コーヒーで旅する日本/九州編|1号店開業から福岡市東エリアで愛されて36年。「香椎参道Nanの木」が目指すのは“まちのオアシス”
東京ウォーカー(全国版)
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第85回は福岡市東区にある「香椎参道Nanの木」。1987年(昭和62年)に無店舗で「珈琲豆屋」を開業し、オフィスをメインターゲットとした宅配販売からコーヒーの商いをスタート。その後、東区若宮に店舗を構え、コーヒー豆の一般家庭への小売りを始めたが、その当時は自家焙煎ではなく、仕入れたコーヒーが商材だった。

「せっかくコーヒーを売るなら自家焙煎に挑戦してみよう。そんな軽い気持ちで焙煎に着手しました」と話す創業者の芹口健二さん。これが「Nanの木」が生まれるきっかけ、芹口さんのロースターとしての第一歩となる。たくさん苦労もしながら、それでもより多くの人の暮らしに根付くコーヒーを発信し続け、福岡の自家焙煎店の先駆け的な一店として歴史を刻んできた「Nanの木」。どうやってファンを増やし、規模を拡大してきたのか。純喫茶とも、専門店とも違う、“まちのオアシス”を目指す「Nanの木」の魅力を探る。

Profile|芹口健二(せりぐち・けんじ)さん
1953年(昭和28年)、熊本県・高森町出身。商店を営む両親のもとに生まれるが、父親を早くに亡くし、15歳から農業、牛乳配達などさまざまな仕事を経験。高校卒業後、かつて九州一円に店舗を展開していた大手スーパーマーケットに入社し、部門担当、マネージャー、バイヤー、店長と着実にキャリアを重ねる。もともと30歳になったら自分で商売をしたいと考えていたこと、子どもの誕生・成長、転勤のタイミングなど、さまざまな要素が重なり、1986年(昭和61年)に退職し、1987年(昭和62年)1月、コーヒー豆の卸値販売を主体とする「珈琲豆屋」を創業。1992年(平成4年)に自家焙煎に切り替える。2002年(平成14年)、「香椎参道Nanの木」を開業。現在は会長職に就き、焙煎をメインに行う。
「珈琲豆屋」「Nanの木」ともに地域の暮らしに根付いて

「Nanの木」といえば、福岡市内、特に東エリアでは知られた自家焙煎店。その理由は東区若宮の「珈琲豆屋」から数えると35年以上という店の長い歴史はもちろん、ブレンドとストレート合わせて常時およそ50種という多彩なコーヒー豆を用意していることが大きい。しかも最も手ごろなものだと、2023年12月時点でも100グラム500円台の商品を展開していたり、日常的に買い求めやすい価格で地域に根ざす。

「スペシャルティコーヒー、有機栽培コーヒーなど質の高い生豆を仕入れ、日々少しずつ焙煎するのは当然。創業当時から鮮度の良さを大切に店を営んできました」と話す芹口さん。今では広く知られた自家焙煎店になっているが開業当時、客足は鈍く、芹口さんらが香椎駅付近にチラシ配りに足を運んでいたそうだ。
「今でこそわざわざ足を運んでいただけるようになりましたが、開業した当時、このあたりは人通りもほぼなく、集客に苦労しました。今よりも小さな店舗でしたが、カフェ併設のスタイルとし、コーヒーとケーキのセットをワンコインといった手ごろな価格で販売。そうやって少しずつ当店のコーヒーの味わいを知っていただくことでファンを増やしていきました」

今ではコーヒーはもちろん、焼き菓子、パンまで店で手作りし、ホットサンドやフレッシュトマトのピザ、サンドイッチ、鶏肉とトマトのスパイスカレー、特製ハンバーグといったフード、季節の果物を使うスイーツも充実。もしかすると自家焙煎コーヒー店としてではなく、カフェというイメージが強いという人も多いかもしれない。
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