったかというと、さにあらず。むしろ料理が好きで、調理師免許も持つほどだが、コーヒーには関心がなく、飲むこともほとんどなかったという。「店は継ぎたいと思っていましたが、当時は、料理を主にした店をしたかった」と田和さん。最終的に、先代に諭されて家業に入ったものの、はじめの5、6年はコーヒーに関心が湧かなかったという。

いまや少なくなった、オリジナルのマッチも健在


当初の思惑を諦めきれない時期が続いたが、店に立つうちに徐々に、この店に求められていることに気付く。「うちに来るお客さんは、料理は求めていなかったんですね。それならば、コーヒーがおいしい店にならないと。元々あるリソースを生かさないともったいない、と思い直したんです」。この心境の変化から、一気にコーヒーに邁進し始めた田和さん。そこで大きな転機となったのは、2009年に初めて訪れた、日本最大のスペシャルティコーヒーの展示会・SCAJでの体験だった。それまでにない、多彩な豆の個性と、コーヒー本来の酸味を生かした浅煎りの風味にフォーカスした、新たなコーヒーの潮流の影響に大きく感化された。

極深煎りのブレンドを20杯立てネルドリップで淹れるアイスココーヒー500円


以来、2010年にコーヒーマイスター資格を取得したのを皮切りに、生豆商社で行われるCOEのカッピングや競技会に参加するなど、人が変わったようにコーヒーを追求し始めた田和さん。中でも、2012年、第1回の開催だったジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ(JHDC)では、初出場ながら決勝に残り5位入賞。抽出技術で高い評価を得た。その後、JHDCでの成績は振るわなかったが、それでも、「大会に出るたびに、結果に対して疑問が湧いてきて。それを解決するための理由を知りたかった」との思いから、今度はジャッジとして競技会の運営に参加。続けるうちに、多くの気付きを得たという。「ハンドドリップの大会は使う原料が同じなんですが、人によって淹れ方が変わるだけで、味が変わるのがおもしろいところ。大会運営に参加する中で同業の知人も増えて、他の地域の店主さんから、各地のお客さんの嗜好やコーヒー事情を聞けたのも、貴重な経験でした」

店内にあるコーヒーの木は毎年、実を付ける


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