酒ガチャ、推し色のお酒、アイス専用果肉酒……5周年を迎えたクラフト酒のECサイト「クランド」が躍進を続ける理由とは
東京ウォーカー(全国版)
徹底した「お客さまのために」というバリュー
クランドの名前が広く知られるようになった企画として「酒ガチャ」がある。お酒をランダムに詰め合わせたセットで、単品で購入するよりもお得。時には、単価1万円以上の高額商品が入っていることもあるんだそう。ECサイトとしての売上割合も酒ガチャが多いという。
「ECサイトを始めたときに、さまざまな販売方法を参考にしていこうということで、福袋のやり方を取り入れたのがきっかけです。2018年の年末に『初売りKURAND福袋』という名前で販売を開始しました。これに対して、お客様から『お酒がランダムで届くということは“酒ガチャ”だ』という感想がSNSで上がるようになりました。“ガチャ”というキャッチーなワードをいただいて、その後“酒ガチャ”という名前で売り出すようになったんです。コロナ禍で苦しい思いをしている酒蔵を応援しようという建て付けでVtuberとコラボした企画もヒット、2020年6月にはX(旧Twitter)でのPR漫画がバズりまして、それで一気に知られるようになりました」
酒ガチャ開始当初は、梱包担当者が目視で詰めていたため完全なランダムだったが、現在は酒のジャンルを指定したり、逆に苦手な原材料を使用した酒を除外できるようになっている。

「購入数が増えていったこともあって、アナログなやり方では対応しきれなくなり、KURAND独自のシステムを開発しました。また、日本酒でも辛口はダメで甘口がいいとか、日本酒は飲めないけど甘いお酒なら飲めるとか、ある程度の指定ができたら買うのに、というような声がお客様から届くようになりました。そうしたお客様の声をひとつずつ反映していって、今では、届くお酒の種類を1本ずつ指定できたり、アレルギー食品が含まれたものを除外できたりなど、カスタマイズできるようになりました」
酒ガチャというネーミングも消費者からの声を反映しているように、KURANDは消費者の想いを大事にしている。
「私たちのバリューの中には『お客さまのために』というのがあるんです。私たちの事業はお酒の業界のためにやっているのではなくて、あくまでもお客様においしいお酒を飲んでもらうためのもの。業界のことだけを考えていたら、酒ガチャも既存の商品に違うラベルを貼り付けて、お客様の要望も聞かずに販売するということもできますが、そうではなく、お客様が飲みたいと思うお酒をどうやってお渡しするかを第一に考えています」
ほかに、KURANDでは「少量多品種」を意識した商品作りをしているという。
「新商品を出すときは、できるだけ少ないロットで作ってもらっています。トライアンドエラーを経て新しい商品をなるべく早くたくさん発売することで、お客様がいつクランドのサイトを訪れても新しい商品が並んでいる状態を作り、常にワクワクする売り場作りを心がけています。需要に応じて追加生産することもありますし、人気が出たものはひとつのブランドとして育てていくこともします」
KURANDの「少量多品種」の姿勢は、酒造メーカーにとってもプラスに働いているという。


「保守的な業界ですので、酒蔵が新しい銘柄を出そうとしても、できたお酒を酒屋さんがすべて買ってくれるという保証はありません。結局、酒蔵も売れる商品だけを作り続けるということになってしまうので、少量多品種をモットーとしたクランドは酒蔵にとって挑戦の場として使っていただけていると思います。2022年12月にピスタチオを使ったリキュールを発売したのですが、これはその最たるものですね」
次々と新しい商品を展開するクランドは、どういう戦略で一つひとつの商品をアピールしているのだろうか?
「商品によってプロモーションの仕方を変えていますが、SNSを中心に活用していますね。今、Xのフォロワー数が25.6万人なので、まずはXで発表してそこからの反応を見ながらインフルエンサーの方にPRを依頼したり、広告を回したりしています」
果肉酒やリキュールのような甘いお酒は原材料を何にするかということでキャッチーに見せられそうだが、日本酒はそれぞれの銘柄の差別化が難しいように感じる。クランドでは日本酒だけで150種類以上販売しているが、どのように差別化しているのだろうか?

「フルーツのお酒ってどんな味なのか想像しやすいですが、日本酒って難しいですよね。私たちの日本酒販売ページを見ていただくとわかりますが、昔からある日本酒のラベルイメージからは離れたものが多いと思います。名前がおもしろかったり、キャラクターが描かれていたり。パッケージの部分をキャッチーにしています。『白鼬(おこじょ)』という日本酒があるんですが、これはお金をかけたプロモーションはしていなかったんです。しかし、オコジョやイタチが好きな方々の中でSNS拡散が巻き起こり『日本酒を飲んだことなかったけど3本買った』というようなお客様もいらっしゃいました。ですが、これはただ単純にパッケージをかわいくすればいいという話ではありません。『白鼬』は福島の酒蔵が造っていて、飯豊山(いいでさん)の伏流水を使用しています。飯豊山にはオコジョが生息して、それが『白鼬』のネーミングやラベルのコンセプトになっています。ほかにも理系の兄弟が作る『理系兄弟』なんてものもあります。特徴的なネーミングやラベルはそのお酒が持つ“ストーリー”を強化するためのものなんです」
ECサイト「クランド」は2022年11月にサイトイメージなどを刷新。それまで社名と同じ「KURAND」表記だったのを「クランド」とカタカナ表記にし、より感覚的に購入体験ができるサイトに構築し直した。
「私たちのお客様はお酒がものすごく好きで、詳しい人というよりも、お酒を飲んでみたいけどまだよくわからない、お酒のデビューの場所としてクランドを選んでくださっていると感じています。お酒の専門知識がなくても、その日の気分や感覚でカジュアルに商品を選んでもらえるサイトにするため大型アップデートを行いました。お客様が継続してクランドのお酒を楽しんでくださるように、少量多品種という方針は変えずに開発を進めていきたいと考えています」と遠山さんは語る。
誰のためにお酒を造り、売るのか。個々の商品開発からプロモーション戦略、ECサイトの設計にいたるまで、その想いが一貫しているからこそ、成長を続けているのだと感じる。「お客さまのために」、KURANDが次にどんなユニークな手を打ってくるのか期待したい。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・誰のために、どこを向いて仕事をしているのかしっかり見据える
・注力する分野を見極める
・商品をPRするために、どの部分を強化すればいいのかを吟味する
取材・文=西連寺くらら
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