コーヒーで旅する日本/関西編|コーヒーに触れる場をより広く、楽しく。新たなファンを引き寄せる「LiLo Coffee Roasters」の懐深い提案

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

にぎやかなアメリカ村にあって、「LiLo Coffee Roasters」にはお客の姿が絶えない


関西編の第70回は、大阪市中央区の「LiLo Coffee Roasters」。心斎橋・アメリカ村で開店した小さなスタンドに始まり、今では3店を展開。日々、国内外から多くのお客が訪れる、人気コーヒーショップだ。店主の中村さんは、スペシャルティコーヒーとの出合いを経て、ヘアサロンを営む旧友からの誘いを機に、役者からロースターへと転身したユニークな経歴の持ち主。かつてのコーヒー専門店の堅苦しいイメージを払拭する、明るくカジュアルな店作りで、新たなファンを増やしている。「まだコーヒーの魅力を体験してない人に、“飲んでみようかな”と思ってもらえる提案をしたい」という中村さんが、先々に思い描く“スペシャルティコーヒーの民主化”とは。

店主の中村さん


Profile|中村圭太 (なかむら・けいた)
1981年(昭和56年)、大阪府寝屋川市生まれ。高校時代からお笑いが好きで、専門学校在学中に演劇の世界に魅了され、役者として活動。その傍ら、10を超える多種多様な接客業を経験する間に、スペシャルティコーヒーとの出合いを経てコーヒーの世界に傾倒。ヘアサロンを営む高校時代の友人に誘われたのを機に転身し、2014年、心斎橋に「LiLo Coffee Roasters」をオープン。その後、姉妹店として、2018年に「リロ珈琲喫茶」、2020年に焙煎所「LiLo Coffee Factory」を相次いでオープン。現在、ヘッドロースターとして豆の焙煎を担い、さまざまな競技会のジャッジも務める。

同級生との縁をきっかけに、飛び込んだコーヒーの世界

「LiLo Coffee Roasters」は、気軽に立ち寄れるスタンドスタイル

大阪・ミナミの繁華街・心斎橋の中でも、関西のストリートカルチャーの発信地として知られるアメリカ村。1970年代、アメリカ西海岸から仕入れる古着や雑貨、レコードの店が集まった一角は、いまや若い世代と外国人観光客が入り混じり、独特の異国的な雰囲気が満ちている。「LiLo Coffee Roasters」が店を構えるのは、にぎわいが絶えないアメリカ村の真っ只中。小さなスタンドは、国内外のお客が入れ代わり立ち代わり。開店から9年、今では界隈の憩いのスポットとして定着している。

「開店した頃は、心斎橋界隈でコーヒースタンドと呼べる店は、まだほとんどなかったと思います」とはヘッドロースターの中村さん。実は、「LiLo Coffee Roasters」は、同ビルの階上にあるヘアサロン・LiLo in veveのコーヒー部門としてオープン。オーナーの堀田さんと中村さんは高校時代の旧友でもあり、異業種コラボのコーヒーショップとしても先駆け的な存在だ。

中村さんのコーヒーとの縁の始まりは、20代後半。当時は役者として舞台に上がる傍ら、芸の肥やしにと、さまざまな接客業を渡り歩いていた頃。その仕事の合間に何気なく立ち寄ったコーヒー店でのことだった。「その時、自分にとってコーヒーは、濃くて苦いパックのアイスコーヒーのイメージでした。でも、その店で飲んだのは全くの別物。後々、スペシャルティコーヒー専門店だったとわかったんですが、これを機にコーヒーに幅広い個性があることを知って、一気にハマったんです」

ドリップコーヒー500円~には、オーダーした豆のスペックを記したカードを添えて提供


以来、自ら抽出することはもちろん、手網焙煎に挑戦したりセミナーに通ったりと、未知なるコーヒーの世界を拓いていたちょうどその時。「自家焙煎のコーヒー店をやらないか?」と声をかけたのが堀田さん。堀田さんもまた、サロンの接客の際にコーヒーを提供し始めたのを機に関心を深めていた。「コーヒーに興味を持ちだしたのは、2人ともまったく別々のルートからでしたが、偶然タイミングが合ったんですね」と中村さん。焙煎機など扱ったこともなかったが、不安よりも新しいチャレンジへの楽しみは大きかった。旧友の誘いに応え、ともかくも焙煎の経験を重ねるべく、開店前の1カ月間は焙煎機を設置した店に住み込み、一心に豆を焼き続けた。 

コーヒー専門店の堅苦しいイメージを払拭したいと、2014年の開店時から一貫して、金髪・メガネ・ひげのスタイルで店に立つ中村さん。アメリカ村という場所柄もあるが、キャッチーな出で立ちと明るくカジュアルな雰囲気は、当時のコーヒーショップとしては異彩を放つ存在だった。ただ当初は、目立つがゆえに、時に心無い評価を受けることも少なくなかった。

注文に迷うお客には会話を通して豆をリコメンド。フランクな接客と豊富な知識によるカウンセリングで好みのコーヒーとの出合いを演出する


「味については、最初は焙煎度の幅を極端に広げていたというのもあって、特に浅煎りのコーヒーは酸っぱいという反応もありました。何より、スタンドのスタイルに馴染みが薄く、一見、派手で新奇な雰囲気と、コーヒー専業ではないというイメージが強くて。良くも悪くも、目に付いたんだと思います」。先駆者に苦労は付き物。従来のコーヒー専門店らしからぬ、肩肘張らない親しみやすさは「LiLo Coffee Roasters」の魅力だが、浸透するまでには時間を要した。それでも、数々の舞台と接客業で鍛えた中村さんゆえ、ネガティブな声にも真摯に向き合い、丁寧にコミュニケーションを重ねることで、少しずつファンを増やしていった。

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