社長のとっさのひと言が商品名に!?名古屋名物「つけてみそかけてみそ」の誕生秘話と「名古屋の各家庭に1本は常備」とまで認知されるようになったワケ

東京ウォーカー(全国版)

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東海地方出身の人であれば、「つけてみ~そ かけてみそ♪」というフレーズに聴きなじみのある人がほとんどではないだろうか。これは愛知県清須(きよす)市に本社を構える、ナカモ株式会社が製造・販売する味噌だれの調味料であり、名古屋名物として知られる「つけてみそかけてみそ」のCMソングだ。

“万能調味料”をうたっており、「味噌カツ」や「どて煮」といった「名古屋めし」の味噌だれとしてはもちろん、今の肌寒い季節にぴったりな「おでん」などとの相性も抜群だ。そしてそのユニークな商品名は、地元・名古屋の人々だけでなく、いまや全国的な知名度を誇り、テレビ番組などで多くの著名人が話題にしているのを見たことがある人もいるかもしれない。現在は、東名阪を中心に販売しているとのことだが、いかにしてここまでの認知度を得るにいたったのだろうか。

そこで今回は、つけてみそかけてみその誕生秘話や広く知られるようになったきっかけに迫るべく、ナカモ株式会社(以下、ナカモ)代表取締役社長の杉本達哉さんに話を聞いた。

ナカモ株式会社代表取締役社長の杉本達哉さんと、マーケティング部営業企画担当の市川りのさん【撮影=西脇章太】


社内では反対の声も!しかし、発売直後から人気だった「つけてみそかけてみそ」

ナカモが創業したのは1830年のこと。名古屋城のお膝元である名古屋市西区堀詰(現・幅下)で産声を上げた。その後、自社の麹を使用し、甘口の低塩の白みそ「西京白みそ」を作り、名古屋市民に広めていった。そして時代は流れ、1994年に発売したのが「つけてみそかけてみそ」だ。

「『つけてみそかけてみそ』の発売以前は、味噌カツや田楽用の味噌だれを作っていました。ただ、当時はキャップもないスタンディングパウチの商品しかなく、最初は売れていたようですが、徐々に売れなくなっていきました。そのころ、弊社内ではおでんの味噌も味噌カツのたれも似たような味だったので『一緒にしちゃえばいいのでは?』という声が上がっていました。また、同時期に他社さんから発売されていた『卓上醤油』の反響を受けて『机の上に置いて、気軽に使ってもらえる商品がほしいよね』という、主に2つのアイデアが出ていました」

【写真】「つけてみそかけてみそ」のもととなった商品【画像提供=ナカモ】


社内の一部では「こんな甘すぎるものが売れるわけない」といった声もあったようで、ひとまずスーパーでテスト販売することに。そしてナカモの営業員が店舗で陳列していると、瞬く間に売れていった。これについて杉本さんは「もともと家庭で作っていた調味料を手軽に購入できるようになったことが、ヒットの要因だったのかなと思います」と語る。

発売当時の「つけてみそかけてみそ」(1994年)。開発段階で「西京白みそ」を加えることにより、上品な甘さと味のまとまりを実現【画像提供=ナカモ】


2005年「愛・地球博」のチケットプレゼントのキャンペーンで損失!

1994年の発売から4年ほどは、順調に売り上げを伸ばしていたそうだが、次第に同業他社を含め、商品の売れ行きは頭打ちになっていった。そして発売から10年が経過したころには、スーパーの棚替えの際に「つけてみそかけてみそ」が撤去される危機もあったようだ。「引き続き置いてもらうように、土下座して頼みこんだこともありました」と杉本さん。

「ちょうどそのころ『愛・地球博』が開催されるときだったので、これは勢いに乗るしかないと思い、一念発起。マスコットキャラクターのモリゾーとキッコロのマークのライセンスを購入し、さらに売り上げの一部を運営側に渡す契約で、愛・地球博のチケットをプレゼントするキャンペーンを開始しました。ただ、最初は前年割れしてしまい、正直クビを覚悟しました...。ですが、愛・地球博の来場者数が急激に増加したことに伴い、商品も売れ始めたんです」

愛・地球博開催時期の商品パッケージ【画像提供=ナカモ】


同時に各メディアが「名古屋めし」を取り上げ、お土産物として「つけてみそかけてみそ」が紹介されたことがきっかけで、爆発的なヒットにつながった。「ただ、最も弊社と商品のことを広めてくれたのは、名古屋出身の著名な方々です」と話す杉本さん。愛・地球博の前後あたりから、主に名古屋出身の著名人が、全国ネットのテレビ番組などで商品に関する話題をあげていたそうで、最終的には「愛・地球博チケット」入りの商品を追加で製造するまでになった。

社長のとっさのひと言が商品名に!?多くの著名人が話題に

かくして、名古屋名物と知られるようになった「つけてみそかけてみそ」。メディアにはどんな料理や食材にも合う万能調味料として紹介される傍ら、そのユニークな商品名がクローズアップされることも多いが、一体どのような経緯で名づけられたのだろうか。

「ずっと商品名が決まらず煮詰まっていたそうで、ある開発会議のときに先代社長だった父が、突然『ちょっと聞いてくるわ!』と言って部屋から出ていったそうです。そこから父は、大学に登校しようとする私のところに来て『商品名が決まらないんだ。何かいい名前はないか?』と聞いてきたので、私は『“つけてみそ”みたいな感じでいいんじゃない?』って授業に遅れないよう急いでいたので、とっさに出てきた言葉を答えたんです(笑)。すると当時営業だった人が、そこに『かけてみそ』を加えて、そのまま決定しちゃったんですよね」

現行から2代前の商品パッケージ。変わらない味を提供し続けられるよう、毎度細かな味のチェックを行いながら製造している【画像提供=ナカモ】


前述のとおり、愛・地球博での大ヒットや今日の話題性を考えると、杉本さんの何気ないひと言が、その後にもたらした影響は計り知れない。杉本さんは「ちなみにネーミングの謝礼金として3万円もらえました。とてもうれしかったですね」と当時を振り返る。発売後すぐに開始した「つけてみ~そ かけてみそ♪」というフレーズでおなじみのCMは、東海地方出身の人をはじめ、多くの人たちの印象に残り、消費の認知拡大に大きく貢献している。

「つけてみ~そ かけてみそ♪」のフレーズでおなじみのCM。東海地方出身の人であれば口ずさめるはず【画像提供=ナカモ】

現在のCMで5代目なんだそう【画像提供=ナカモ】


認知を活かしたプロモーションを!ナカモが掲げる将来のビジョン

愛・地球博の大ヒット以降、テレビやSNSで話題に取り上げられ続けていることもあり、売り上げは年々右肩上がりになっている。しかし、ナカモは「つけてみそかけてみそ」をはじめ、商品のプロモーションを積極的に行っていないというが、その理由とは?

「何かしら宣伝していただいた方にはお礼をしますが、こちらからプロモーションはお願いしないことにしています。ステルスマーケティングみたいになってしまうのは嫌ですからね。また弊社は、顧客目線からは手に取りやすい商品づくりを、他企業やメディアからは声をかけやすい企業であるよう、常に心掛けています。そのため、たとえばコラボレーションの際なども、相手側に規制を求めたりはしません」

現行よりひとつ前の商品パッケージ【画像提供=ナカモ】


最後に、今後の展望として「つけてみそかけてみそ」は、ナカモの商品であることを根づかせたいと考えているのだそう。「ほかの地域出身の方が『つけてみそかけてみそ』と言っているものが、実は他社さんの味噌だれだったなんてこともけっこうあるので(笑)」と杉本さん。これからは、商品パッケージで認識してもらえるような商品づくりを実施していくとのことだ。

「さらに言えば、商品名からして取っ付きやすいので、もっと遊びを入れていきたいんですよね。たとえばストラップ型にして、ミニチュアの『つけてみそかけてみそ』を、キーホルダーのようにして持ち運べるものだったり、注ぎ口のところをペンの形にして絵が描けるような仕様にするなど、いろいろと考えています」

現行の商品パッケージ【画像提供=ナカモ】


「つけてみそかけてみそ」をはじめとする万能みそダレは、今や「名古屋の各家庭に1本は常備」と言われるほどに普及しているそうだ。またSNSの投稿を見ると、東海地方出身でない人たちが購入している様子も多く見られ、日本中に広く認知されていることがうかがえる。この流れが続けば「日本の各家庭に1本は常備」と言われる時代が来るのも、そう遠くない未来なのかもしれない。

この記事のひときわ #やくにたつ
・既存の商品の形態を応用して、独自の商品を生み出す
・人目を引くユニークな商品名で、コストをかけず広報活動が可能に
・多くの人たちに親しんでもらうため、親しみやすい企業・商品づくりを意識する

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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